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本田宗一郎との『叱られ問答』 | 日本経営合理化協会BOOK&CD・DVD

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第49話 「再び富士(不二)」

第49話 「再び富士(不二)」

80年代、欧州市場での日本車の台頭にドイツの各社は、
基幹産業である自動車がカメラやエレクトロニクスの二の舞になっては、と思ったに相違ない。
彼らは製品開発に力を入れると同時に「アイデンティティ」の強化を始めた。

「ベンツ」という会社は、ドイツという国の歴史抜きには語れない。
18世紀末の「産業革命」で英仏に大きく出遅れたこの国は、科学技術を振興し工業立国に向けて懸命となる。
結果19世紀末、ダイムラーがガソリンエンジンの自動車を実用化し国威発揚に繋げた。

ベンツは「絶対か無か」を唱え「最高である」ことを目指し、歴史と伝統と信頼性を、他のメーカーとの違いとして
断然の優位を誇ってきた。今でも「権威主義的」印象を受けるのはこんな理由からだ。

別格視されてきたベンツに対し、自動車メーカーとして歴史が浅い「BMW」の印象は極めて希薄で、彼らはベンツへの
対抗上、異なるアイデンティティを確立し、彼ら自身のプレゼンスを高めねばならなかった。

1970年代の初め、プロイセン貴族のキューハイム社長がBMWの近代化を標榜。
「大きいヤツが小さいヤツを食うのではない。速いヤツがのろまなヤツを食うのだ」という彼の言葉が、
BMWの目指した方向をよく表している。
BMWは、「速さ」、それもあくまでドイツ流の技術と信頼性に基づく速さを追求し、
10年がかりでそのイメージを世界に浸透させた。

ホンダは、ベンツ、BMW、アウディとは明らかに「別の山」でなければならない。
そうなることで再び、ドイツで「ホンダは凄い」と言われ、その評判を世界に拡げることも可能となる。

それには何としても、技術力を高め固有性を磨く必要がある。
それが、ホンダのアイデンティティ確立に繋がるはずだ。
BMWやアウディと同じく、10年を懸けたらホンダにだってできるに違いない。
目指す目標を明確に定めて、粘り強く根気よくやるしかない。

富士山は日本で一番高い山。それでも世界には、もっと高い山がそれこそ「山ほど」ある。
が、4000m前後の高い山が、一際抜きん出て目立って聳えている例は多くはない。
しかも富士山のように、誰が見ても「美しい山」となると、そうざらにあるものではない。

だから「不二」なのである。「高い、大きい」だけではなく抜きんでて美しい、まさに日本の誇る霊山(やま)なのだ。
ホンダは、人の心を清々しく誘う「富士(不二)山」のようでありたい。
本田さんの声が聞こえた。

バックナンバー

2010.05.07
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2010.05.07
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2010.05.07
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2010.05.07
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経営コラムニスト紹介

多摩美術大学理事・教授 岩倉 信弥氏

岩倉 信弥(いわくら しんや)氏 多摩美術大学理事・教授 本田技研工業株式会社・社友

武蔵野美術短期大学卒業後、 1964年、多摩美術大学卒業と同時に本田技研工業株式会社に入社。
創業者・本田宗一郎の薫陶を受け、ホンダ社のデザインの担い手となる。
大ヒット車「シビック」のデザイン担当として、
カーオブザイヤー大賞受賞など、受賞歴多数。
日本の自動車デザイン界の第一人者。

デザイン室の技術統括、本田技術研究所専務、本田技研工業常務などを歴任。
一担当デザイナーから経営的立場まで、幅広いデザイン活動や商品開発に携わり
ホンダ4輪事業の基盤づくりに貢献。

また、デザイナーとしては異色である、経営学博士号も取得。
本田氏の哲学を受け継ぎ、専門であるデザイン以外の
販売、生産、開発、調達、資金の分野など経営に関わるすべてに精通している。

退職後は多摩美術大学の教授に就任。
教鞭をとりながら、自ら予備校をまわり大学のPR活動を行う精力的な姿勢で、
少子化と製造業の不振で右肩下がりに落ち込んでいた
入学試験倍率を見事に回復させ、
他の大学がうらやむほどの定員増を成し遂げている。

本当のお客様はだれか。何を望んでいるのか。
その人たちに喜んでもらうためには何をすればいいのか。
いまなお、本田宗一郎から受け継いだ遺伝子を実践し続ける
「本田宗一郎にもっとも叱られた男」である。

【著書】
「本田宗一郎に一番叱られた男の本田語録」三笠書房刊
「ホンダにみる デザイン・マネジメントの進化」税務経理協会刊
「デザイン「こと」始め-ホンダに学ぶ-」産能大学出版部刊
「ホンダのデザイン戦略経営」日本経済新聞社刊・共著

【主な受賞歴】
Car Of the Year大賞 受賞 「シビック」、「アコード」
グッドデザイン大賞 受賞 「シビック」
全国発明表彰・通産大臣賞 受賞 「シビック」
RJCニューカーオブザイヤー 受賞 「オデッセイ」

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