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第22回 「無意識に入れる」

社長の「氣」

 「身につける」学びにおいては、知識を得ただけ、あるいは頭で理解しただけは意味がないことをこのコラムで何度も触れて参りました。
 多くの人にとって、姿勢も呼吸も日常生活での様々な動きも無意識のものです。ここで言う無意識とは「不用意」という意味ではなく、「自覚してない意識」を指します。
 元々、無意識で行っていることを意識して学び、意識して出来るようになったことを無意識で出来るように鍛錬することが重要です。そしてまた、意識して学び、無意識に戻す。この「意識→無意識→意識→無意識→・・・」という一連のプロセスを「学び」と言い、武道では「稽古」と言います。
 学び方のコツとしては、「出来た」「出来ない」と一回ごとに舞い上がったり沈んだりせず、淡々と同じことを繰り返して、無意識に入れてあげることです。これも「学び方を学ぶ」一つです。
 残念ながら、昨今の教育現場では「意識して行う」ことしか教えなくなって来ています。「意識すれば出来る」状態では身についたとは言えず、「意識しなくても出来る」状態になってはじめて身についたと言えます。したがって、意識だけではなく、無意識を扱ってはじめて教育なのです。
 先代の藤平光一と私は師弟の関係ですが、幼い頃は親子の関係でした。私は脱いだ履物を揃えられない子供でした。そんな私を見て、氣性の荒かった母は常に腹を立てていました。海外での指導から一年ぶりに帰国した父が、あるときその状況を目にして「よし!自分に任せなさい」と母に言いました。
 それを聞いた私はどれだけ厳しく叱られるのかと警戒しましたが、父には叱る素振りは全くありません。安心した私はまた履物を揃えないのですが、その度に父はニコニコしながら私を呼び、「一緒にやろう」と履物を揃えます。すぐにまた散らかするのですが、その都度呼ばれて「一緒にやろう」と履物を揃えます。
 それを何十回、何百回と繰り返したでしょうか。そのうちに、私は意識せずに履物を揃えるようになりました。まさに習慣づいたのでしょう。その様子を見た母は「自分にはその様な氣長なことは到底出来ない」と言っていましたが、父は「これが身につける最も近道なのだよ」と言っていました。
 厳しく叱ってやらせるのは「意識すれば出来る」という状態です。つまり、叱られなければ止めてしまいます。それでは元の木阿弥。結局、出来るようになりません。他方で、習慣づくということは「意識しなくても出来る」という状態で、叱れるかどうかに関わらず出来るようになります。
 この「ニコニコしながら」というのもポイントで、「これから叱るぞ」という氣を父が発していたら、私の意識は抵抗してしまい無意識には入らなかったことでしょう。ニコニコしながら語りかけられているので、抵抗する必要もなく、そのまま無意識に入ったのです。
 道場で説く氣の原理に基づき、父は私に「無意識に入れる」ことを徹底していました。後に、父が道場での指導も同じようにしていることに氣づきました。
 「10回言って出来なければ11回、100回言って出来なければ101回」の精神で、人を育成していました。
 時に厳しく指導することもありましたが、それすらも意識に深く入れるために敢えてしているようでした。
 この体験から、指導者となった現在、私自身も同じように相手の無意識に入れることを心がけています。一つの技がうまく出来ない人に、言葉で説明したり、厳しく叱責したりしても決して出来るようになりません。何度も何度も繰り返して無意識に入れることで出来るようになります。
 ご家庭においては、お子さんが自分の話を聞いているかどうか分からないとき、理解しているかどうか分からないときにイライラする親御さんが多いことでしょう。そんなときも「今この子の潜在意識に入れているのだ」と捉えれば、イライラせずに同じことを氣長に何度でも語りかけられるようになります。
 このたび、慶應義塾大学大学院の前野隆司教授が出された新刊『無意識の整え方』に私との対談が掲載されています。前野先生はシステムデザイン・マネジメントが専門で、近年は人間の無意識を研究しています。
今回のテーマである「無意識に入れる」ことがテーマの対談ですので是非お読み下さい。
 
 
『無意識の整え方』
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