第70回 人間を超えるAIとは?

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2017.07.28

鴻池賢三(ディー・エー・シー・ジャパン代表)
今、日本の経済発展を支えてきた産業と言えば、鉄鋼、造船、自動車、電機が代表的で、近年は、インターネットや携帯電話関連のIT技術を思い浮かべる方も多いでしょう。
 
今後は、ドローン、遠隔医療、自動運転カーなどが注目を浴びそうですが、その根幹としてIoT(モノのインターネット化)やAI技術が不可欠であり、特にAIが急浮上しています。

今回は、ビジネスや生活を大きく変えるとされるAIについて、具体例を挙げつつ、その本質を分かり易く解説します。
 
■そもそも話題のAIとは?
そもそも「AI」とは「Artificial Intelligence」の略。人間のような知能をコンピューターで実現しようという概念で、「人工知能」とも呼ばれます。
その定義は時代と共に変化し、過去、簡単な想定問答ができるプログラムも、人工知能と呼ばれていた時期がありました。
現在ブームとなっているAIは、厳密には「第3次AI」と呼ばれるもので、そのポイントは、「ディープ・ラーニング」(深層学習)にあります。人間の脳をヒントにした、何層にも深い神経回路を模した構造を持つコンピューターが、自ら学習して賢くなるシステムです。
例えるなら、あなたが猫を見て「猫」と判定するプロセスを想像すると良いでしょう。大きさや形、顔の輪郭、目、鼻、ヒゲなどがポイントになりそうですが、いちいちそんな事を考える人はいません。直感的かつ瞬時にに「猫」と判断しているはずです。
 
従来型のコンピューターに「猫」を判別させようとすると、人間が事前に条件を列挙し、適合する否か照合していた訳ですが、まず、条件を完璧に抽出するが厄介です。先述の通り、人間が何を持って「猫」と判断しているか分からない部分があるからです。
 
AIの肝である「ディープ・ラーニング」は、人間の神経回路を摸したコンピューターで、人間に近い仕組みで学習させる点で画期的です。
現在では、インターネット上に無限とも言える画像があり、「猫」とタグが付けられた写真もたくさんあります。こうした素材を利用すれば、コンピューターは自ら「猫」の特徴点を抽出して、「猫」と判定できるように賢くなります。
面白いことに、AIも人間と同様、何を根拠に「猫」と判定しているかは、人間には知るよしもありません。人間と全く異なるポイントに注目している可能性も大いにあるのです。
そう、人間のように万能ではありませんが、特定の用途に絞れば、人間を上回る可能性を持っているのが、今話題のAIなのです。
 
 
AIの応用例と未知なる可能性
具体例を挙げながら、AIの応用例と未知なる可能性を考えてみましょう。
 
1. 将棋
身近な例の1つに、「コンピューター将棋」があります。かつては機械的に先読みを高速に行うだけだったので、人間の発想力に敵わないと考えられてきました。ところが、現在ではAIが主流に。特に「ponanza」(ポナンザ)は有名で、プロ棋士を寄せ付けない強さを見せつけています。
「ponanza」の場合、ディープ・ラーニングを用い、過去の膨大な対局(棋譜)を学習し、自ら勝ちパターンを見い出しています。さらに、コンピューターの内部でソフトウェア同士を対局させ、そこから学習する手法で、さらなる進化を続けます。
コンピューターは疲れを知らず、正確で記憶力も完璧。既に、人類英知の結晶とも言える定跡を覆す差し手を発見するなど、もう、ヒトの手の届かないレベルに到達したようです。
 
2. 病気の診断
医師は、問診や血液検査などの結果を参照しながら、知識や経験をもとに病気を判定します。
AIが高度に利用できるようになれば、大きな進展が望めます。過去の症例、問診や検査結果をAIで学習させると、人間では気付かない関連性を見いだす可能性もあります。経験が豊富な名医の「勘」、に似ているかもしれません。
医師が不要という訳ではありませんが、AIは疲れを知らず、過去の膨大なデータを学習するのに適しているのは事実。医師がAIを利用すれば、鬼に金棒と言えます。
 
3. 資産運用
資産運用でもAIが猛威をふるいそうです。株価や各種指数を左右する要素は実に多様で、人間が全てを把握し、事象と結果を結び付けるのは困難です。そう、つねにリスクがつきまとう訳です。
AIなら、地球上のありとあらゆるデータを学習させ、株価との意外な因果関係を見つけ出せるかもしれません。
既に、AIを活用した資産運用サービスが登場。「ロボアドバイザー」で検索すると、いくつか見つかります。まだその能力は未知ですが、人間よりも広範囲なデータを休むことなく分析するので、人間を超える可能性は大いにあります。
ただし、例えば株価は、天気予報と違って相手があるので、みんながAIに頼ってAI同士の戦いになると、話しは複雑かもしれません。
 
■さいごに
現在のAIは人間のように万能ではありませんが、特定の用途に絞って活用すると、疲れを知らず無限に働く分、人間を超えるのは明らかです。さらに、感情的になることなく、常に冷静。たかかがコンピューターと高を括らず、上手く活用する方法を模索したいものです。
また、AIが発達し過ぎると、人間の手で負えなくなる可能性も指摘され始めました。その一端はAI将棋に見ることもできます。
AIを恐れる姿勢も必要で、AIの利用を正しい方向に導くことが、今後、人間の重要な役割かもしれません。

講師紹介

鴻池賢三(ディー・エー・シー・ジャパン代表)

株式会社オンキヨーにてAV機器の商品企画職、米国シリコンバレーのデジタルAV機器用ICを手がけるベンチャー企業を経て独立。 現在、WEB・テレビ・雑誌等のメディアを通じて、AV機器の評論家/製品アドバイザーとして活躍中。その他、「ディー・エー・シー ジャパン」を設立し、AV機器関連企業の商品企...>もっと見る

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