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採用・法律

第14回 『円滑な事業承継を実現させるための相続対策とは?!』

中小企業の新たな法律リスク

以前(第8回参照)、太田社長が賛多弁護士に会社の事業承継の相談をしたところ、信託を使った会社株式の事業承継についてアドバイスを受けました。今日はその事業承継に絡む相談のようです。
* * *
太田社長:賛多先生、以前は事業承継のアドバイス、ありがとうございました。株式の承継に信託を使うことで節税になるなんて、まったく知らないことでしたので、とても勉強になりました。
 
賛多弁護士:お役に立てたならば幸いです。ただ、以前お話ししたように、税務面でのメリットがないなどの留意点がありますので、利用にあたってはきちんとスキームを検討する必要がありますからね。
 
太田社長:はい。具体的な検討段階になりましたら、是非また相談させて下さい。それで、今日お聞きしたいのは、事業承継に絡むことなのかもしれませんが、私の財産全般のことなのです。
 
賛多弁護士:社長の個人資産の相続の関係ということでしょうか。
 
太田社長:その通りです。私には妻と子供達(長男・長女)がいまして、私も妻もまだまだ元気ですし、子供達も自立してそれぞれ家庭を持ち、私達のことも大事にしてくれているので、万が一、私に何かあっても大丈夫だとは思うのですが、最近テレビや週刊誌で「争族」などという言葉を見聞きしたりしたもので、ちょっと気になったのです。
 
賛多弁護士:なるほど。社長、遺言書はお書きになっていますか。
 
太田社長:いいえ、書いていないです。さっきも言いました通り、子供達は私達を大事にしてくれているので、遺言書などなくても、みんなで上手く話し合ってくれると思っていたのです。そもそも、子供たちは小さい頃から一切喧嘩などせず兄弟仲良くやってきましたし、今でも兄弟同士、家族ぐるみで付き合っていますから。
 
賛多弁護士:そうですか。でも、遺言書を書かないままの状態で、万が一、社長が他界された場合、残されたご家族でうまく話し合いができればよいのですが、話し合いがまとまらないと、大きな問題になりかねません。
 
太田社長:どんな問題でしょうか。
 
賛多弁護士:社長が遺言書を書かないで相続が発生すると、残されたご家族、すなわち相続人には法定相続分での割合で権利が発生し、社長の個人資産、すなわち相続財産は一旦全て相続人間での共有となります。ところで社長の個人資産はどんなものがありますか。
 
太田社長:自宅不動産と車、生命保険、投資信託、現預金、あとは会社株式ですね。
 
賛多弁護士:そうですか。まず、社長がもっている会社株式ですが、相続人全員で準共有となります。そうなると、誰が株式を権利行使するのかについて定める必要があり、最終的には株式の帰属先を決めなければいけませんので、協議が難航すると厄介です。
 
太田社長:なるほど。では遺言書を書いておけば大丈夫なのですね。
 
賛多弁護士:はい。遺言書は必要でしょう。ただ、遺言書を書くにしても、遺留分というものに注意しなければなりません。太田社長の家族構成を踏まえ、仮に奥様に自宅不動産と現預金及び投資信託、ご長男に車と会社株式をそれぞれ相続させるとした場合、ご長女には相続させる財産がないのですが遺留分というものが発生します。
 
賛多弁護士:そして、ご長女が、自身に相続財産が無い点について納得してくれれば良いのですが、そうではない場合、今般、法律改正があり今年7月1日以降の相続で、ご長女は遺留分に相応する金額を社長の奥様やご長男に金銭請求することになります。しかし現預金が十分にない場合や自宅不動産、株式の評価額が高い場合、自宅不動産や株式を売却し現金化する必要が出てきます。
 
太田社長:そうなのですね、では個人資産についてもしっかり対策しなければなりませんね。賛多先生、改めて相談させて下さい。
 
賛多弁護士:承知しました。
 
 
* * *
 事業承継の問題を検討する際、会社資産の引き継ぎに目が行きがちですが、忘れてならないのは社長の個人資産の引き継ぎ、すなわち社長の相続問題です。そして、遺言書が無い場合や遺言書が有る場合でも財産分配の調整が不十分であると、社長自らが他界した後に相続人間でトラブル(いわゆる争族)が発生し、会社運営にも支障が生じかねません。円滑な事業承継を実現するためには、社長個人の資産に関する相続対策も必要です。
 
 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 丸山 純平

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