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製造業

第170 号 高等技術・技能をどう伝えるか~その4

柿内幸夫─社長のための現場改善

 先日、移動で新幹線に乗っていた時のことです。後ろの座席から二人の男性の話し声が聞こえてきていました。一人がもう一人に対してお小言を与えているようです。

 特に耳をそばだてるということではなかったのですが、何しろ声がとても大きかったので、ついつい聞いてしまいました。

 私は当事者ではないので冷静な立場であったと思うのですが、一方的に叱り続ける上司(らしい人)の言うことは必ずしも正しくなく、「それは違うでしょ」と、口を挟みたくなる内容も多々ありました。

 そして、同じことを何度も繰り返すので、第三者の私でも、話の内容をかなり理解してしまいました。そうこうするうちに、言われている人のことが気の毒になってきて、どういう気持ちで聞いているのかなあと心配になってきました(私はおせっかいなのです)。

 そこでトイレに立ったついでに、その叱られている人の様子をチラッと見てみたのですが、何とその人は完全に寝ていました。

 あー心配して損した!というバカバカしい経験ですが、「人の振り見て我が振り直せ」と言う言葉があります。自分がお説教くさいおじさんになっていないか…考えています。

●調布の商店街で見かけました。楽しい風景ですね。

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 《事例その4》 自分で実力を上げる方法。
 さて、前回までのコラムで、先輩の高い技術を身に付けた後輩の話を3社の事例で紹介してまいりましたが、今回は、自分で技術を身に付けた事例をご紹介いたします。

 と言っても、これは実によくある話でありまして、国家技能検定(http://www.javada.or.jp/top.html)のことです。

 N社では、第一工程の樹脂の射出成型の品質が安定せず、後工程がいくら頑張っても限度があり、コストがなかなか下がらないという問題がありました。

 原因は、設計はもちろん金型や材料もと、すべてのところを変えなければならないといった状況で、どうにもならないで困っていたのでした。それぞれを担当する部署も頑張っているのですが、なかなか効果が現れません。

 そこで、成型部門の若手社員が打った手は、「勉強」でした。自分たちは一生懸命にやっているつもりだけれど、本当に正しいことをやっているのかというと自信がない。これまでの経験だけでは太刀打ちできないのではないかと考えて、成型部門の国家検定2級を受験することを決め、みんなで勉強を始めました。

 社長自身も 資格を持っておられるので、休日に行われる勉強会の講師も引き受けたりして、みんなで応援してくれました。

 結果ですが、 受験した6人全員が合格しました。しかも、そのうちの一人はブラジル人のRさんでした。Rさんは日本語を話すことには全く不自由がありませんが、漢字は読めなかったはず…、なのに合格したのです。

 どうやって勉強したの?と聞くと、みんなに助けてもらって日本語の問題集をたくさん見て勉強して、漢字は実はまだ読めないけれど、漢字の形を見て意味を理解できるところまで頑張って、合格したとのことでした。私はそれを聞いて胸が熱くなりました。

 品質のレベルはまだ完全ではないのですが、徐々に向上していることは明らかです。きっと近いうちに、後工程が大喜びするような品質が達成できるでしょう。

 会社に入ってからは勉強なんかしたことがないという方は、結構多いものです。しかし、これからの大変化の時代において、過去の経験だけを頼りに勝負するのでは危険です。やはり、改めて準備をする必要があるでしょう。そしてその一つが勉強だということです。

 よく、今の若者は勉強しないと言われていますが、実は、このような若い方々もたくさんいるのです。会社の取り組みとしてご参考になれば嬉しいです。 

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copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

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