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製造業

第286号 作業現場ごとにゴミ箱を用意せよ

柿内幸夫─社長のための現場改善

 今回も私の著書「改善の急所101項」から1項を紹介し、実例を挙げて解説します。  

 【急所30】作業現場ごとにゴミ箱を用意せよ。(78頁)
 
 時々ですが、私は現場でご一緒の皆さんにとても驚かれることがあります。
 
 例えば、T社の現場で組み立て作業を見ていた時のことです。
 
 私がある人のところで、「ああ、この仕事なら品質不良は出ないなあ」と小声で言い、別の人のところでは「この仕事はちょっと不安だなあ、不良が出なければいいけど…」とか独り言を言ったのだそうです。
 
 そして、独り言がまさにピッタリと当っていて、特に後者の現場では、私がつぶやいた一週間前に、重大な不具合品を流出させてしまっていたとのことでした。
 
 そこにいた方は驚いて、「なぜ見ただけで分かるのですか?」と聞いてこられました。そこで、「実は私には特殊な能力が有りまして…」と言っても信じてもらえるかもしれないと思いつつ、正直に種明かしをしました。
 
 以下、種明かしの内容を簡単にまとめてみます。
 
 【種明かし】
 組み立て職場のモノの置き方で、次の4か所にしかモノがなければ、ほとんどの場合良いモノができているといえるのです。
 ① 材料置き場に要るだけの材料
 ② 完成品置き場に完成品がきちんと並んで
 ③ 現在作成中の製品一個だけ
 ④ 赤箱の中にできてしまった不良品
 
 一方、生産中の中間品が複数個あったり、後で直すつもりや捨てるつもりで仮に置いてあるものがあったりと、上記の4か所以外にもモノが置いてある場合は大抵品質が悪いのです。
 
 つまり、私はすごい能力を持っているのではなく、普通にその職場のモノの置き場所を数えていただけということです。
 
 T社で大問題が発生した現場では、上記の4か所置きができていませんでした。実際には赤箱が作業場の近くになく、少し離れたところに一個だけありました。
 
 ですから、できてしまった不良品を後でまとめて捨てるつもりでいたのでしょう。数個まとめて作業台の隅に置いていました。
 
 私はすぐに赤箱を全作業者の近くに、必ず一個設置するようにお願いしました。その時は赤い箱がなかったので、有り合せの段ボール箱に「赤箱」と赤マジックインキで書いて置いてもらいました。(後日、きちんと赤箱を設置したという連絡を頂きました)
 
 不良品を後で直そうと思って置いておいたが、良品と間違って混入させてしまい流出してしまったという事件はとても多いのです。ですから、不良と認識したら、瞬時に内容を問わず必ず赤箱のような目立つ箱に入れて隔離することが大切です。
 
 そして赤箱の中を見ると、その時の不良発生の状況が見えるので、すぐに対策が打たれるようになります。そこに置いておいて後で直すという考えは、不良の発生を顕在化させないで直してしまうことになりがちで、改善につながりません。必ず再発します。
 
 例え後で直す予定であっても、必ず赤箱に入れて隔離することにしましょう。そのためには作業者全員の手が届く距離に赤箱があることが必要です。
 
 うちではめったに不良が出ないから、赤箱は一つあれば十分といっている会社があります。すなわち、赤箱がほとんどの作業者から遠い位置にあるということです。
 
 捨てる場所が遠くにあれば、後でまとめてと思うのは当然でしょう。社長はめったに不良は出ないからと思いこんでいますが、そういう会社に限って作業台の上に不良品が置いてあるものです。そのうち流出しそうですね。
 
 不良が出なければ、赤箱は常に空っぽですから、工場を巡回する時に中を覗いては「今日もいい仕事してるね!」とほめてあげることができます。
 
 赤箱と言いましたが、これは普通のゴミ箱についても同様です。ゴミ箱が遠ければ、ゴミを拾うのも掃除をするのも少しずつ面倒になります。それが全社で積もり積もって汚い工場になり、品質も下がるのです。
 
 そこで、読者の皆様にお願いです。現場に行って赤箱が各作業者の手の届くところにあるかを確認して、もしなければすぐにお作りください。よろしくお願いします。
 
 
 

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copyright ゆきち先生 http://yukichisensei.com/

 

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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