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第141話 銀行交渉に強い決算書となるよう、確定前のチェックをお願いします

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3月末決算の会社は、そろそろ仮決算書が会計事務所から提出されてきます。
そのときに、皆さんはどこをチェックしているでしょうか?
会計事務所の方が説明するのは、
「今年の法人税はこの金額ですね。」と、税金のことだけです。
しかし、決算書は税務署だけが見るものではないのです。
特に銀行借入がある会社は、銀行が見る視点で、決算書をチェックしてほしいのです。
 
まずは損益計算書です。
銀行が最も注目する勘定科目のひとつが、「営業利益」です。本業でどれくらい利益をあげているかを、重視するからです。ならば、営業利益が最大化される決算書になっているかどうかが、重要なのです。
次の項目をチェックしてください。

(1)販売管理費に役員退職金があれば、特別損失に移動してもらう
(2)販売管理費に下記のような、
  その年度だけの費用があれば特別損失に移動してもらう
   ①災害による損失・修復費用
   ②建物塗装の修繕など、めったに行わない修繕にかかる費用
   ③記念行事などの費用
   ④訴訟などにかかった費用
   ⑤ISOなどの認証取得・審査にかかった費用
(3)雑収入に賃貸収入があれば、
   「その他売上高」として売上高に移動してもらう

例えば上記の(1)です。
先日も、役員退職金が「退職金」という勘定科目で仮決算書の販売管理費に入っていました。会計事務所の方に指摘したところ、
「特別損失に移動しても税金は変わりませんよ。」という返事が返ってきました。
そうなのです。会計事務所の方は、銀行が決算書を見る視点など、全くといっていいほどご存じないのです。
その会計事務所の方には、銀行は営業利益を重視することを伝え、「退職金」を「役員退職金」として、特別損失に計上してもらうよう、お願いしたのです。
 
次に貸借対照表の確認です。
貸借対照表で銀行が重視するのは、「自己資本比率」です。
銀行は、お金を貸した先が倒産するとそのお金を回収できなくなります。それでは困ります。だから、財務の安全性を示す「自己資本比率」を重視します。
銀行の評価では、「少人数私募債」や「経営者からの借入金」は、自己資本とみなします。これらは、弁済順位の低い「劣後債」とみなすからです。
銀行は、この「劣後債」を「資本性借入金」とみなし、自己資本に算定するのです。
次の項目をチェックしてください。

(1)長期借入金に、経営者からの借入金や「少人数私募債」が含まれて
   いるのなら、「経営者借入金」「経営者引受少人数私募債」とする
(2)リース資産とリース負債の記載があれば、
   中小企業は記載が不要なので、貸借対照表から外してもらう。


例えば上記の(1)です。決算書を拝見させていただきます。
「長期借入金が多いですねぇ。」と経営者に言うと、
「その中には私が貸したお金も入っています。」とか
「それは少人数私募債が含まれているからです。」といった返事が返ってくることがあります。加えて、
「うちの銀行の担当者はわかっていますよ。」などと言います。
銀行担当者が知っていようと、決算書に「長期借入金」とあれば、銀行の評価では通常の有利子負債として扱われます。なぜなら、その評価は審査部がするからです。銀行の担当者が知っていても、審査部の方には、わからないのです。決算書のままに、判断されるのです。となると、内容としては「資本性借入金」であり、自己資本比率を上げる要因なのに、反映されない結果になるのです。
つまり、決算書には、他の人がみてもわかるように記載しておくことが、重要なのです。
経営者が貸したお金なら「経営者借入金」、経営者が引き受けた少人数私募債なら「経営者引受少人数私募債」と、明確な記載に改めてください。
 
会計事務所の方は、銀行の視点をご存じないのです。ならば、こちらがその視点を知り、決算書をその視点に見合うよう、お化粧をし直さないといけないのです。
会計事務所まかせの決算書に、してはならないのです。
今風に言えば、「書き換え」を行ってほしいのです。「書き換え」は、見せかたを変えるだけです。悪意のある「改ざん」ではないのです。

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