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第124話 世界経済は同時減速から同時不況に転じるか?

第124話 世界経済は同時減速から同時不況に転じるか?

 世界経済は2008年リーマンショック以来最悪の状態となっており、日米欧先進国のみならず、中国・インドなど新興国にも異変が起きている。世界同時減速から同時不況に転じるかどうかが懸念されている。

◆中国6%成長は四半期統計開始以来の最低水準

 10月18日、中国国家統計局は最新経済統計を発表した。発表によれば、2019年1~9月期経済成長率は6.2%で、四半期別では1Q6.4%、2Q6.2%、3Q6.0%となっている。6%成長は1992年四半期統計開始以来の最低水準だった。米中貿易戦争による悪影響は鮮明になったことが示されている。

 次頁表1に示す通り、輸出、消費、投資など経済成長を左右する3大要素はいずれも失速している。人民元ベースでの輸出は前年同期に比べれば5.2%増で、伸び率は昨年の実績より1.9ポイントも低下。新車販売は15カ月連続減少となり、スマホ出荷台数の減少も続くため、個人消費は勢いを失い、小売総額が8.2%増にとどまった。昨年の実績より伸び率が0.8ポイント低い。設備、インフラ、不動産などを含む固定資産投資も5.4%増で0.5ポイント低下している。

 製造業の不振が目立つ。1~9月期鉱工業生産は前年同期比5.6%増で、伸び率は昨年の実績より0.5ポイント低下。雇用も悪化し、失業率が上昇している。今年9月末時点で5.2%にのぼり、前年末より0.3ポイント上昇し、リーマンショック以来の最悪の失業率となった。

 相次ぐ生産工場の中国撤退や経営破たん企業の続出及び企業利益の減少などの実情を見れば、恐らく中国経済の実態は政府発表より更に深刻と思う。

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◆アメリカ経済にも異変

 トランプ大統領が自慢するアメリカ経済も今、異変が起きている。今年第1四半期3.1%にのぼる経済成長率は第2四半期になると2%に急落し、1.1ポイントも下落した。減少幅はG7先進国では最大だった。

 次頁表2に示すように、今年9月の米国主要経済指標を見れば、第3四半期の成長率も楽観できない。9月の鉱工業生産は前年同期比▼0.4%で、前月の0.8%増から大きく悪化している。ISM製造業景況指数も47.8で、前月の49.1から後退し、2ヵ月連続で好不況の分水嶺である50を下回っている。これまでGDP成長に最も寄与してきた個人消費も落ち込み、小売売上高が8月の0.6%増から9月の▼0.3%に転落した。非農業部門の新規雇用は13.6万人にとどまり、前月より3万人強が少ない。

 9月の主要経済指標を見る限り、米国第3四半期のGDP成長率は2%割れが避けられない状態となっている。

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◆世界同時減速 リーマンショック以来最悪

 1位のアメリカ及び2位の中国はともに景気悪化しているため、世界経済は同時減速が生じている。

 10月15日、IMF=国際通貨基金は最新の経済見通しを発表し、2019年の世界全体の経済成長率は、3%と、3か月前の予想より0.2ポイント引き下げた。下方修正は5回連続で、リーマンショック以来の10年間で最も低い成長率だとしている。これは、アメリカと中国に加えて、ドイツの成長率も引き下げたためで、米中貿易戦争によって製造業の生産などへの悪影響が、想定よりも深刻になっていることが示されている。

 次頁表3に示す通り、欧米先進国の2019年成長率見通しはいずれも下方修正された。そのうち、アメリカは2.4%で、昨年の実績2.9%より0.5ポイント低い。ドイツは0.5%、フランスは1.2%、ユーロ圏全体1.2%で、昨年よりそれぞれ1ポイント、0.5ポイント、0.7ポイント低下している。

 先進国のみならず新興国も減速が止まらない。2019年中国は6.1%成長と予測され、昨年の実績より0.5ポイント低い。インドは6.1%、ロシアは1.1%、ブラジル0.9%で、昨年よりそれぞれ0.7ポイント、1.2ポイント、0.2ポイント低下している。ASEANの今年の成長率も昨年より0.4ポイント低い4.8%成長にとどまる見通しである。

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◆世界経済は同時不況になるか?

 IMFによれば、世界の9割を超える国・地域は2019年の経済成長が減速する見通しとなっている。さらに、IMFは「向こう5年、中国、アメリカ、ユーロ圏及び日本の経済成長率が高くなることがない」と警告している。

 問題は、今の世界同時減速はいつ同時不況に転じるかである。

 世界同時不況になるかどうかは次の2つの要素に大きく左右される。1つ目はリーマンショックのような金融危機はいつ発生するか?経済界には「金融危機10年周期説」がある。1997年アジア通貨危機から2008年リーマンショックまでは丁度10年。リーマンショックから10年以上経った現在、要注意の時期に入り、金融危機への備えが必要となる。

 2つ目の要素は米中2大国がいつ景気後退局面に入るか?

 過去60年間、中国経済がマイナス成長に転落したのは2回だけ。1回目は文化大革命最中の1967~68年で、1967年▼7.2%、68年▼6.5%、2年連続でマイナス成長を記録した。2回目は1976年で、▼2.7%だった。2回とも政変の発生が原因で、内乱によって経済成長が挫折した。1回目は劉少奇国家主席が失脚し、2回目は最高指導者毛沢東の死去に伴う彼の側近である「四人組」の逮捕というクーデータが発生した。国内経済または外部金融危機による成長挫折は一回もなかった。これまでの経験則によれば、中国経済の最大リスクは、実は経済ではなく、政治にある。政変が起きない限り、中国経済が後退局面に入る可能性が極めて低い。現在、習近平国家主席への権力一極集中が強まり、政変のシナリオが考えにくい。従って、今後数年間、中国経済は減速があってもマイナス成長にならないと見ていい。

 一方、アメリカはリーマンショックから回復し、2010年から経済成長が続いている。現在、アメリカ経済が抱える不安要素が多く、今後2年間、米国経済が後退局面に入ると予測する学者が少なくない。米中貿易戦争が早期に終結しなければ、景気後退局面の到来は早まる可能性が高い。

 結論から言えば、今後数年間、「チャイナリスク」より「アメリカリスク」の方は特に要注意だ。我々はアメリカ景気後退局面の到来に伴う世界同時不況に備えをしなければならない。 (了)

 

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経営コラムニスト紹介

沈 才彬
多摩大学 教授

1944年中国江蘇省海門市生まれ。中国社会科学院大学院修了。同大学院準教授、東京大学、早稲田大学、御茶ノ水女子大学、一橋大学などの客員研究員を歴任。三井物産戦略研究所主任研究員、同中国経済センター長などを経て、08年4月より、多摩大学経営情報学部教授、および、同大学院経営情報学研究科教授に就任。この間、天城会議(日本有識者会議)メンバー 、中国山東東亜研究所顧問、 国土交通省観光立国推進戦略会議WG委員などを兼務する。

近著に『検証 中国爆食経済』『今の中国がわかる本』『中国沈没』『中国経済の真実』『中国黒洞(ブラックホール)が世界をのみ込む』などがある。

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