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第123話 外科医は自身のガン手術を施せない ~中国の腐敗蔓延に歯止めがかからない理由~

第123話 外科医は自身のガン手術を施せない ~中国の腐敗蔓延に歯止めがかからない理由~

 中国の習近平国家主席は就任以来、辣腕を振って共産党幹部の腐敗行為にメスを入れている。一時的な成果を挙げていたが、腐敗の根絶には程遠く至らなかった。理由は簡単だ。外科医が自身のガン手術を施せないと同じように、共産党一党支配の下では、共産党幹部の腐敗を根絶することが至難の業であるからだ。

 

◆「圧倒的な勝利」を宣言したのに腐敗認識順位が後退

 2018年12月、習近平主席は反腐敗闘争について、「圧倒的な勝利を収めた」と宣言した。

 

 確かに、習近平氏は共産党総書記就任以来、元中央政治局常務委員周永康さん、元中央軍事委員会副主席徐才厚さん、郭伯雄さん、中央書記局書記令計劃さんなど大物幹部を次々摘発し、反腐敗に大きな成果を挙げていた。

 

 しかし、これで腐敗現象の蔓延に歯止めがかかっただろうか?残念ながら答えは「NO」と言わざるを得ない。

 

 本部をドイツのベルリンに置く国際透明性組織「トランスペアレンシー・インターナショナル」は世界中の汚職を国別にリスト化した「腐敗認識指数」を毎年発表している。調査対象国である世界180カ国・地域のうち、中国は2017年77位だったが、2018年87位へ後退した(次頁表1を参照)。言い換えれば、中国の腐敗・汚職は前年に比べ減少ではなく一層蔓延しているのだ。

 

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出所)トランスペアレンシー・インターナショナル「腐敗認識指数ランキング2018」より作成。

 

 事実、中国共産党新聞網によれば、中央紀律監察委員会は2019年8月24日に河南省副省長徐光、25日に安徽省高級人民法院(高等裁判所)院長張堅、27日に河北省副省長李謙らが腐敗のため、それぞれ取り調べを受けると発表した。一週間のうち、3人の副省長クラス幹部が腐敗のため相次いで失脚した。この厳しい現実から、共産党幹部の腐敗蔓延に歯止めがかからない実態が浮き彫りになっている。

 

◆外科医は自身のガン手術を施せない

 それではなぜ中国の腐敗蔓延に歯止めがかからなかっただろうか?

 

 腐敗は「組織のガン」と言われる。ガン手術について、たとえ外科医の名医であっても自身のガンに手術を施すことができない。そのため、日米欧先進国では、「組織のガン」である腐敗を防ぐために、行政、立法、司法三権分立という政治システムを構築している。また、政府与党を厳しく監視する野党という組織が存在し、「第四の権力」と言われるマスコミも権力のチェック機能を果たしている。

 

 従って、先進国では公務員の腐敗・汚職が発生しにくいし、発生しても摘発され易い。日米欧先進国が常に「腐敗認識指数ランキング」の上位にランクされるのは、まさに腐敗防止の社会システムが旨く機能しているからだ。

 

 ところが中国は違う。周知の通り、中国は共産党一党支配の国であり、三権分立が許されない。野党という組織も存在しない。言論の自由がないため、「第四の権力」と言われるマスコミも権力チェックの役割を果たすことができない。共産党はすべての組織を監視・チェックすることができるが、共産党をチェックできる組織は1つも存在しない。

 

 今、中国政府が行っている反腐敗は、あくまでも政権内部の自浄努力に過ぎず、明らかに限界がある。一時的な効果があったとしても、構造的な腐敗を根絶することができない。このような反腐敗は、外科医が自身のガンに手術を施すと同じように、成功する筈がないと思われる。

 

 「権力は腐敗の傾向がある。絶対的権力は絶対的に腐敗する」。この言葉は19世紀のイギリスの思想家ジョン・アクトン氏の名言である。中国の腐敗蔓延の根源はまさに絶対的権力にある。構造的な腐敗に歯止めをかけるためには、絶対的権力を制限する政治的改革が不可欠である。(了)

 

 

 

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経営コラムニスト紹介

沈 才彬
多摩大学 教授

1944年中国江蘇省海門市生まれ。中国社会科学院大学院修了。同大学院準教授、東京大学、早稲田大学、御茶ノ水女子大学、一橋大学などの客員研究員を歴任。三井物産戦略研究所主任研究員、同中国経済センター長などを経て、08年4月より、多摩大学経営情報学部教授、および、同大学院経営情報学研究科教授に就任。この間、天城会議(日本有識者会議)メンバー 、中国山東東亜研究所顧問、 国土交通省観光立国推進戦略会議WG委員などを兼務する。

近著に『検証 中国爆食経済』『今の中国がわかる本』『中国沈没』『中国経済の真実』『中国黒洞(ブラックホール)が世界をのみ込む』などがある。

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