【新春・全国経営者セミナー】事業家・若手起業家…日本最大級、経営者700名が集う3日間 

日本経営合理化協会の関連サイト
強い会社を築く ビジネス・クリニック | 日本経営合理化協会BOOK&CD・DVD

文字の大きさ

日本経営合理化協会 BOOK&CD・DVD
お電話でのご注文も承っております:03-3293-0041

第156話 エビデンス・ファースト

第156話 エビデンス・ファースト

今月は7月でありますが、7月は税務署の新年度となります。

私は常々、税務調査においては、事前準備が大切である、と申し上げています。

 

このように申し上げていても、

中小企業の経営者は、なかなか準備なさらないのが実情です。

つい先日、私たちの顧問先のD社で税務調査が入りました。

 

D社の例をとって、税務調査の対策を改めてお示ししましょう。

 

①時期

先ほど、税務署の新年度は7月~、と申し上げました。

ということは、6月は異動前。

もっといえば、4月以降は、確定申告の時期も終わり、

税務署は、比較的気の抜けた時期になります。

D社には、当初4月1日~1週間、調査に入らせてほしい、と依頼がありました。

 

しかし、税務調査にはそれなりの準備が必要ですし、

また、調査の開始時期が6月末に近づけば近づくほど、

時間切れまでの時間が短くなって、会社に有利となります。

今回、D社はゴールデンウィーク明けに時期をずらしてもらいました。

結果的に、これがD社にプラスとなりました。

 

②期間

先ほどお話した調査時期はもちろん、調査日数も短くしてもらえることがあります。

税務署も余裕をもった調査をしたいため、1日くらい長めに設定しているのです。

ですので、「恐れ入りますが、その時期は多忙のため、調査日数を短くしていただけませんか?」と日数短縮の交渉を行います。

D社の場合も1日短くしてもらうことに成功しました。

経営者からすれば、税務調査は短ければ短いほど、精神衛生上は良いのです。

 

 

③期ズレ

今期の売上を先送りする、あるいは、来期の費用を今期に入れる、

つまり、利益の先送りを行うこと、これが期ズレと呼ばれるものです。

税務調査では、間違いなくこの期ズレがチェックされます。

つまり、期末付近の取引については、細心の注意を払う必要がある、

ということです。

 

D社の場合もご多分にもれず、

来期の費用(出張旅費)を、当期の費用として計上していました。

請求書を見れば、明らかに時期がズレているのです。

 

これは、顧問税理士の処理ミスということで、

税理士からも謝罪がありましたが、

どの業種でも期ズレは一番チェックされやすい、ということだけはご理解ください。

 

④エビデンス・ファースト

私は、税務対策をするならば、

しっかりとエビデンス(証拠書類)を残しなさい、と申し上げています。

エビデンスというのは、見積書、請求書、契約書、領収書、

あるいは、取引の記録を示す書類のことを指します。

 

中小企業は、このエビデンスの整理が非常に苦手です。

なぜかといえば、面倒くさいからです。

しかし、税務対策をして、キャッシュフローを良くしようと思えば、

エビデンスの整理は避けて通れません。

経営者の思い付きだけで処理することだけは、絶対に避けなければなりません。

 

D社で指摘されたものは、次の3点です。

(1)会長の父親への給与(年間約100万円×5年分)

(2)駐車場工事の修繕費処理(450万円)

(3)陳列棚の経費処理(65万円)

 

まず(1)については、まったくエビデンスが残っていませんでした。

勤務記録、仕事をしているという証拠も一切残っていませんでした。

完全にこちらの分が悪く、対応に頭を悩ませました。

非常勤の役員であれば、出勤の有無は関係ありませんが、

D社の場合は、単なる社員として給料を支払っていたのです。

こういう場合は、後出しジャンケンですが、その父親がいかに

D社にとって有益なアドバイスをしていたか、理論武装するしかありません。

 

 

次に(2)ですが、調査官が引っかかったのは、やはりエビデンスです。

具体的には、請求書に『新設工事』と書かれていたのです。

既存の設備を改修、更新したときに、資産計上するのか、

修繕費とするのか、これもよくあるテーマです。

 

『原状回復工事』や『維持管理工事』であれば、

修繕費に該当しますが、請求書の名目が『新設工事』となっていれば、

“資産計上すべき”と判断されてしまいます。

 

最後に(3)は、エビデンスである請求書が65万円となっていたため、

調査官から資産計上するように指導されました。

中小企業の場合は、1台あたり30万円未満の什器備品は、

経費計上できるという特例がありますので、

そこを意識して、請求書を複数に分けるといった対策が必要となるのです。

 

最終的に、私たちの指導により、

上記の(1)~(3)は全て税務署の主張をひっくり返すことができましたが、

D社は、改めてエビデンス・ファーストを痛感したのです。

 

私たち中小企業は、税務署からは、

「一族が甘い蜜を吸っている」という色眼鏡で見られています。

ですから、常々、エビデンスには細心の注意を払うことが何より重要なのです。

 

この意味では、中小企業の税務対策の神髄は、

『エビデンス・ファースト』なのです。

バックナンバー

2019.08.28
第157話 営業マンによる売上回収は、その場で決済できるようにしなさい!
2019.07.17
第156話 エビデンス・ファースト
2019.06.26
第155話 労働力としての女性のどこが悪い、女性の活躍できる場を提供せよ
2019.05.15
第154話 やがて、令和時代の節税保険商品が生まれます
2019.04.24
第153話 令和時代は 労務課題の解決を!
  1. ≫記事一覧

経営コラムニスト紹介

井上和弘氏
アイ・シー・オーコンサルティング 会長

「儲かる会社づくり」の指導歴40年以上。オーナー企業の経営に熟知した実力コンサルタント。これまで300余社を直接指導、オーナー社長のクセを知りつくし、一部上場はじめ株式公開させた企業も十数社にのぼる。経営指導に東奔西走する傍ら、弊会主催「後継社長塾」の塾長を30年務め、今まで500人以上の後継者育成に携わる。会長の井上氏は1942年大阪府生まれ。早稲田大学卒業、イタリアフローレンス大学留学。1984年大阪北浜に株式会社アイ・シー・オーコンサルティングを設立。株式会社サン・ライフ(JASDAQ上場)取締役、キング醸造株式会社取締役、日本経営合理化協会理事等を兼務。アメリカ合衆国テキサス州ダラス市名誉市民。

アイ・シー・オーコンサルティング会長井上和弘氏の経営コラムに関するお問い合わせ