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歴史・人間学・古典

2018.10.30

組織を動かす力(5)コミュニケーション能力

指導者たる者かくあるべし

 「全体ミーティングは不要」の真意は

 万年Bクラスに甘んじていたプロ野球セリーグの横浜ベイスターズを就任一年めで日本一に導いた監督・権藤博は、ミーティングを廃止した。選手全員を集めての全体ミーティングは不要というのだ。

 その理由について、権藤はこう語る。

 「全体ミーティンの話の中には、ある選手には当てはまっても、他の選手には当てはまらない話も往々にして出てくる。それを自分の話として受け止める選手がいれば、その選手を誤った方向に導いてしまうからだという。

 では選手とのコミュニケーショはどうして取ったのか? グラウンドを歩き回り、選手と直接対話してアドバイスした。権藤流のミーティングだ。その方が監督の思いを選手によく伝えられるし、何よりも、対話によって監督としての収穫が大きいという。

 会社の朝礼などでダラダラと長話をする人は要注意。「時間を有効に使う上でも、ミーティングはできるだけ少人数で行い、密にコミュニケーションをとることが大切だ」。

 

 日本には会議の後に裏の会議がある

 ラグビー日本代表チームを世界に通用するレベルまで引き上げたエディー・ジョーンズも、ミーティングのためのミーティングを厳禁した。ヘッドコーチとコーチ陣、コーチと選手たちが、「互いに向き合って正直に話し合うべきだ」というエディ―は、来日して感じたことがあるという。

 「日本では、会議の後に、裏の会議がもう一つ開かれるようだ」。日本社会では、企業でもそうだが、皆の前で、トップに対して自らの意見を言うのは憚(はばか)られる風土がある。表の会議では、異論があってもトップのいうことに頷いて、裏でこっそりと意見をいう。そんなニンジャのような振る舞いでは、「チームの方向性は伝わらず、一貫性のあるコーチングはできない」というのがエディーの信念だ。

 

 意思疎通を妨げる大企業病

 盛田昭夫とともに電器メーカー・ソニーの前身である東京通信工業を立ち上げた井深大(いぶか まさる)も1970年の年頭の経営方針発表で、社長として社内の問題点を指摘した。トリニトロン・カラーテレビがヒットして業績が伸びに伸びていたころだ。

 「ソニーはもはや中小企業ではなく、メジャーリーグに加われるだけの規模を備えてきた。規模が大きくなってその機動力がが失われたとしたら、ソニーにはもはやなんの魅力もなくなるでしょう」として、第一の課題としてコミュニケーションの問題を取り上げた。

 「真のコミュニケーションは、相互に自分の意思をはっきり示し、意見が通じることを確認しあって、はじめて成り立つものであります。社内の最近の動きをみていると、命令をくだし、それに対する結果を報告することぐらいでコミュニケーションが完全に行われているのだと思っているふしが、多々見受けられます」

 数十人規模のスポーツチームであれ、数千人の社員を抱える大企業であれ、組織を動かす要は、コミュニケーションの取り方に尽きる。

 

(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

※参考文献
『教えない教え』権藤博著 集英社新書
『ラグビー日本代表監督エディー・ジョーンズの言葉』柴谷晋著 ベースボール・マガジン社
『自由闊達にして愉快なる』井深大著 日経ビジネス文庫

講師紹介

宇惠一郎(元読売新聞東京本社国際部編集委員)

 早稲田大学卒業後、商社を経て、1978年読売新聞社入社。社会部、外報部、95~98年ソウル支局長。帰国後、解説部次長、2007年編集委員。2011年4月〜2012年8月ソウル支局長(専任部長)、2012年9月編集委員、現在フリージャーナリストとして活躍している。 ※主な著書と受賞歴 「20XX年地方都市はど...>もっと見る

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