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第9講 顧客目線で創る、新しい店舗のかたち

第9講 顧客目線で創る、新しい店舗のかたち

「顧客目線で創る」ということを、極めて実践的に捉えた新しい店舗づくりがアメリカで始まっている。

対象となる人の行動を観察を通して分析する、「エスノグラフィ」と呼ばれる文化人類学の研究手法が、顧客研究の手段として
ビジネスの世界に導入され始めて久しい。ここで取り上げたいのは、それをもう一歩発展させて、「顧客の体験を共有する」
ことによって洞察を深め、店舗のエクスペリエンス・デザインに活用するという試みだ。


代表格はドラッグ・ストアである。日本ほどではないが、社会の高齢化が進む中、「高齢者のニーズに対応する店舗づくり」に
多大な資金と労力が注がれている。言わずと知れたことだが、高齢になればなるほど、ネットではなく、「店舗」が日常生活に
占める重要性が高い。アメリカでは、2030年までに高齢者(65歳以上)が7,150万人に達し、総人口の20%近くを占めるよう
になるというが、この、「来るべき巨大消費層」を取り込もうと、消費者向け商品、とくに、医療/健康関連商品のメーカー、
リテーラーは研究開発に余念がない。

米国のドラッグ・ストア最大手のウォルグリーンでは、経営幹部自ら高齢者になりきってシュミレーションを行う。緑内障や
白内障など、老化に伴って起こりがちな視覚障害を模擬する特製の眼鏡をかけ、指の自由を奪う手袋をはめ、靴の中には
未調理のポップコーンの粒を詰めて、いざ、売り場へと出動する。手袋はリウマチ、靴の中のポップコーンは足腰の安定性
の衰えを疑似体験させるためのものだ。

顧客の目、手、足をもって、経営幹部たちは店舗をブラウズし、顧客の「不自由」を実体験する。店頭で配布されているチラシ
の文字は小さすぎ、老化して衰えた目には見えにくい。親指の間接がこわばり、手にくっついて離れない状態では、缶詰を
持ち上げるという単純な動作にも根気と、集中力を要する。足腰の弱りから、屈んだり、棚の高いところに手を伸ばすことも
おぼつかない。今まで、「普通」として認識していた店舗環境が、ある特定の顧客にとっていかに不便かということが身をもって
実感されてくる。

店内表示や商品ラベルの文字を大きく、見やすいものにする、棚に虫眼鏡を置く、ボトル入り飲料水や洗剤など、持ち上げる
のに力を要する商品の売り場には、ヘルプ・ボタンを設置し、必要に応じて店員を呼べるようにするなど、ウォルグリーンでは、
一店舗あたり3万ドルから5万ドルを費やし、店内の改装に取り組む予定だという。


大手小売会社の経営幹部が、顧客目線に立ち、洞察を深めることを目的とした研修プログラムは、これらの店舗に商品を提供
するメーカーの開発/運営によるものだ。かつては、メーカーの「店頭販売サポート」といえば、販促費の提供や棚割り支援、
販売員の派遣など、「より良く売る仕組み」の提案に終始していた。しかし今日では、「お客様に、より良く買っていただく仕組み」
の提案へと焦点が移行しているといえる。

従来的な言い方をすれば、「流通の川上」にいるメーカーも、最終顧客にどれだけ接近できるかが差別化の決め手になる時代
が来ているのだ。そして、先進的なメーカーは、「いかに顧客に近づくか」において小売業者をサポートする。先月(8月号)の
コラム
で、スーパーの精肉売り場について書いたが、精肉の卸業者が、小売業者を対象に、ミート・カッターの教育プログラム
を提供している例は、この流れに沿っている。

もうひとつ強調したい点は、業界、業種を問わず、ビジネスにおいて、「洞察力」を高めることの重要性だ。「会社」という仮面を
かぶったが最後、「顧客」の視点に盲目になり、職業的思考しかできない人が多いが、顧客主導時代の企業人としてこれは
致命的な欠点だ。あくまで、一生活者としての視点に立ち返って、自社の事業、商品、サービス、顧客接点を見直すことが、
経営者として高い地位に立つ人ほど、求められるようになってきていると思う。「売れる仕組み」は、市場の洞察から始まる。
 

参考サイト
ウォルグリーン:http://www.walgreens.com/

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経営コラムニスト紹介

ダイナ・サーチ・インク代表 石塚しのぶ氏

石塚しのぶ氏 ダイナ・サーチ・インク代表

ダイナ・サーチ、インク代表、日米間ビジネス・コンサルタント。1972年、南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程卒業。その後、コニックスバーグ・インストゥルメント社においてNASAプロジェクトのプログラム・マネージャーを担当、プロジェクト・マネージメントのスペシャリストとして経験を積む。

1979年にカリフォルニア州認定技術士の資格を取得。1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ、インクをカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米国優良企業、業界の研究レポートを数多く手がける傍ら、アグレッシブな成長を目指す先進的日本企業をクライアントにコンサルティング業に精力的に従事。

日米間ビジネス・プロジェクトにおいて、クライアント企業の目標をビジュアライズ(可視化)し、到達までの道のりを組み立て、水先案内人としての役割を果たす。「実践重視のコンサルティング」を掲げ、机上のリサーチのみならず、
現場の観察や経営者との対話を通して、優良企業の「仕組み」について学び、クライアント・ビジネスの活性化に役立てることを信条としている。

著書に、「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる」「ザッポスの奇跡」、【新 刊】理念浸透の《コア・バリュー経営》のやり方CD が発売されました!

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