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第2話 USJの不幸と失敗

第2話 USJの不幸と失敗

1.不幸と失敗
 現在のUSJは先ほどの定義に従えば、「遊園地」と分類される。しかもジェットコースターは増えています。しかし、遊園地を名乗る他の施設と比べると明らかにソフト力は上です。

 USJには開業当時にはコースターはなく「夢のハリウッド」というテーマがありました。ハリウッド映画(ユニバーサル映画)の世界観を楽しめる今までにはなかった施設。というのが開業時の売り文句でした。確かに初めて行ったときには今まで見たこともないようなアトラクション、ショーシアターなどとても新鮮でした。実際そう感じた人も多かったのだと思いますが、初年度は1,100万人という好調な出だしでした。
 しかし、2年目以降は入場者数が激減します。
 

●開業後の入場者の減衰対比


 一般的に遊園地では開業時は想定以上のゲストが来訪し、これを「オープン効果」と呼んでいます。そして2年目以降は入場者が減少していきます。一般的な遊園地のオープン効果を加味した入場者の減衰を青線で示し、これと対比すると、USJは2年目の減少が著しいことがわかります。これにはいくつかの原因があります。
 一つ目は「不祥事の頻発」。
 工業用水が飲料水に混入
 賞味期限切れ商品の販売
 新聞沙汰になり施設のイメージを大きく傷つけることになりました。

 二つ目は、ショーエンターテインメントがTDLのように受け入れられませんでした。
 ●モンスターメイクアップ
 ●アニマルアクターズ
 ●ワイルドウエスタンショー
 アメリカンジョークやアメリカンスタイルを売りにしたショーでしたが、日本人にはその面白さは理解にしくく、加えてアニマルアクターズとウエスタンショーは施設内でも端にあり利用率も伸びませんでした。

 三つ目が最大の原因とみていますが、
 「テーマ性を実現するのが全てアトラクション内に限られていたこと。」
 TDLの場合は、テーマを具現化するミッキーマウスを頂点としたキャラクター群がおり、ランドと呼ばれるテーマ構成が存在することでアトラクションの間をつないでいます。しかしUSJの場合、複数の映画をつなぐテーマがありません。隣ですがバックトゥザフューチャーとバックドラフトをつなぐテーマがない。
 1983年の東京ディズニーランド開業以来、日本人はテーマパークとはTDLのようなもので、知らず知らずのうちにランドごとにテーマをつないでいくTDL方式のテーマパークに慣れてきました。そして18年経ってできた新しいテーマパークにその雰囲気を求めてしまったのです。これはUSJにとっては不運でした。

 加えて、USJは映画の名場面を再現するという内容のアトラクションが多く、身長制限により利用の制約があり、コンテンツの恐怖感など幼年層には受け入れにくいものが多かった。スパイダーマンも小さな子供は利用できず、ファミリーエンターテイメントという面がTDLに比べて弱かった。
 また、アトラクションもアメリカのユニバーサルスタジオから直送のものが多く、アトラクションがTDLのものと機構が似ているという点でも不幸でした。
 ●ジュラシックパークザライド → スプラッシュマウンテン
 ●バックトゥザフューチャー → スターツアーズ
 ●ターミネーター → ミクロアドベンチャー
 ●ジョーズ → ジャングルクルーズ
 もちろんストーリーなどは違いますが、「TDLの○×と似てるね」と言われてしまう。せっかく開発したアトラクションなのだが評価は必ずしも高くはありませんでした。

 更に関東圏と関西圏では商圏の大きさが3倍違う(関西1000万に対して関東は3000万)。さらにTDLが全国から顧客を集めていますが、それは15年以上地道に行ってきた営業活動の実績によるもので、先駆者ならではの優位性がなしえるもの。通常は旅行費3万円を超える場所にはおいそれと人は動きません(これを「3万円の川」と言います)。

 もともと商圏が小さいエリアの上に、「夢と魔法の王国」というテーマがゲストに受け入れられたTDLと違い、「夢のハリウッド」がアトラクションエリア内でしか機能しなかったUDJ。“一度行けば十分”という施設イメージになりリピーターを確保しきれないことにつながっていきました。

1)この失敗から学べること
 TDLという圧倒的に成功したブランドをみたことで、潜在顧客の算出などが十分とは言えませんでした。TDLが成功しているのだからという理由で本来は主ターゲットに据えるべきファミリー層が抜けてしまったことが2年目、3年目の入場者数の減少につながっていきました。

 現時点で成功しているブランドだから(TDLで成功しているから、アメリカで成功してるから)と言って盲目的にそれを導入することは、二番煎じと顧客に思われることにつながります。おのずと二番煎じに対しては顧客の目は厳しくなります。
 同じブランド、同じ手法を利用しながらも、施設として違いを打ち出せるようなコンテンツを真剣に考えなかったことで大きな代償を払うことになりました。

 中小企業の経営では、成功しそうなブランドを利用するとしても、自分たちが置かれている商圏、顧客属性、ターゲット設定は、冷静に分析することが重要です。

 次回第3回は、「低迷期のUSJの集客施策」をお送りします。

バックナンバー

2017.06.14
第5話 現在のUSJが成功し続ける要因
2017.05.17
第4話 V字回復の始まりにUSJが打った次の一手
2017.04.05
第3話 低迷期のUSJの集客施策
2017.03.15
第2話 USJの不幸と失敗
2017.02.15
第1話 今USJに注目する理由
  1. ≫記事一覧

経営コラムニスト紹介

永野まさる
集客施設コンサルタント

理系大学工学部を卒業後、レジャー施設を専門に扱うコンサルティング会社に入社。バブル経済末期から崩壊後のレジャー施設の成功と失敗をコンサルタントの立場で経験。理系目線独特のデータ分析と論理思考に基づき、勢いや経験に左右されないコンサルティングを実践。感動や喜びが集客や売上につながっていく道筋を研究し続ける。 また、レジャー施設のコンサルタントながらレジャー施設での勤務経験がなかったため自腹で全国のレジャー施設を600カ所以上回り、成功している施設の共通点、失敗した施設の共通点について独自の視点で考察を続ける。自身が見て来た一部の施設(300施設超)での所感はWEBSITE「レジャー見聞録(http://lkb6.com)」にて公開中。 2009年それまで見てきた全国の施設とディズニーランドを対比しその運営の仕組みの完成度について書いた「ディズニーランドのここがすごいよ(こう書房刊)」を執筆。 現在は、テーマパーク需要の多い日本と中国でコンサルティング事業と講演活動を展開している。

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