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第1話 今USJに注目する理由

第1話 今USJに注目する理由

 今回から5回に渡って大阪にあるユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)についてお話させていただきます。ご周知の方も多いと思いますが、USJは今、最も注目を集めているレジャー施設の筆頭格ともいえる施設に成長しました。経済産業省が発表している「特定サービス産業動態統計調査」の「遊園地・テーマパーク部門」の2015年の数値では市場規模が8,149万人。東京ディズニーリゾート(TDR)が3,019万人(37%)、USJは1,390万人(17%)でこの二つで市場規模の過半数を占めています。
 


 TDRはオープン以来、堅実な右肩上がりの入場者数で推移しているのに対してUSJは2001年の開業年以降はジリ貧となり、2010年から劇的な右肩上がりを成し遂げています。いわゆるV字回復です。
 


 USJの劇的な回復によって市場規模も同じような伸びを示しています。V字回復の直後2011年は東日本大震災があり、全国のテーマパーク・遊園地の市場規模は大きく減少していますが、USJは集客数を伸ばしました。被災地から離れていたことも幸いしていますが、全国的にレジャーへの自粛傾向が強まった中での数値なので特筆すべきことだと思います。

 順調な開業時、大きな減益、長い低迷、そしてV字回復。失敗も成功も両方体験しているUSJ、それを考察することは異業種の会社経営者にとっても、参考になる事例が沢山あります。


1.遊園地とテーマパークの違いは何か?

 ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)と東京ディズニーランド(TDL)。この二つを結び付けるもので最もよく使われる共通語が「テーマパーク」という言葉です。「東のTDL、西のUSJ」という言葉はよくある対比です。しかし、実際に両方の施設を体験してみると“テーマパーク”としては圧倒的にTDLの方が評価は高い。「せっかくテーマパークだと思っていったのに、USJは遊園地だよ」という人もいます。

「テーマパークと遊園地の違い」、この違いを理解することがUSJの現在の大躍進を理解する大前提です。テーマパークと遊園地の違いを明確に定義するものはありませんが、その成立の過程から違いを明らかにすることができます。

 日本では遊園地という言葉が先に生まれました。高度成長期に宅地開発の呼び水として鉄道会社が中心となって全国のあちこちに生まれました。また、「子供に夢を」という名のもと地価の向上を目的に地域の不動産デベロッパーが主体になって生まれた施設も多数あります。この当時の遊園地は、外から見てはっきりと何かわかる乗り物があり、利用を希望する人は入場口で入場券を購入して、それぞれ自分の乗りたいものに対価を払って利用する。つまり土地の上に遊戯機器という“装置”を設置して、利用に対する対価で商売をするモデル。このため遊園地ビジネスは「装置産業」と呼ばれてきました。遊園地を名乗る施設の多くはこのスタイルを現在も維持しています。

 一方で、1983年にオープンした東京ディズニーランド。こちらは「夢と魔法の王国」というテーマがあり、そのテーマに合わせた遊戯機器が設置されています。さらにこのテーマを園内全体で表現するために施設内の遊戯機器以外の場所についても「安全」「清潔」「演出」を高い水準で求めたことで、「清潔さ」「景観重視」「ストーリー」など“ソフト力”という従来の遊園地にはない付加価値を付けてきました。つまり「従来の装置力」+ソフト力を兼ね備えているものがテーマパークということになります。

 ここまで考えると以下のような式が導かれます。

 装置+ソフト=遊園地ビジネス+ソフト=テーマパークビジネス。

 つまり遊園地の進化形がテーマパークと考えるのが最もわかりやすいのではないでしょうか。
現在に至るまでテーマパークを名乗りつつ、施設が成功し続けている(倒産や経営者交代などがない)施設はTDL(を含めたオリエンタルランドの施設)くらいである。
 TDLがなぜ成功し続けられたのか?といえば、「装置力+ソフト力」というテーマパークビジネスのための2本柱を同じ力(資金力)で維持し続けてきたことにあります。「夢と魔法の王国」というテーマを従業員全員が同じレベルで理解して、高いレベルで維持してきたことが挙げられます。
 バブル期以降、国産テーマパークとしてオープンした多くの施設は「装置力>ソフト力」と施設を維持するために二つのバランスを崩して、結果として従来からある遊園地と同じ運営をすることになってしまっているものが多いです。

 施設を外から見て、遊園地として運営しているのか?テーマパークとして運営いているのか?実は簡単に見分ける方法があります。ただし、この方法はあくまで自分が全国を回り続けて感じた印象からの分析法であり、何かしらの法則や実際の運営者の意見とは乖離することもあるのは予めご留意ください。

 テーマパークとして運営していない施設の特徴は以下のとおり。
 「外から見て確認できる場所にジェットコースターのような大型のスリルライドがある施設」

 これに該当する施設は遊園地としての運営になっている場合が多く、運営者はテーマパークとしての運営をしたいのかもしれないが、実際の収益構造や園内の雰囲気など自分で見たりする限りでは遊園地です。
 この定義に合わないもの、すなわちテーマパークとして運営しているもので100万人以上の集客をしている施設は以下の3か所
 ●東京ディズニーリゾート(千葉県)
 ●スパリゾートハワイアンズ(福島県)
 ●ハウステンボス(長崎県)
です。

集客数が100万人以下のものでは、
 ●日光江戸村(栃木県)
などが該当してきます。

 今回のUSJですが、現在は外から見える場所に「ハリウッドドリームライド」というコースターが見えます。この分類法を用いるとUSJは遊園地で運営されていると考えられます。
 しかし、USJはテーマパークだと主張する人多い。強いて言うならば「きわめてテーマパークに近い遊園地」と考えるのが妥当ではないでしょうか。


2.USJとTDRの違い「”おでん“と”フルコース”」

 TDLがある東京ディズニーリゾート(TDR)には東京ディズニーシー(TDS)というパークもあります。同じ運営会社であるし運営やサービス方針もほとんど同じですので、ここではTDRと一つにくくって、USJと比較してみます。「この2つの違いは何でしょうか?」。私もこの手の質問を受けることが多いのですが、USJとTDRの違い、特に顧客満足のさせ方の違いは
 「”おでん“と”フルコース”」
 で考えると、とても理解しやすいです。どちらも入場料という席料は必要です。そして店内(パーク)に入った後、TDRはディズニーの考えた「お任せフルコース」が提供されます。子供連れとかカップルなどのグループの属性によって多少の選択肢は取ることはできますが、基本的にディズニーが提供するコース料理を順番に味わって満足してもらう。お任せフルコースであるのでそれ以上の料金は基本的にとられません。だれが来ても同じフルコースの料理が提供され、全ての人が(高い)満足をしてもらえるように店側が配慮しています。

 USJは、“楽しさ”という出汁の入った大きな鍋に“コンテンツ”というたくさんの具材が入っている「おでん」のようなもので、客は自分の好きなものを選んで味わっていく。自分で積極的に注文していかないと、人気のあるものはすぐに品切れてしまうことになる。そこで“エクスプレスチケット”を使って、具材を食べる前に予約しておくこともできます。みんなが欲しいものを先に予約するのだから予約には料金が別途必要になります。具材は希少なものもあれば、どこででも手に入るものもあり予約する具材の数によっても料金は変わります。
 また、腹いっぱい食べたい人もいれば、特定の具材だけを食べて満足する人もいます。

 フルコースと比べるとより能動的に行動しないと自分の目的のものが手に入らないのが鍋料理の基本です。なので、TDRの“お任せ”的な感覚でUSJを見てしまうとUSJはよく見えなくなってしまいます。これこそがTDRに比べてUSJは遊園地に見えるという印象の正体ではないか?と私は考えています。

 一方、自分の好きなものだけを食べたい(好きなことだけをしたい)という考えでTDRに行けば、お任せフルコースの内容によっては満足できないかもしれません。  要はそれぞれの施設の個性を理解したうえで、その時の自分の気持ちに合う方を選択すればいいのです。

 次回は、「USJの不幸と失敗から学ぶ」をお送りします。

バックナンバー

2017.06.14
第5話 現在のUSJが成功し続ける要因
2017.05.17
第4話 V字回復の始まりにUSJが打った次の一手
2017.04.05
第3話 低迷期のUSJの集客施策
2017.03.15
第2話 USJの不幸と失敗
2017.02.15
第1話 今USJに注目する理由
  1. ≫記事一覧

経営コラムニスト紹介

永野まさる
集客施設コンサルタント

理系大学工学部を卒業後、レジャー施設を専門に扱うコンサルティング会社に入社。バブル経済末期から崩壊後のレジャー施設の成功と失敗をコンサルタントの立場で経験。理系目線独特のデータ分析と論理思考に基づき、勢いや経験に左右されないコンサルティングを実践。感動や喜びが集客や売上につながっていく道筋を研究し続ける。 また、レジャー施設のコンサルタントながらレジャー施設での勤務経験がなかったため自腹で全国のレジャー施設を600カ所以上回り、成功している施設の共通点、失敗した施設の共通点について独自の視点で考察を続ける。自身が見て来た一部の施設(300施設超)での所感はWEBSITE「レジャー見聞録(http://lkb6.com)」にて公開中。 2009年それまで見てきた全国の施設とディズニーランドを対比しその運営の仕組みの完成度について書いた「ディズニーランドのここがすごいよ(こう書房刊)」を執筆。 現在は、テーマパーク需要の多い日本と中国でコンサルティング事業と講演活動を展開している。

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