販売は戦いであるというが、では、その戦いとはどんなことなのかということは、多くの会社で全くといっていいほど分っていない。
それは、営業部門任せ、営業部門は価格競争ということだけで、あとは競争しているという「意識」しかない。その証拠に、「市場戦略計画書」に類するものにお目にかかったことがない。
本当のところ、これほど未開の分野はない。だから、敵に攻勢をかけられると全くなすすべがない。ただオロオロして右往左往するだけということになってしまう。
だから、絶えざる市場情報を収集し、これにもとづく一貫した市場戦略をもつ会社は、恐ろしく有利な戦いを進めることができる。この戦略の最も優れたものこそ「ランチェスター戦略」である。
この戦略は、業界・業種・業態・規模を問わず、すべての企業に導入が可能であり、その応用範囲は無限といってよい。社長たるものは、ランチェスター戦略をよく理解し、自ら情報を検討し、自らの意志によって自ら市場戦略をたて、陣頭に立って推進しなければならない。
そこには、大きな成果が待ち受けており、これを手にすることによって市場における優位性を確保することができるのである。とはいえ、ランチェスター戦略のみが唯一最善のものではない。そこには自ら限界があることを心得ておかなければならない。この限界を知った上で、ランチェスター戦略を遂行することこそ、本当の意味でこれを生かすことになるのである。
ますます激化する競争の中で、自らの会社を生き残らせるために、ランチェスター戦略を十分に駆使し、成果をあげることこそ社長の役割である。
1985年7月
一倉 定