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第89回
日本一のおしゃれエリアで、どんどん店舗を増やす飲食チェーンとは?
~「大阪名物伝統の味 串カツ田中」が爆発的人気の訳~

第89回
日本一のおしゃれエリアで、どんどん店舗を増やす飲食チェーンとは?
~「大阪名物伝統の味 串カツ田中」が爆発的人気の訳~

 

 
日本一のおしゃれエリア、代官山・恵比寿・中目黒で、昨今、どんどん店舗を増やし、いつもお客がいっぱいで、一番目立っている飲食店チェーンはどこか?
 
洋風のイタリアンやカフェかスイーツ店だと思うだろうが、実は「大阪名物伝統の味 串カツ田中」が爆発的人気を博しているのだ。
 
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まるでリーズナブルなラーメン店か居酒屋とみまごう、黄色地に赤文字と黒文字の明朝体で書かれたコテコテの看板だけを見れば、代官山・恵比寿・中目黒だとは誰も思わないだろう。
 
恵比寿店、中目黒店、南平台店、桜の丘店に続いて、2018年2月には、何と、東急東横線の代官山駅の真ん前にOPENした。
 
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代官山駅の隣りの渋谷駅が最寄の渋谷店、渋谷宮益坂店、渋谷百軒店店を入れれば、1.5キロ四方の中に、実に、7店舗が出店しているのだ。
 
 
 
●外食関連業者の倒産件数は過去最多を記録しているのに?
 
2018年上半期の現在、アベノミクスによる金融緩和の影響もあり、東京の商業地の地価はバブル期以上に高騰している。
 
また、飲食店のアルバイトやパートは常に人手不足状態で、人件費は上がる一方だ。
 
そこに、食材や調味料の値上がりが追い打ちをかけ、飲食店の経営は火の車に陥っている。
 
2018年3月の日本フードサービス協会が発表した外食の市場動向調査によれば、「パブ・居酒屋」は前年同月比2.0%減で、3カ月連続のマイナスとなり、居酒屋の店舗数は減少し続けている。
 
ファストフードは同5.7%増、ファミリーレストランは同4.2%増と総じて堅調だが、帝国データバンクによる、2017年の外食関連業者の倒産件数は、前年比26.9%増の707件と、過去最多を記録している。
 
中でも、「酒場・ビヤホール」は133件と最多だ。
 
業界大手に成長した「鳥貴族」も値上げして話題を呼んでいるが、2016年6月の酒税法改正で、行き過ぎた廉価販売が規制されたため、酒類の仕入れ価格が上昇したことも、アルコールの販売で稼いでいた飲食店にとっては、大きなマイナスとなっている。
 
20年前のデフレの真っただ中ならいざ知らず、そんな、賃料も人も物も高騰し続ける大逆風の中で、出店料が超高コストな日本一のおしゃれエリア、代官山・恵比寿・中目黒に続々と出店し、リーズナブルな価格設定で、いつもお客を満杯にするのは至難の技だ。
 
 
 
●波乱万丈の「串カツ田中」サクセスストーリー
 
「串カツ田中」の貫啓二(ぬき・けいじ)社長と、店名になっている田中副社長のサクセスストーリーは、まさに波乱万丈だ。
 
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貫社長は、トヨタのグループ企業を27歳で退職。前職の先輩から借金して、大阪にBARを開く。
その後、大阪・堀江でビル一棟を借り、空間デザイナーによるおしゃれなデザインのデザイナーズレストランを開店した。
 
数年後、東京・青山のビルの3階に隠れ家的な個室の京懐石料理の店をオープン。「東京カレンダー」に見開き掲載されるなど、一気に有名店になる。
 
しかし、その後、売り上げが徐々に低迷し、閉店の憂き目に。
 
起死回生を期し、多店舗展開を目指して、中目黒に「かすうどん田中」オープンするも、利益が出ず、たたむことに。
 
出店費用がかさみ、借り入れは相当な額に膨らんでいた。そこに、リーマンショックが到来し、倒産寸前にまで追い込まれる。
 
撤退しようと準備していた最中、田中副社長の亡き父が実家で作っていた串カツの秘伝レシピが見つかる。
 
再起を賭け、2008年12月、世田谷の住宅街にあった居抜き物件に、「串カツ田中」の1号店を開業。
 
三等立地と言われる物件だったが、近隣住民から支持され人気店となる。
 
以来、破竹の勢いで成長を続け、2015年に100店舗を達成。
 
毎年30店を超えるペースで出店し、フランチャイズを含め、約180店舗にまで拡大している。
 
 
 
●「こんな店、代官山の駅前でやって行けるのか?」
 
代官山の駅前にお店ができた時、たまたま、「串カツ田中」の店の前を通りかかった初老の夫婦が、「こんな店、代官山の駅前でやって行けるのか?」「今、家賃も人件費も一番高い時期なのに回収できるのかな」などと話しているのが聞こえた。
 
「串カツ田中」の平均客単価は2300円だというから、たしかに、その売り上げで、お店の初期投資を回収して、回して行けるのか心配になるのも当然だ。
 
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しかし、内外装にお金をかけないのでイニシャルコスト(初期投資)も安く、料理人の社員が不要なのでランニングコストも低いからこそ、回収も早く、利益が早く出せるのだ。
 
ただ、安かろう悪かろうではなく、その価格でも、ウマくて、サービスがいいからこそ、人気が出てリクープできるのである。
 
 
 
●欧米のホスピタリティ産業に勝るとも劣らない超効率経営
 
1年以内に支払わないといけない流動負債と、1年以内に現金化できる流動資産から計算する流動比率(流動資産÷流動負債)は、「串カツ田中」の場合、141%もある。
 
当然、この数値が高いほど支払い能力に優れており、経営は安定していることを示す。
 
法人企業統計によれば、飲食サービス業の流動比率の平均値は79.6%だ。
 
いかに、「串カツ田中」の収益力と財務の安定性が高いかがわかる。
 
同社は、2016年9月に、東証マザーズへの上場を果たした。資本金は5億6800万円。社員は200人ほどに過ぎず、本社には約40人しかいない。
 
日本の外食産業の利益率は低いと言われ続けて来たが、欧米のホスピタリティ産業に勝るとも劣らない超効率経営は、「串カツ田中」の真骨頂だ。
 
 
 
●「ソースの二度づけ禁止」がうたい文句のB級グルメ
 
「串カツ田中」は、肉・魚・野菜などを串に刺して衣を付けて揚げる、伝統的な大阪のB級グルメの串カツをメインにした居酒屋だ。
 
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「ソースの二度づけ禁止」がうたい文句の串カツを看板メニューに、かすうどん、牛スジ土手、ちりとり鍋など、大阪の名物グルメを中心に各種一品料理もそろっており、アルコールなど各種ドリンクも提供している。
 
間口の広いガラス越しの外装なので外からでも店内の様子がわかる。
 
誰もが入りやすい雰囲気を醸し出し、家族連れなど老若男女でにぎわっている。
 
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串カツは、1本100円~200円で、100円と120円が大半を占め、30種類以上もある。
 
来店客が楽しめる趣向も凝らしている。サイコロの振った目によって、無料になったり、割り引きでハイボールを飲める「チンチロリンハイボール」。
 
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「子どもじゃんけんドリンク」は、子どもの客がじゃんけんで勝てば、ソフトドリンクが無料になる。そのため、家族連れがファミリーレストランのような感覚で訪れている。
 
 
 
●「串カツ田中」のすべてを貫く串とは?
 
スタッフは社員ではないアルバイトやパートが大半だろうが、皆、きびきび動き、笑顔を絶やさず、一様に感じが良い。
 
それもそのはず、「串カツ田中」の最初の理念は、「お客様の笑顔をひとりでも多く生むことにより、利益を得、全従業員の物心両面の幸福を追求する」に始まった。
 
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単なる言葉遊びではなく、創業当初から、貫社長、田中副社長をはじめ経営陣は、この理念に真剣に向き合って来たという。
 
既に3店舗目を出店する頃には、完全週休二日制を導入し、労働時間の短縮にも取り組み、慰安旅行も行っていたという。
 
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現在の理念は、「串カツ田中の串カツで、1人でも多くの笑顔を生むことにより、社会貢献する」と改訂されている。
 
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しかし、いくら理念が立派でも、規模が大きくなるにつれて、それを全店舗、全スタッフに浸透されるのはむつかしい。
 
どのような業種・業態、規模の企業でも、経営者は、理念をいかにして、社員・スタッフに伝え続けるかに腐心している。
 
貫社長は、「串カツ田中」で働く意味を、より深く伝えるために、手元に残る封書で手紙を出し続けているという。
 
理念を、例え話にしたり。別の言葉に言い変えたりした手紙を、社員とアルバイト全員に1回で1000通も送るのだそうだ。
 
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貫社長が外食メディアのインタビューに答えた言葉にしびれた。
 
「理念を浸透させるには、まずは掲げた理念に社長自身が惚れ込むしかありません。ウソ偽りなく向かうことが大事です。いくらキレイごとを言っても、本当に心の底から思っていないとスタッフには絶対にバレます」
 
「だから、自分がブレずに理念に紐づいた行動しかしないことで、スタッフにも徐々に理念が広がっていくと思います。自分が理念を貫き続ける根性がないといけません」
 
2018年12月には10周年を迎えるが、貫啓二社長は
「串カツを、すし、ラーメン、天ぷらと並ぶ日本を代表する食文化に育てたい。飲食チェーン業界を見ていると、牛丼、焼き鳥、カレーなど、魅力的な単品メニューを提供している業態が強い。これからも看板メニューである串カツを進化させて行く」と意気込みを語っている。
 
飲食業に携わる人は、もともと、顧客と従業員の笑顔が見たくてやっているに違いない。
 
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「串カツ田中」の成功は、バランスシートは虚飾を拝した究極のデジタル思考で無駄を廃すると同時に、オペレーションは人を中心に置いた究極のアナログ思考でウェットに行うところに、バラバラの具をすべて貫く串があるのに違いない。

 
 

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経営コラムニスト紹介

マーケティングコンサルタント 西川りゅうじん氏

西川りゅうじん氏 マーケティング コンサルタント


1960年生まれ。兵庫県出身。84年一橋大学経済学部卒業。86年同大学法学部卒業。

在学中に企画プロデュース会社を起業し、30年にわたり赤字の年なく経営。
実家は創業以来63年間黒字の製造販売業を営む中小企業。

「ウォークマン」の販売促進、「ジュリアナ東京」のPR、「福岡ドーム」のオープニング演出、「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」「三井本館」「コレド日本橋」「京都駅ビル」「上海金融環球中心」のコンセプト立案・商業開発、「愛・地球博」の“モリゾーとキッコロ” や 「平城遷都1300年祭」の“せんとくん”のデザイン及びネーミングの選定・広報、「つくばエクスプレス」や「成田スカイアクセス」の沿線まちづくり、本格焼酎マーケティング研究会座長としての芋焼酎の全国的な人気づくり、「龍馬伝」と連動した高知県「龍馬博」総合プロデュース、日本橋・吉祥寺・柏・瀬戸内7県・沖縄離島の地域活性化に携わるなど、産業と地域の“元気化”に 手腕を発揮している。

東京工業大学・早稲田大学・津田塾大学・甲南大学・東北芸術工科大学・松山大学の非常勤講師、拓殖大学客員教授を歴任。

厚生労働省「健康寿命をのばそう!Smart Life Project」スーパーバイザー
経済産業省「地域の魅力セレクション」審査委員長
林野庁「森林セラピー」戦略会議座長
(社)全国信用金庫協会「商店街ルネッサンス・コンテスト」審査委員長
観光庁「観光立国推進戦略会議」ワーキンググループ委員
神奈川県と横浜市が連携したまちづくり委員会「マグカル・テーブル」座長
兵庫県参与
長崎県観光PRアドバイザー
熊本県「企業力《1ランクUP!》プロジェクト」スーパーバイザー
(公財)にいがた産業創造機構アドバイザー
日光市まちづくりアドバイザー
小田原市観光協会総合アドバイザー
藤沢市駅前商店街活性化アドバイザー
都城市PRアドバイザー


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