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第8回 中国ビジネスに必須の知識
~孫文・梅屋庄吉と「辛亥革命100周年」~

次の売れ筋をつかむ術

日本と中国は、様々な問題を抱えながらも、もはや切っても切れない仲だ。

2011
年は、孫文(孫中山)が清朝の皇帝支配を打ち破った「辛亥(しんがい)革命」から、
100
周年に当たる。


孫文は、中華人民共和国、中華民国(台湾)でともに中国建国の父、「国父」とされている。
その孫文が自ら「建国の賢母」と呼ぶほど革命を物心両面で支えたのが、長崎出身の実業家、梅屋庄吉だった。



「君若挙兵、我以財政相助」(君は兵を挙げよ、我は財をもって支援す)

現在、庄吉の曾孫にあたる日比谷松本楼常務の小坂文乃さんを中心に企画された
「孫文と梅屋庄吉」特別展(~9月4日)が、東京国立博物館(上野公園内)で、
博物館と毎日新聞社の主催、外務省および中国大使館の後援によって開催され、人気を博している。

http://mainichi.jp/enta/art/sonbun/

庄吉は、明治元年に長崎で生を享け、生まれて間もなく貿易業と精米所を営む遠縁の梅屋商店の養子となる。

世界に開かれた港町で海外雄飛の志を抱いた庄吉は、両親の反対を押し切り、14歳で清朝末期の上海に密航。
そこで、欧米人による中国の人々に対する屈辱的な扱いを見て、同じ東洋人として憤った。

その後、壱岐出身のトクと結婚。2人で香港、シンガポールへと渡り、写真館経営や映画興行で巨万の富を築く。
帰国後、日本活動写真(日活)の前身となる映画製作会社、M・パテー商会を興し、成功を収める。

2人の出会いは、1895年、孫文が香港で庄吉の写真館を訪れた時だった。
その革命思想に共感した庄吉は、「君若挙兵、我以財政相助」(君は兵を挙げよ、我は財をもって支援す)と
資金援助を約束する。




日本の右翼が孫文の革命を支援した?!

当時、孫文は日本を革命の拠点とし、庄吉をはじめ、
宮崎滔天、犬養毅、頭山満、山田良政など日本の篤志家、政治家の支援を受け、革命に奔走した。

孫文の号の中山も、明治天皇のご生母の父、中山忠能公爵邸の表札の文字を見て中山と称するようになったものだ。
中山の名は、孫文の出身地である広東省の中山市、中山大学、中山路など、現在も中国各地に残る。

梅屋夫妻は、孫文と妻の宋慶齢の縁を結び、1915年に東京・新宿の自宅で披露宴を催している。
庄吉は、終生、2人の盟約を守り、孫文に多額の資金を提供し続けた。

孫文.jpg

1925年、孫文は、
「革命尚未成功、同士仍須努力」(革命なおいまだ成功せず、同士よってすべからく努力すべし)

と言い残し、北京で志半ばで病死した。

庄吉はその偉業を後世に伝えようと、娘の結婚資金までをもはたいて、4体の銅像を中国に贈った。
映画「大孫文」製作を計画するものの、日中関係の悪化により実現しなかった。

34年、広田弘毅外相に日中関係悪化を食い止めるよう訴えに行く途中、駅で倒れ亡くなった。



中国の次の指導者、習近平副主席との関係


1世紀の時を経て、中国においても、梅屋庄吉の偉業が各地で顕彰されている。

昨年開催された上海万博の日本館においても「孫文と梅屋庄吉展」が催されたが、
2人が果たした日中友好の「知られざる友情の軌跡」を見ようと2万人を超える人が来場した。

その後、北京、武漢などでも、専門家によるシンポジウムと合わせて巡回展が催された。


9月3日から、孫文と庄吉が出会った香港でも、「孫文・梅屋展」が開催される。


2011
年は、上海と長崎の新たな友好交流15周年にも当たる。

長崎県では同地出身の梅屋庄吉の銅像を上海市に寄贈することを決めた。

一方、中国政府からは、孫文と梅屋庄吉・トク夫妻の銅像が長崎に寄贈される。
10
月1日から来年の3月25日まで、長崎歴史文化博物館で開催される
特別展「孫文・梅屋庄吉と長崎」で展示公開された後に、長崎市内に設置される予定だ。


中国共産党の胡錦濤国家主席の最有力後継候補と目される習近平国家副主席も長崎県とは特別に深い関係にある。


副主席は、福建省長や上海市党委員会書記といった同県と古くから関係の深い中国の地方行政のトップを歴任した
キャリアを持つ。


福建省は、長崎の出島が江戸時代に日本で唯一海外に開かれていた頃から来日していた多くの中国人の出身地
だった。




ハウステンボスを初めて黒字化したHIS澤田秀雄会長が「上海航路」を復活


また、「上海航路」によって、明治以降、戦後に至るまで、
上海と長崎は、下駄ばきで行き来したと言われるほど、貿易や観光など密接な交流関係にあった。

折しも、11月3日、長崎と上海を結ぶ「上海航路」が復活を遂げる。
両地を約20時間で結び、運賃は片道7~8千円の予定だ。

上海貨客船.jpg

HISの澤田秀雄会長が社長を務め、創業以来初めて黒字化を達成したハウステンボス(佐世保市)が運航する。

中村知事と澤田社長.jpg



その後、1月下旬の旧正月に当たる春節の時期に週1~2便の不定期運航とし、3月以降は週3便程度の定期的な
運航を目指している。


http://blogs.yahoo.co.jp/yotajii/61021269.html
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20110521/02.shtml

また、「夕刊フジ」で連載された、歴史作家、井沢元彦氏による小説『友情無限 孫文に1兆円を与えた男』を
原作に、
日本・中国・香港の合作映画を制作する企画も持ち上っている。



庄吉と孫文が夢見た、日中の古くて新しい友好関係を再構築しよう!

日本と中国は、様々な問題を抱えながらも、経済的には、もはや切っても切れない仲だ。

ご近所の国同士であり、歴史的に見れば、両方の民族は、兄弟であったり、親子、夫婦であったとも言える。


今こそ、庄吉と孫文が夢見た、日本と中国の古くて新しい友好関係を再構築しなければならない。
そのためには、私たち一人一人が日本の歴史を正しく学び、そして、それを伝えて行かねばならない。


参考文献:「革命をプロデュースした日本人」(小坂文乃著)

http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2158833

小坂文乃氏インタビュー動画http://www.youtube.com/watch?v=ZTISz7aT6Ow


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