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第32話 線路がつながる3月

北村森の「今月のヒット商品」

 新型コロナウイルスの問題が大変な時期ではありますが、「人が動く」話を綴ること、お許しください。

 

 鉄道の話題です。この3月、私は2つのトピックに注目しています。その2つには共通点があって、それは「つながる」ということ。

 

 1つはJR常磐線です。東日本大震災により、一部区間の運行が途絶えていましたが、3月14日に、常磐線全線で運行が再開します。それに伴って、この日から「特急ひたち」の東京都内(上野、品川)—仙台の直通列車が震災以来、久しぶりの復活となります。1日3往復。沿線の復興に向けたシンボルとなるかもしれません。

 

 品川—仙台間を在来線によって運行する特急だけに、都内から仙台まで「ひたち」で向かうと、片道4時間半ほどはかかります。東北新幹線であれば1時間半ほどで行けますから、3倍ほどの時間を要するのですが、つながることに意味のある話だと感じています。

 

 私、3月14日の仙台行き「ひたち」のチケットを確保しました。さすがに復活第1号列車は満席で取れなかったのですが、午後の列車を押さえられました。当日は、その様子をしっかりと見てきたいと思っています。

 

 そしてもうひとつ。3月21日には、地方都市でこんな話もあるんです。

 

mori 32 1.jpg

 

 北陸の富山市。いま、同市には2つの路面電車が走っています。

 

 1つは、JR富山駅の南側の市街地を中心に運行する路面電車で、「富山地鉄市内電車」と呼ばれている路線です。大正初期から続く、歴史ある路面電車なんです。

 

 もう1つは、JR富山駅の北側から日本海の海岸そばまで走る「富山ライトレール」です。もともとはJRの支線だったのを、一部区間を路面電車化して2006年に開業した、新しい路線です。日本初の本格的LRT(ライトレールトランジットとしても知られています。第3セクター方式での事業でしたが、つい最近、富山地鉄に吸収合併されました。

 

 で、3月21日に、この2つの路面電車がつながります。JR富山駅を挟んで南北に分かれていた路線が、富山駅の構内を貫くような形で直結となり、路面電車の直通運転もされるということ。

 

 地元では、この南北開通によって、人の流れに大きな変化を呼べるのではないかと期待されているんです。

 

mori 32 2.jpg

 

 私、大学時代の恩師と、いまも毎週のように世の中の事象について議論を続ける機会をもたせてもらっています。恩師の専門は社会学です。言ってみれば、社会学とマーケティング論を、ひとつの事象を通してオーバーラップさせるという試みです。

 

 先日、こうした2つの鉄道の話をしましたら、恩師はこう語ってくれました。

 

 「鉄路がつながることは、インフラ整備としての意味だけでなく、気持ちがつながることです。それは飛行機の直行便が開設される、高速道路がつながるのとは違う安心感があります。このことは、飛行機がホテルの仲間で、鉄道は違う仲間であることの議論と関係がありそうです」

 

 ああ確かに、と感じましたね。

 

 線路がつながるとは、気持ちがつながること。その視点から取材をさらに進めると、大事なものが見えてきそうです。

 

 常磐線の場合、帰宅困難地域はまだ沿線付近に残っています。常磐線こそ、すべてがつながりましたけれど、再び住むということにおいては、この3月以降もまだ未解決なのです。そうした状況下で、常磐線の全線復旧が人々の気持ちにもたらすものとは何なのか。

 

 富山の場合では生活者の意識(単なる行動にとどまらず)の変化がどうなるか。地方都市では、JR駅を境目にして、両側の開発や賑わいに差があるケースが多いですね。路面電車がつながると、何がそこで起きるのか。

 

 いずれも、今後引き続き、しっかりと見ていきたいと考えています。

 

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