第108話 「5つの人材処遇の節目と人事評価」

「賃金の誤解」

人事・労務・採用

2018.06.06

弥富拓海(賃金管理研究所所長)

賃金管理研究所 所長 弥富拓海

http://www.chingin.jp


 企業には社業があり、経営計画があります。従業員が雇用され、組織の一員として仕事を任され、企業業績に貢献していくことになります。この採用から始まる従業員の活躍場面を賃金人事の視点で整理してみると、評価を伴う5つの節目があり、この節目を上手にクリアすることで、労使の信頼関係は熟成され、職場は活性化し、従業員のやる気と向上心は高まり、会社も従業員も成長して行きます。

 この5つの人材処遇の節目とは、(イ)仕事を担当する人の採用に始まり、(ロ)半年ごとの賞与配分、(ハ)これから1年間の所定内給与を決める定期昇給、(ニ)事業展開を支える人材育成と適正配置、そして(ホ)企業の明日を築く実力社員の登用、昇格昇進制度へと進んでいくことになります。

 以上5つの節目とも言うべき人材処遇の場面を理解し、賃金人事制度を正しく運用していくためには、同時に人事評価制度が必要となります。どのような評価がそれぞれの場面で必要なのかを考えてみましょう。

(イ) 新規学卒であれ、中途採用であれ、仕事に適した人材を採用するためには適格者を見抜く人物評価が必要であり、初任給を決めなければなりません。

(ロ) 入社して初めて出会う嬉しいイベントが年2回の賞与受給です。適正で合理的な配分を実現するためには評価期間を過去6箇月に限定した勤務成績の評価が必要です。これが成績評価制度であり、評価の対象は半年間の仕事の「成果とプロセス」だけですから、他の評価制度と分けて考えることが必要です。

(ハ) 通常4月期に定期昇給を実施します。昇給金額を決めるためには昇給評語(SABCD)を決めなければなりません。主観的な評語決定だと言われないためには、客観的な証拠が必要となります。それが直近2回の成績評価の結果であり、過去1年間(ハーフ&ハーフ)の成績評語が昇給評語決定の重要な根拠となります。

(ニ) 積極的な事業展開のためには、適材適所・人材育成のための評価が必要になります。
配置換え・職種転換等による人材の積極育成も考えられますが、自己申告の不確実性には注意が必要です。直属上司による上長観察、適性報告、現状把握が重要な根拠です。

(ホ) 昇格昇進者の選考とは明日の幹部候補者・責任者を選ぶことです。真の能力主義は この昇格昇進対象者の選考にこそ貫かれていなければなりなせん。
 その選考手順としては
  ①現責任等級での昇給履歴の確認、
  ②標準昇給図表で確認できる昇格基準と昇格要件の把握、加えて
  ③職種適性と等級適性で判断し候補者を絞り込むこととなります。
 真の能力主義の人材登用ですから、昇格後、上位等級での成績評語がB(良)以上でなく、C(可)になると危惧される社員は昇格昇進の対象外とすることも忘れてはいけません。

 以上が賃金人事から見た「5つの処遇の節目」であり、その正しい運用を支える「人事評価」の概要です。それぞれについては適時取り上げてまいります。

講師紹介

弥富拓海(賃金管理研究所所長)

賃金管理研究所所長。昭和44年武蔵大学卒。ティアック等を経て平成4年入所。主な指導先に、大倉工業、産能大学、日東光器、アムコ、日本情報センター、福山商工会議所、他多数。 主な著書に、「強い会社をつくる賃金の決め方」はじめ、「賃金管理データブック(共著)」他。...>もっと見る

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