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第13回 「継承する」

社長の「氣」

 私は二代目です。一般社団法人 心身統一合氣道会の会長という立場にありますが、これは組織の長として選出されているだけで、任期を終えたら後進に譲ることになります。
 私の本来の役割は、心身統一合氣道という「道」の継承者であり、この役割は生涯をかけて全うします。つまり、私は「組織」としての二代目ではなく、「道」としての二代目です。2007年(34歳)に組織の長となり、先代の逝去により2011年(38歳)に継承者となりました。
 日本経営合理化協会で学ばれる経営者の皆さんの中には、お子さんを後継者にと願う方がいらっしゃいます。そこで、帝王学・人間学を体験的に学ぶ場として「氣の道場」を選ばれる方がいます。
 国際的な組織、武道という縦社会、かつ実力が求められる厳しい環境で私が若くして長を務めているため、「どうしたら先生のようになるのですか」とよく尋ねられます。私自身が成長の途中にある中で継承について語るのはおこがましいので、日頃、私が氣をつけていることをお伝えしたいと思います。
 会社の二代目・三代目となる人は、会社を支えて来た幹部よりも若くに就任することになります。日本社会は年齢を重視します。「若い=未熟」と捉えられます。国内で外部講習の指導をする際、よく「先生はお若いようですがお幾つですか」と聞かれます。
 若さに不安を感じるのでしょう。一方で、アメリカで外部講習の指導をする際、年齢を聞かれることはまずありません。「先生から何を学べますか」と聞かれます。
 ロサンゼルス・ドジャースの指導でも、一度も年齢を聞かれませんでした。その代わりに内容が重視されます。30代の頃は日本よりもアメリカの方が仕事しやすかったのが現実です。
 これは仕方がないことで、「そういうもの」として受け入れることです。スポーツでいうルールのようなもので、野球には野球のルール、サッカーにはサッカーのルールがあり、野球にサッカーのルールを持ち込むことは出来ません。
 同様に、「二代目・三代目だから」と周囲から色眼鏡で見られるのも避けることは出来ません。その立場だからこそ得られるものがあるのは事実であり、「そういうもの」として受け入れ、内容で示していくことに尽きます。
 周囲の見方を変えることなど元より不可能です。不可能なことにエネルギーを使うのではなく、可能なことに使うようにしています。
 先代から継承するにあたって最も重要に考えているのは「何のために」という目的です。「何のために」だけは完全に一致していなければいけません。もし、一致しないのであれば継承をすべきでありません。
 やり方は時代によって変化します。先代と同じやり方を踏襲するだけでは世の中の変化に対応出来ず、結果は残せません。その一方で、やり方を大きく変えると現場では大変な反発が生じます。それでも土台である  「何のために」が変わらなければ、辛抱強く話し合うことによって最後には理解が得られます。
 「何のために」を無くすと心ある人が去って行きます。そして会社も組織も滅びます。「氣」や「心」といった形のないものは簡単に変質します。自分では同じ状態を保っているつもりでも少しずつ変化しています。
 この「少しずつ」がくせ者で、大きく変われば氣がつくものでも、少しずつ変わると全く氣がつきません。最初は世の中の役に立つことを目的に会社を興したのに、いつの間にか会社の利益を守ることだけが目的になるようなものです。
 したがって、「何のために」は、日々まず自分自身が確認し、周囲にも言い続けることです。
 継承するために重要なことは他にも沢山あると思いますが、私が特に大事にしているのが「約束を守る」ことです。「約束を守る」には、「時間を守る」「期限を守る」も含まれます。
 周囲が注意しにくいためか、二代目・三代目には、こういったことを疎かにする人が意外に多いのです。どれだけ小さな約束であっても、一旦交わした以上は必ず守らなければいけません。
 それによって信頼関係が出来て「氣が通う」からです。氣が通うからこそ、いざ大きなことを進める時にも快く協力が得られます。
 これは誰に対しても同じことです。会社の幹部であろうとアルバイトであろうと関係ありません。お得意様でも業者でも関係ありません。
 誰からも氣に入られるように振る舞うことは出来ませんが、誰に対しても交わした約束を守ることは出来るはずです。継承する者は「特別なことが出来る」ことで尊敬を集めるよりも、「当たり前のことを当たり前に出来る」ことで信頼関係を得ることが重要だと考えています。私自身も常に戒めています。
 ちなみに、「氣の道場」は元々、先代の藤平光一が指導していました。私に初めて依頼を頂いたのは34歳のときでした。「氣の道場」には幅広い年代の経営者が参加され、人生経験が豊富な皆さんに「道」を説くわけですから、周囲から心配されたものでした。
 牟田學理事長ご自身がさらに若くから活躍なさっていたことからか、「年齢」ではなく「内容」で見て頂いたと聞いています。
 お陰さまで多くの素晴らしいご縁を頂いています。
 

 

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