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マネジメント

第61回 『任せる覚悟』

社長の右腕をつくる 人と組織を動かす

“このピンチは、お前に任せた”
ピンチに立ったマウンドの上のピッチャーに近寄ると、監督はひと言こう言い放ち、あとはベンチに下がって黙って見守る。
そして、そのコトバに発奮したピッチャーはピンチをしのぐ……
こうなればしめたもので、監督とその投手の間では信頼関係が成り立ってくる。

だが、いつもそれで成功するわけではない。
危機を回避するという観点からいうと、リリーフを準備しておくべきではないかとの反論も聞こえてきそうである。

リリーフ投手を準備するか、しないかは別問題として、ここで私は、
上役として部下に“このピンチは、お前に任せた”というからには、覚悟を持つことの大切さを指摘しておきたい。


ある会社で、専務が同じ課の2人の係長を別々に呼び出し、同じ質問をした。
“君の部下のA君いついて、どう思うかね?”

それに対してX係長はこう答えた。
“そうですね。賭け事やお酒が好きなようで、時々遅刻もします。正直、欠点のある人物と思います。
しかし、こと仕事にかけては優秀です。悪い点は、私が 少しずつ注意します。これからも彼は私が育てたいと思います”

もうひとりのY係長はどう答えたか。
“A君は、確かに仕事はできます。しかし私生活が乱れているようで、時々遅刻するなど、課内の雰囲気にも悪影響を与えて
います。実のところ手を焼いてい ます。前からお願いしようと思っていたのですが、A君を他の部署で引き取ってください”

日を経ずして人事異動が発表された。課長に抜擢されたのはX係長で、Y係長は同じ係長に留まった。


後日、その専務と知り合いだった私は、ことのてん末を聞くとともに、その人事の理由を質問したところ、
次のような返事が返ってきた。

“X係長は、あくまで仕事を中心にA君を評価していた。素行の悪さは自分が責任を持って直すと、部下をかばった。
ところが、Y係長はA君をダメだと突き放した。仕事ができる、と評価しているにもかかわらずだ。これでは管理職として失格。
だいいち、部下に愛情を持っていない”

これには後日談があって、いつのまにかこの人事の理由がA君の耳に入り、
それ以来、彼は私生活を改めて、強力な戦力になっ という。


“このピンチは、お前に任せた”

こう言うからには、部下に対して約束を守らなければならない。
そして、結果が失敗であれば、その責任は自分でカバーするぐらいの覚悟を持つことも必要で ある。

「人を育てるための最も効果的な方法は任せることである」
というP.F.ドラッカーの言葉があるように、任せなければ人は伸 びない。

ときには失敗をしたり、間違いを犯したりする「チャンス」を与えないと部下は伸びない。
これをフォローするのが上役としての役割だ。



 新 将命     

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