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戦略・戦術

第154話 やがて、令和時代の節税保険商品が生まれます

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2019年2月13日、国税庁が国内生命保険会社の担当を集め、全額損金扱いの商品を一時自粛するよう、申し伝えました。それに伴い、外資系も含め、全額損金の保険商品が瞬く間に、販売一時休止、という状況に陥りました。

保険業界担当者は、年度末に節税商品の売り物がなくなってしまったのです

業界内ではその日付から、「バレンタインショックだ!」と叫ばれています。

 

国税庁にすれば、

「おまえら派手に売り過ぎなんだよ!」と各保険会社に釘を刺したのです。

しかも、銀行窓口や証券会社でも、保険商品を代理販売できるようになったのが、約2年前です。融資金利や運用利回りで稼げなくなった銀行・証券会社にとって、全損保険商品は、手数料を稼ぐ格好の商品となったのです。この2年で、銀行や証券会社がバンバン売りまくったのです。

まさに、乱獲による「全損保険商品」の絶滅、なのです。

何でもそうですが、節税の匂いが強く出回ると、国税庁の網がかかるのです。

 

そして2019年4月11日、国税庁から今後の取り扱いについて、方向性が示されました。6月以降の取り扱いとして、(明確な日付は示されていません。)

・解約時の返戻率

  50%以下・・・全額損金扱い

  50%超~70%以下・・・6割損金計上

  70%超~85%以下・・・4割損金計上

  85%超・・・上記以下の損金計上(契約内容により異なる

 

このようになっており、各保険会社にとっては、経営者が望むうまみを提案できないのは明らかな数字となっています。

ただ、これでも国税庁が2月に自粛を言い渡したときの厳しい内容からすれば、ましなほうだ、という声もあります。確かにそうなのです。というのも、

保険販売の手数料で稼いでいるのは、通常の保険代理店や銀行・証券会社以外に、税理士事務所も多く含まれます。しかも、税理士事務所には、国税OBが立ち上げた事務所も、相当数存在しています。

 

「お前らええカッコしやがって!俺たち諸先輩のメシの種をつぶす気か!」

という声が出ても困るので、そこへの配慮の分、少し対応が和らいだのではないか、と思われるのです。

ここに、国税庁が損金計上保険を全面的に完全抹殺できない、真の理由があるのです。どこまでも、国税OBへの忖度から逃れられないのです。

と、今回4月11日の国税庁のコメントで明確になったのが、契約済みの保険にさかのぼって訴求することはない、ということです。

つまり、全額損金で契約済みのものは、そのまま、今後も全額損金計上を継続できる、ということです。

 

今回のお咎めは、これまで全額損金計上扱いであった、「全額損金保険」と呼ばれる保険商品に対する是正措置です。かつて10年前、「逓増保険」が対象となったのと同様、保険商品の分類に対する税制措置です。いわば、10年に1回の、国税庁による大掃除なのです。

 

「全額損金保険」以外に、この数年、節税に使われている保険商品に、「逓増定期保険(低解約型)」というものがありました。これは1/2損金計上です。なので、1/2は資産に計上されます。

ところがこの「逓増定期保険(低解約型)」、商品によっては、4年目の返戻率が13%程度で、5年目以降は95%程度に跳ね上がるものがあります。

 

法人契約後、4年目の返戻率13%のときに、社長が個人で買い取れば、会社としては、資産計上していた分の売却損を計上できます。で、社長はその後、1年分の保険金を払った後なら解約できます。そのときには返戻率が95%程度です。

社長個人としては1年分の保険料を払っただけで、5年分の保険料の95%を、解約返戻金で受け取ることになるのです。個人での解約返戻金受取時の税率は、一時所得扱いです。

 

このような商品も、今回の是正措置の対象になってしまいました。今回の騒動で、節税保険商品は全滅、のような雰囲気です。

契約時に一気に全額損金計上できる、という商品は一時的になくなるものの、時の経過のなかで、やがてまた令和時代の節税を担う、全額損金の商品はきっと生まれてくると思います。そのニーズが明確にある限り、新たな商品を作り出すのが、保険会社の使命なのです。

 

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