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第120話 今上天皇がお好きの李白の詩「将進酒」

中国経済の最新動向

今年5月1日、皇太子徳仁親王さまが新天皇に即位され、元号も平成から令和に変わり、日本は新しい時代に入った。令和の時代に日中関係がどう深化するかが注目される。

 

今上天皇と面会された最初の外国要人は中国大使程永華だ

5月27日、訪日したドナルド・トランプ大統領は天皇陛下と会見した。即位後、天皇陛下が外国元首と面会されるのは初めてである。日米同盟を考えると、当然のことと思われる。

 

しかし、天皇陛下が即位後、面会された最初の外国要人は実はトランプ大統領ではなく、離任中国大使程永華氏であった。

 

報道記事によれば、天皇、皇后両陛下は5月9日、離任する中国の程永華大使夫妻とお住まいの赤坂御所で面会された。今上天皇が即位後、外国要人と面会される公務は初めてであり、両陛下は大使夫妻と笑顔で握手を交わし、陛下は日本語が勘能な程大使と通訳を介せずに約25分間、懇談されたという。程大使は駐日大使を歴代最長の9年余り務め、屈指の「知日派」と知られる。天皇陛下が即位後、最初に面会された外国大使が中国の程大使であることは、日中関係改善の証とも読み取れる。

 

今上天皇と中国ファーストレディの面会

トランプ大統領の次は、どの国の元首が天皇陛下と面会されるかが注目される。安倍首相は複数回にわたって中国の習近平国家主席に日本への国事訪問を要請し、いま日中双方は具体的な日程調整を行っているところだ。突発的な事件がなければ、トランプ大統領の次に、国事訪問の国賓として天皇陛下と面会される外国元首は習主席である可能性が極めて高い。

 

寡聞かも知れないが、これまで習主席が徳仁天皇と面会されたことはなかった。しかし習主席夫人、中国ファーストレディの彭麗媛女史は10年前に今上天皇と面会されたことがある。

 

2009年11月、当時の国家副主席習近平の妻で国民的歌手の彭麗媛女史が、所属する人民解放軍総政治部歌舞団の一員として訪日した。自身が団長を務める同歌舞団が、東京と札幌で中国オペラ「木蘭詩編」の上演を成功させた。木蘭は男装して従軍した少女の英雄で、ディズニーの1998年のアニメ映画「ムーラン」で知られている。彭麗媛女史が歌劇「木蘭詩編」の芸術総監を務めた。

 

最初の公演は11月11日に学習院創立百周年記念会館で行われた。周知の通り、学習院大学は今上天皇の母校であり、陛下は大学時代に音楽部管弦楽団に所属。趣味は登山のほか、ヴィオラ奏者としての顔も国民に広く知られている。チャリティーコンサートでヴィオラの独奏を披露されることもある。

 

公演では、人民解放軍総政治部歌舞団が歌劇を演じ、指揮者の堤俊作氏が率いる日本の楽団ロイヤルチェンバーオーケストラが演奏を担当している。今上天皇と親交のある堤氏の招きで、当時の皇太子・徳仁親王さまが私的に訪れた。公演会場の2階VIP席で皇太子さまと彭麗媛女史が隣り合わせの席で一緒に観劇し、言葉を交わした。アジア通信社の記者はその瞬間をカメラに収めた(下の写真を参照)。

A.jpg

写真説明)学習院創立百周年記念会館にて開催される、中国歌劇「木蘭詩篇」日本公演を鑑賞する徳仁親王と彭麗媛氏

出所) アジア通信社発行『中国経済新聞』。

 

「機会があれば中国の黄河を見に行きたい」

 一体、当時の皇太子さまは彭麗媛女史とどんな話を交わしたか? アジア通信社の報道記事によれば、皇太子さまは音楽やオペラのほか、唐の詩人李白の詩にも触れたという。

 

 「私は李白の詩が好きです」。こう話を持ち出した皇太子さまは李白の詩「将進酒」の冒頭の詩句「君  見ずや 黄河の水天上より來たり 奔流して海に到り復た回(かへ)らざるを」を暗誦した後、「機会があれば、御国の黄河を見に行きたい。黄河の水がいかに天上より來たるかを見たいです」と。彭麗媛女史も「ご都合が良い時、ぜひとも中国を訪問してほしい」と応じたという。

 

  「將に酒を進めんとす」との題名のとおり、酒を進めるこの詩は、楽府の曲に乗せて宴会で歌われたのだと思われる。李白の酒の詩の中でも最も豪放で、楽しいものである。ロマンティックの傑作と思われ、中国人のみならず、多くの日本人にも好かれる。今上天皇も李白のファンの1人と言える。

 

 それから10年後、当時の皇太子さまは即位され、彭麗媛女史も中国のファーストレディとなっている。今上天皇はいつ中国を訪問されるか? 訪中が実現された場合、陛下が黄河を見に行かれるかどうかが注目される。(了)

 

添付 李白の詩「将進酒」(原文、和訳及び現代語訳)

「將進酒」:李白(唐)

 君不見, 黄河之水天上來, 奔流到海不復回。

  君不見, 高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。

 人生得意須盡歡, 莫使金樽空對月。

天生我材必有用, 千金散盡還復來。

烹羊宰牛且爲樂, 會須一飲三百杯。

岑夫子, 丹丘生, 將進酒, 杯莫停。

  與君歌一曲, 請君爲我傾耳聽。

 鐘鼓饌玉不足貴, 但願長醉不願醒。

 古來聖賢皆寂寞, 惟有飲者留其名。

 陳王昔時宴平樂, 斗酒十千恣歓謔。

 主人何為言少錢, 徑須沽取對君酌。

 五花馬, 千金裘, 呼兒將出換美酒, 與爾同銷萬古愁。

 

【和訳】 「將に酒を進めんとす」 李白(唐)    

君 見ずや 黄河の水 天上より來たるを,

奔流して海に到り 復た回(かへ)らざるを。

君 見ずや  高堂の明鏡  白髮を悲しむを,

朝には青絲の如くも  暮には雪と成るを。

人生 意を得ば  須らく歡を盡くすべし,

金樽をして  空しく月に對せしむる莫かれ。

天 我が材を生ずるや  必ず用有り,

千金 散じ盡くすも 還た復た來たらん。

羊を烹(に)牛を宰りて 且らく樂しみを爲せ,

會らず須らく 一飲  三百杯なるべし。

 

岑夫子, 丹丘生, 將(まさ)に酒を進めんとす、杯停むること莫かれ。

君と一曲を歌はん, 請ふ  君  我が爲に耳を傾けて聽け。

鐘鼓 饌玉 貴ぶに足らず, 但だ 長醉を願ひて醒むるを願はず。

古來  聖賢  皆  寂寞, 惟だ飲者の其の名を留むる有り。

陳王  昔時  平樂に宴し, 斗酒十千  讙謔を恣(ほしいまま)にす。

主人 何為れぞ 錢少しと言ふや,

徑(ただち)に須く  沽ひ取りて 君に對して酌ぐべし。

五花の馬, 千金の裘, 兒を呼び  將に出して 美酒に換へしめ,

爾と同(とも)に銷さん萬古の愁を。

 

【現代語訳】 「將に酒を進めんとす」

君には見えるかい、黄河の水が天上から降ってきて、海へと奔流し二度と戻らないさまが。

 

君には見えるかい、高堂に住む富貴な人も鏡に自分の白髪頭を見て、朝には黒髪であったものが、夕べには真っ白になるのを悲しむ姿が。

 

人生をありのままに受け入れ大いに楽しむがよい、黄金の酒樽を空しく月に向き合わせていてはならぬ。

 

天が私を生んだからには必ずなすべき用があるのだ、千金は使い果たしてもまた戻ってくる。

 

羊を煮て牛を料理し歓楽を尽くそう、必ず一度に3百杯は飲もう。

 

岑先生よ、丹丘君よ、さあ一杯やれ決して拒んではならぬ。

 

君と一曲を歌おう、どうか私の歌声に耳を傾けてくれ。

 

鐘や太鼓やうまい食い物はなくてもかまわぬ、ただただ長く酔っ払って覚めないように願おう。

 

古来の聖賢は皆寂しく、酒飲みの人だけがその名を残している。

 

陳王は昔、平樂に宴し、一万斗の酒で歓楽を尽くしたというではないか。

 

主人よ、金がないなどと情けないことをいうなかれ、ありたけの酒を買ってきて客人に注いでくれ。

 

五花の馬も千金の裘も、召使を遣わせて美酒に換え、共に萬古の愁を消しつくそうではないか。

 

 

 

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