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製造業

第200号 品質情報管理を見直そう

柿内幸夫─社長のための現場改善

 下の写真は東京の羽田空港国際ターミナルに新しくできた江戸小路(EDO KO-JI)というショッピング街の風景です。中にあるお店の構成は普通なのですが、何しろこの外観です。
 日本人の私はウキウキしてしまいました。しかし外国から来た人はもっとエキサイトするのではないかと思います。事実たくさんの外国人の方々が嬉しそうにビデオ撮影をしていました。

 kaki200-1.jpg

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  これまで日本のこういう場所は近代的というか西欧風というか、画一的などこでも似たような風景になっており、どちらかというと、どんどん面白くない方に進んできたように思うのですが、この江戸小路はかなり違います。

 日本の昔の風景の再現に嬉しさを感じるのは、私が年を取ったからではないと思います。ここには我々が改めて考えるべき「これからの経営に役立つ何か」が潜んでいるのではないかと思っています。

 というのも、実は昔の日本には、今ではすっかり忘れられているけれど、改めて見てみると現代にも十分通用する「かなりすごいもの」があるのです。

 例えば、今回羽田空港で再現された江戸ですが、そこでは「みんなが助け合うエコ社会」を実現していたようです。

  この時代の「江戸しぐさ」を研究している柴田光栄先生に伺ったのですが、この時代の考え方はこれからの日本の中小企業経営にもかなり使えるものであるようです。
http://www.kkbrain.co.jp/webmaga_list/1101/shibata.html

 ところで、先回の宿題は実際に現場に行ってご自分の会社における品質情報の流れのレベルがどこにあるかを見て頂くことでした。いかがでしたか?

 「実にしっかりと品質情報管理がされていて、改めて安心しました」という方も「こんなはずでは…」と驚かれた方もいらっしゃるのではないかと思います。

 実は指導先のD社においても、これと同じ宿題をD社長に出しました。その結果は前者の「実にしっかりと品質情報が管理されていて、改めて安心しました」でした。

 しかし私が現場に行って見てみると、社長の判断とはだいぶ違う様子が見えました。例えば一時間に一回、抜き取りチェックをすることになっている現場に行ってみました。

 チェックリストの記録の状況を見るとそのタイミングまでの時間毎にしっかりOKのところに〇が記録されていました。社長はこの状況を見て安心したのです。

 さてこの状況で、読者の皆さんでしたらどうされますか?安心して帰るか、それともまだすることがあるか?

 私は安心しませんでした。そこでその時の作業担当者にいろいろな質問をしました。

・もしNGの判定が出た場合はどういう対応をするのですか?

・最近 NG が出たのはいつですか?その時の原因は知っていますか?

 このチェックリストは仕事終了後、誰に見せていますか?

 残念なことにこの時の担当者はこれらの質問にほとんど答えられませんでした。彼はこの工程の抜き取り検査の意味を全く教わっていなかったのです。

 昔の製造現場ではQCサークル活動があったからいろいろ学ぶことができたという現場でも、最近は活動が停滞しているということが多いです。

 そうすると、昔だったら自然に身に着いたQCの知識も今はほとんど教わる機会がない、すなわち担当者はQCを知らないと考えるべきです。

 システムがどのレベルで運用されているのか? ここまで踏み込まないといけません。仕組みができていたとしても、それが正しく理解されたうえで正確に実行されなければ「絵に描いた餅」でしかありません。

 後者の「こんなはずでは…」は決していいことではありません。しかし私はむしろこういう答えをしてくれた社長の方に安心感を抱きます。よく見ているということと、何らかの対策を取ったに違いないと考えるからです。

 ということで、再度同じ宿題を出させて頂きます。さらに厳しい目でご自身の会社内での品質情報の管理の状況を見てみてください。よろしくお願いします。

 今回の「社長のための現場改善」は第200号です。隔週の連載ですから8年間続いているということになります。読者の皆様に支えられてここまで来ることができました。心より感謝申し上げます。

 これからも頑張って、モノづくりの改善を通じて経営に貢献できるような役に立つ情報を送らせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 

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copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

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