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第10講 長居したくなるお店を目指す、ディズニーの挑戦

第10講 長居したくなるお店を目指す、ディズニーの挑戦

「米・ウォルト・ディズニー・カンパニーが米国と欧州で340店舗を展開する「ディズニー・ストア」については、皆さんもよくご存知
だろう。日本に55店舗あるのはディズニーの直営店ではなく、株式会社リテイルネットワークスが経営しているが、日本もアメリカ
も、基本的なコンセプトは同様。「ディズニーのキャラクター・グッズを専門に売るお店」だ。

アメリカで1987年にスタートしたディズニー・ストアは、当初は大変な盛況で、瞬く間に600店舗以上に拡張した。
しかし、その後、年間1億ドルの赤字を出すまでに経営が悪化。一時、他社に売却されるなど経営の手を変えたが、
2008年にディズニーに買い戻され、再建の道を模索していた。

そのディズニー・ストアが、アップルのスティーブ・ジョブの手を借りて、店舗の大刷新に乗り出すという。プロジェクト予算は
なんと一店舗につき100万ドル。全店舗を刷新するほか、ニューヨークのタイムズスクエアの旗艦店を筆頭に、新規店舗の
展開もアグレッシブに進めていく予定らしい。まさに、ディズニーの命運を賭けた大胆きわまりない挑戦だ。


店舗刷新のテーマは、「モノではなく、エクスペリエンスを売る店舗をつくる」ことだという。

今日まで、ディズニー・ストアのビジネスは、驚くほど「商品フォーカス」だった。ディズニー・パークをはじめ、「エクスペリエンス」
に重きを置いたディズニーという会社において、異色の存在だったといえる。というのも、ディズニーはライセンシングの王者。
消費者向け商品のライセンシング収入だけで、年間300億ドルもあるという。極端に言えば、黙っていてもお金が転がり込んで
くる仕組みを持っているということだ。

だから、これまで、ディズニー・ストアのビジネスにおけるアプローチも、それを反映したものだった。ディズニーのキャラクター・
グッズを並べておけば、黙っていても顧客が来てそれを買っていく。そしてお金が入る。そんなビジネスのやり方が通用した時代もあった。

しかし、問題は、「ディズニーのキャラクター・グッズなら、今どきどこでも買える」ということだ。モノだけが買いたければ、
わざわざディズニーストアに行かなくても、それこそアマゾンに行けばマウスのクリックひとつで手に入れることができるのだ。

ウェブ時代の顧客にとっての現実は、「モノはどこでも買えるが、『行きたい』と思うお店は限られている」ということだ。
企業にとっては、厳しい、しかし避けて通ることのできない認識である。

アップルは、この現実をよく理解している。iPod、iPhoneの洗練を極めたデザインや、ユーザーの心を躍らせる機能性に見る
ように、アップルは、元来、「商品フォーカス」の会社である。しかし、それでいて、アップルの店舗に関する考え方は、徹底的に、
「エクスペリエンス・フォーカス」であり、顧客が心から「行きたい」と思う店舗、「長居したい」と思う店舗づくりを、見事に実践している。

「イマジネーション・パーク(Imagination Park)」という名前でリブランディングされる新しいディズニー・ストアは、ハイテック/
ハイタッチをデザイン・コンセプトの中核とする。オンデマンド映像の上映や、カラオケ・コンテスト、ディズニー・スターとのライブ・
チャットなど多種多様なイベントを開催する常設シアター。プリンセスの髪飾りを手に、マジック・ミラーの前を通ると、シンデレラ
が突如現れ、話しかけてくれる仕掛け。子供を遊ばせている間に、親は、店内キオスクを通じて、ディズニー・パークのイベント
をチェックしたり、予約したりすることもできる・・・。それは、もはや、モノを買うためだけの場所ではなく、ディズニー・ファンが
集い、触れ合うコミュニティの場だ。


先月のコラムでも述べたが、「売る仕組み」ではなく、「買っていただく仕組み」を考える店舗づくりは、ディズニーなど大企業ば
かりではなく、中小のお店でも活発に取り組まれている。例えば、ロサンゼルスのアボット・キニー通りにある「インテリゲンツィ
ア・コーヒー・アンド・ティー」
では、店に三、四人いるバリスタがそれぞれ担当カウンタをもち、個々の顧客と向き合い、一対一
でコーヒーをいれてくれる。バリスタのカウンタを店の中心とし、客席がそれをぐるりと囲む店内は、まるで劇場さながらだ。

唯一無二の体験や、感動を提供して、顧客に「あの店で買いたい」と熱望させることができなければ、「ただのモノ売り」として
価格競争にさらされることになる。そんな店舗には未来はない。最終的に、「買っていただく」ことが目標でも、顧客にとって
「買う」こと以外の意義を提供できなければ、競争に勝てない時代が来ている。顧客は、なぜ自社のお店に来るのか、
その答えが、「モノを買うため」だけであるなら、今いちど、店舗づくりを考え直す必要がある。


参考サイト
ウォルト・ディズニー・カンパニー:http://corporate.disney.go.com/
アップル:http://www.apple.com/
インテリゲンツィア・コーヒー・アンド・ティー:http://www.intelligentsiacoffee.com/

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2010.09.10
第13講 新しい「E」コマースの波
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第12講 小手先でない売れる仕組みの追及
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第11講 クラウド(雲)の中でお客様とつながる仕組み
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第10講 長居したくなるお店を目指す、ディズニーの挑戦
2009.01.15
第9講 顧客目線で創る、新しい店舗のかたち
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経営コラムニスト紹介

ダイナ・サーチ・インク代表 石塚しのぶ氏

石塚しのぶ氏 ダイナ・サーチ・インク代表

ダイナ・サーチ、インク代表、日米間ビジネス・コンサルタント。1972年、南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程卒業。その後、コニックスバーグ・インストゥルメント社においてNASAプロジェクトのプログラム・マネージャーを担当、プロジェクト・マネージメントのスペシャリストとして経験を積む。

1979年にカリフォルニア州認定技術士の資格を取得。1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ、インクをカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米国優良企業、業界の研究レポートを数多く手がける傍ら、アグレッシブな成長を目指す先進的日本企業をクライアントにコンサルティング業に精力的に従事。

日米間ビジネス・プロジェクトにおいて、クライアント企業の目標をビジュアライズ(可視化)し、到達までの道のりを組み立て、水先案内人としての役割を果たす。「実践重視のコンサルティング」を掲げ、机上のリサーチのみならず、
現場の観察や経営者との対話を通して、優良企業の「仕組み」について学び、クライアント・ビジネスの活性化に役立てることを信条としている。

著書に、「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる」「ザッポスの奇跡」、【新 刊】理念浸透の《コア・バリュー経営》のやり方CD が発売されました!

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