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<事例―35 日プラ(B2B)>水族館用大型アクリルパネルで世界シェア70%を誇り、納入実績は世界60ヶ国に及ぶ世界的中小企業…それが「日プラ」だ

酒井光雄 成功事例に学ぶ繁栄企業のブランド戦略

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 ●世界中から注目を集めるアクリル製水槽メーカーになった中小企業
 
 「日プラ(敷山哲洋代表)」は、高松市に隣接する香川県木田郡三木町に本社を構え、従業員数86名、年商20億円(2015年現在)の企業だ。
 
 透明なトンネルを歩くとペンギンが空を飛ぶ旭山動物園、ドーナツ型の空中水槽をゴマアザラシが泳ぎ回る登別マリンパークニクス、巨大水槽の先駆けとなった沖縄美ら海水族館、さらにザ・ドバイモールなど数多くの海外の水族館も同社製のアクリルパネルを採用している。
 
 沖縄美ら海水族館の「黒潮の海」は、高さ8.2m、幅22.5m、厚さ60㎝、総重量135tのアクリルパネルで、2002年に「1枚のアクリルパネル」による「水族館の窓」としてギネスブックに世界最大と認定され、続いてドバイ水族館(ドバイショッピングモール内に2008年11月開館)の「水の壁・アクアウォール」でギネス記録を更新。
 
 続いて2014年に中国珠海のチャイムロング横琴海洋王国、2015年中国の成都、同年中国の広州とギネスの世界記録を更新し続けている。同社の水族館用大型アクリルパネル「アクアウォール」は、コンクリート以上の強度と耐久性をもち、40年経過しても透明度が変わらないのが特長だ。
 
 同社のアクリルパネルは大きさだけでなく、世界60ヶ国以上の300を超える施設で採用されている中で、事故がないことが大きな売り物だ。それを可能にしているのは、海外への納入時にも日本から社員を派遣し、長年培った技術と共に責任を持って施行の全工程を担当し、引き渡し後も品質管理を怠らない企業対応にある。
 
 同社に声が掛かった案件には、魚や動物の生態を踏まえた上で、最適な形状と最も経済的なサイズを提案する。また契約の際は商社や販社は通さず、施主と直接契約を結ぶ。直接取引を行うのは、顧客の声を直接聞き、商社や販社を経由しない分価格を抑えられるため、取引先の満足につながるからだ。
 
 ●海外に活路を見出し、採用実績づくりによりブランド力を向上
 
 日プラを創業する前に敷山哲洋氏は化学メーカーに勤務していたが、在籍時の1969年に高松市の屋島山上(やしまさんじょう)水族館(香川県高松市。現在の新屋島水族館の前身)の館長から、来場者の目障りになるので「水槽の柱をなくしたい」という要望を受けたが、勤務先の化学メーカーはその依頼を断ってしまった。
 
 「アクリル製水槽の仕事を手掛けてみたい」と考えた敷山氏は化学メーカーを退社し、仲間と共に起業。柱がなく360度見渡せるアクリルパネル製の巨大回遊水槽を翌年1970年に納入し、これが同社の転機になった。
 
 世界初の水族館向けアクリル製大型水槽パネルは大きな話題を集め、国内の水族館から注目されたが、水族館ブームが起きると大手アクリルメーカーが市場に参入したため、地方にある無名の中小企業ではいかに品質が高くても採用されない事態に直面した。
 
 『大手企業は信用できる』という価値意識が強い日本では、いかに品質が高くても中小企業は信用度の点で大企業に負けてしまうからだ。
 
 そこで同社は海外に活路を求め、1992年にアメリカのモントレーベイ水族館の増築工事入札に参加。日米の大手アクリルメーカーとの競合だったが、性能検査で最も優れていると評価されたのが日プラだった。
 
 同社の見積もり額は競合他社と比較して1割ほど高かったが、「高品質なのだから値が張るのは当たり前」だとしてモントレーベイ水族館の館長は日プラの採用を決めた。
 
 さらに世界の水族館関係者が顔をそろえる落成記念パーティで、日プラのパネルの品質を賞賛してくれたことをきっかけに、各国の水族館で日プラのアクリルパネルが続々と採用されるようになっていった。
 
 こうした経緯を経て世界中の著名な水族館から依頼が殺到し、日プラの水族館用大型アクリルパネル「アクアウォール」は世界シェアの7割を誇り、納入実績は世界60ヶ国を数える世界的企業に成長している。
 
 
<「日プラ」の事例に学ぶこと>
 
 日本では採用実績が少ない中小企業よりも、「大企業」という看板で発注先を選ぶ傾向が強い。こうした悪弊を打破するには、海外で採用実績をつくり、海外で評価を受けてしまうことだ。
 
 また商社や販社を経由せず直接契約を結べば、自社と納入先の相互に最適な価格を提示でき、取引先の満足度も向上できる。さらにアフターサービスを徹底して無事故を続ければ、業界での評価が一層高まり、新規需要の開拓につながる。
 
 飛躍する企業は「商品力」に加え、「海外での採用実績づくりによるブランド力の向上」と「商社や販社を経由しない直接契約」さらに「メーカーのサービス力強化」という進化経営のセオリーを実践していることがわかる。
 
 
 
 
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