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第86回創業するなら、断然、「五反田」!?~世界を目指すスタートアップ企業を育む苗代~

次の売れ筋をつかむ術

トレンド・新技術

2018.02.16

西川りゅうじん(マーケティングコンサルタント)

 

 
●今、ベンチャー・新規事業の立ち上げに本社を置くべき山手線の駅は?
 
「孟母三遷」のことわざ通り、孟子の母ならずとも、子どもの成長のために、できる限り、周囲の環境を考えて家の場所を選ぶ。
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同様に、企業にとっても、成長・発展のために、本社・本拠地をどこに構えるかは非常に重要だ。
 
お国柄や地域性を見ても明らかなように、人も企業も、その土地の風土・文化を知らず知らずのうちに吸収し、その土地に育まれる。
 
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首都圏発祥の企業はもとより、国内外の企業にとって、東京のどこに、本社・本拠地を構えるかは、その後の企業の発展のスピードや企業風土に大きな影響を及ぼす。
 
「朱に交われば赤くなる」、あるいは、逆に「麻の中の蓬」というように、どんな人と日々接するかが、その人の人生の相当な部分を決する。
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つまりは、どのような土地を選択するかが、どのような人や会社と同じようになるかを決定づける大きな要因となる。
 
同じ20代の若者でも、銀座を歩いている時、丸の内を歩いている時、六本木ヒルズを歩いている時、渋谷のセンター街を歩いている時で、おのおの、その表情や雰囲気、歩き方や速度まで異なっているかも知れない。
 
毎日、その街にふさわしい服装や髪形を考えて通うとなれば、同じ人でも大きく変わって来るに違いない。
 
30年以上にわたり、マーケティングのコンサルタントを務めさせていただいていると、老若男女のベンチャー企業の経営者や、大企業や老舗企業の中で新規事業の立ち上げを任せられている担当者から、「山手線の駅の中で、今、東京のどこに本社・本拠地を置いたらいいでしょうか?」と尋ねられることがよくある。
 
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平成時代末の現在、西川りゅうじんが間髪を入れず勧めるのは「五反田」だ。
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●大正時代から続く東京有数の歓楽街
 
「えっ、五反田ですか?りゅうじんさん、エッチですね!」などと、いぶかる人も少なくない。
 
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たしかに、五反田と言えば、昭和風のスナックや風俗店やラブホテルを思い浮かべる人も多いだろう。
 
私も20代の駆け出しの頃、オヤジたちに五反田のスナックに何度も連れて行かれ、カラオケを歌いまくった。
 
五反田の花街としての歴史は長く、大正10年(1921年)に二業地(料亭、置屋)として認定され、昭和一ケタの頃には既に東京で最も栄えた歓楽街だった。
 
五反田の花街としての歴史については、当方も大学在学中に部長を務めた、ジャーナリストの杉山隆男氏や作家の田中康夫氏を輩出した学内誌「一橋マーキュリー」の先輩に当たる、カルチャースタディーズ研究所の三浦展代表が、素晴らしい筆致でわかりやすく解説されているので、ご参照いただきたい。
 
 
 
●西川りゅうじんはソニーの企業城下町「五反田」に育ててもらった!
 
しかし、私にとっての五反田は、夜の繁華街ではなく、24時間眠らないソニーの企業城下町だった。
 
20代前半から40代まで、ソニーの様々なプロジェクトに参画させていただき、ソニーグループの横断的な幹部候補生の研修機関であるソニーユニバーシティの講師も務めさせていただいた。
 
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その間、朝も昼も夜も、足繫くソニーの本社や子会社がある五反田に通った。
 
学生時代に起業して以来、私なりの嗅覚と土地勘で、当時は発展途上街だった吉祥寺・恵比寿・代官山・中目黒にオフィスを構え、街に育まれ、街と共に成長させていただいた。
 
ありがたいことに、今も30年以上の御縁が続き、吉祥寺では街のグランドデザイン委員を務めさせていただき、アニメや食のイベントをプロデュースさせていただいて来た。
 
また、恵比寿・代官山・中目黒では、複合ビルや商業施設、店舗の企画プロデュースに携わったり、株式の店頭公開前から顧問を務めさせていただき、今や売上1兆円になろうとしている東証一部企業の本社もある。
 
しかし、西川りゅうじんは、世界企業になってもベンチャー精神を失わないソニーの企業城下町「五反田」に育てていただいたと言っても過言ではない。
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だから、戦後の五反田ベンチャーの精神を受け継ぐ者の一人として、五反田には特別の思い入れがある。
 
うれしいことに、ソニーを育んだ五反田が、温故知新で、近年、日本のベンチャービジネスの“インキュベーション・センター”として復活を遂げつつある。
 
日経産業新聞の以下の2つの記事を御覧いただきたい。周到な取材に基づくレポートで、この中に新たな五反田の息吹きが集約されているので、長文の引用をご容赦いただきたい。
 
 
 
●「五反田で何が悪い」~渋谷に背を向ける起業家たち~ 
[日経産業新聞 2018年2月6日付]
(企業報道部 加藤貴行氏、若杉朋子氏、吉田楓氏)
 
東京・五反田が急成長するスタートアップ企業の集積地になりつつある。
 
起業の街・渋谷より3割程度安いオフィス賃料と交通の便が魅力で、渋谷から移る企業も相次ぐ。事業拡大で街を去る企業が出ても、新たな起業家が次々に集まってくる。
 
かつてソニーを生んだ雑多な街は、若い企業の交流と新陳代謝で新たな価値観を育んでいる。
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■わい雑な街、むしろ魅力
 
「だだっ広い倉庫を安く借り、好きなように改造してクリエイティブな空間を作る。米西海岸的なオフィスづくりができるのは都内でもここしかない」
 
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飲食店予約台帳システムのトレタの中村仁社長(48)は3年前の新本社選びの際、40年以上にわたって五反田の顔ともいえる物件「TOCビル」に一目ぼれした。オフィス面積は838平方メートルと直前の渋谷時代の4倍に増やし勝負に出た。
 
トレタは中小零細が多い飲食店の業務効率化ニーズを取り込み成長中。監査法人トーマツが毎年発表する技術系スタートアップの売上高成長率ランキング「日本テクノロジーFast50」(2017年版)で2位だった。過去3年で13.4倍も成長し、従業員も約100人に達した。
 
同ランキングで成長率13.5倍と僅差でトレタを上回り、1位となったのも五反田組。個人のスキルをネットで売買するココナラだ。
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同社は渋谷で創業し五反田、渋谷と引っ越しを繰り返し、17年1月に五反田に戻った。南章行社長(42)は「五反田は渋谷に希少なワンフロア100坪のビルが残り、従業員がふらりといく安い飲み屋も多い」と話す。
 
五反田といえば、風俗店やラブホテルが建ち並ぶわい雑なイメージがつきまとう。渋谷や六本木と比べ、お世辞にもおしゃれな街とは言えない。
 
そんな五反田だからこそ、「渋谷=起業家の集まる街」という既成概念に背を向ける新興勢力にはむしろ魅力的だ。
 
「スタートアップは新しい概念を打ち立てていく存在。出来上がった世界観に乗っかっていくのはピンとこない」。受発注見積もりサイトのユニラボの栗山規夫社長(37)は優等生的な渋谷や六本木に“挑戦状”をたたきつける。
 
17年6月、下北沢からやってきたネット広告のZEALS(ジールズ)の清水正大社長(26)も「渋谷、六本木は文化ができあがっている」と感じ、五反田を選んだ。
 
こうした反骨精神の強い起業家たちが集まるのが五反田の一面だ。五反田本社で唯一といっていい全国区の老舗企業、学研ホールディングスは「我々にとっても五反田のイメージアップになる」と歓迎する。
 
 
 
■ブランドイメージより実利
 
五反田はトレタ中村社長(パナソニック)、ココナラ南社長(住友銀行)など大企業出身の30~40代の起業家が集まるのも特徴だ。街のブランドよりも、交通の便がよく社員が通勤しやすい「実利」を優先しているからかも知れない。
 
東海道新幹線の品川駅まで2駅で、羽田空港にも出やすい。五反田駅に乗り入れる東急池上線と都営浅草線の沿線は、居住地としてお得な物件も多い。「徒歩圏の不動前駅や大崎駅を使えば、神奈川・埼玉方面から通勤も可能」(南社長)で社員の満足度も高い。
 
五反田には技術系スタートアップも集まる。典型がクラウド型カメラを手がけるセーフィー。創業メンバーはソニーグループ出身者がそろう。
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佐渡島隆平社長(38)は「物件を探す時間がなく土地勘があった五反田を選んだ」と14年の創業時を振り返る。その後も愛着のある五反田で移転と増床を繰り返す。かつて近くにあった「ソニー村」の名残がスタートアップに受け継がれる。
 
ただ、近年は卒業組も増えてきた。五反田で育ち、新規株式公開(IPO)したオイシックスドット大地、ガイアックスなどだ。勢いのある未上場組の卒業も続く。1月にファッション関連のヴァシリーがスタートトゥデイの傘下入りに合わせて表参道に移転。遺伝子検査のジーンクエストが2月中旬、スマートロックのフォトシンスが3月に街を出て行く。
 
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フォトシンスの河瀬航大社長(29)は「いつか戻りたい」と五反田への思い入れは人一倍。14年の起業前も含め、計7年にわたり「職住が近く、満員電車に乗らなくていい」五反田で働き続けた。
 
そんな河瀬社長が街を去る理由は「五反田100坪の壁」。社員数が70人に達し88坪(約290平方メートル)の現本社は手狭になった。周辺は大型ビルが少なく、新規供給も限定的。ワンフロア100坪以上は先行組が押さえ、新興勢力が成長後も残るのが難しくなった。
 
一方、仮想現実(VR)、チャットボットなど大きなオフィスを要しない新業種は続々と集まってくる。「雑多な中から新しい価値が生まれる街」(トレタの中村社長)への歩みは途切れない。
 
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4年前に本社を五反田に構え、起業家の間では街の「顔」になりつつある会計ソフト、フリーの佐々木大輔社長(37)は語る。「ソニーを中心に五反田はかつて製造業の聖地だった。それが新産業の街に変わり、スタートアップの地になるのは日本の産業構造が変わっていく象徴かもしれない」
 
 
 
■ご近所同士、飲み仲間
 
1月時点で五反田に本社または東京支社を置くスタートアップ35社を対象にアンケートを実施した。街の魅力(複数回答)では「オフィス賃料が安い」が94%と圧倒的。スタートアップの集積で「経営者・従業員の交流がある」ことも魅力の1つだった。
 
オフィス賃料は回答企業では1坪あたり8000~1万6000円が相場で、駅から同じ条件の渋谷や六本木と比べると3~4割安くなる。これが最大の訴求力だ。
 
次の魅力は「通勤に便利」「飲食店が多い」。また「スタートアップ企業が集まっている」も46%あった。ネットワーク効果で近所づきあいも活発だ。五反田同士で「経営者・従業員とも交流がある」という企業は60%にのぼる。
 
フォトシンスの河瀬社長は「つらいことがありオフィスから駅に向かう途中でセーフィーの佐渡島社長と会い、その場で飲みに誘ってもらった」という。こんな距離感も五反田ならではだ。昨秋には五反田を中心に品川区の起業家24人が区内の中学2年生に「生き抜くために必要な力を知る授業」で講演した。参加した料理動画デリーの堀江裕介社長(25)は「経営者の横のつながりは強い」と語る。
 
その典型が仮想現実(VR)企業。クラスターの加藤直人社長(29)は16年に渋谷から移転。「落ち着いてコンパクト」な街に引かれ、ツイッターで同業に五反田に集まるよう呼びかけた。秋葉原から昨秋移ったシナモンの武樋恒社長(30)も「この街にVRやゲームの企業が次第に集まり、話をしやすい」という。
 
35社のうち直前の本社が渋谷なのは9社。35社にいつか渋谷に拠点を置きたいか尋ねると「いいえ」が83%に達した。五反田には渋谷や六本木の人混みを避けたい企業が多く、最近の渋谷の賃料上昇も影響している。
 
一方、五反田のマイナス面を尋ねると「街のイメージが悪い」が57%と断トツ。駅東口の風俗街のイメージが影響したとみられる。それでも次の引っ越し先に五反田を候補に含む企業が3分の2と、愛着心は強い。
 
 
 
■五反田スタートアップ企業調査の回答企業一覧(順不同)
クラスター、Synamon(シナモン)、トレタ、VASILY(ヴァシリー)、モフィリア、チケットストリート、セーフィー、ZEALS(ジールズ)、ユニラボ、みんなのマーケット、ジーンクエスト、ココナラ、hachidori(ハチドリ)、ギフティ、freee(フリー)、dely(デリー)、スマートエデュケーション、プレイド、串カツ田中、フォトシンス、ジモティー、マツリカ、Surpass(サーパス)、モバイルファクトリー、みんれび、メディアインベストメント、ホワイトプラス、エコーズ、ナイル、アグリゲート、DYM、ホロラボ、ZenmuTech(ゼンムテック)、※クックビズ、※フェンリル。
※本社は大阪で東京拠点を五反田に置く企業
 
 
 
●五反田VB新聖地に
[日経産業新聞 2017年11月22日付記事の後半を引用]
(企業報道部 世瀬周一郎氏、鈴木健二朗氏)
 
 
 
■東京・五反田 バイト駆使、勢い
「一緒に五反田を盛り上げていきましょう」。16日夜、東京・五反田のフランス料理店に起業家13人が集まった。「五反田経営者会」の会合だ。
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野菜の通販のオイシックスの高島宏平社長やクラウド会計ソフトのfreee(フリー)(東京・品川)の佐々木大輔社長など著名VBの経営者に交じり、21歳の学生起業家も参加した。和菓子を海外に販売するサムライキャンディー(同・同)の前田有香社長だ。
 
前田社長は五反田を起業の地に選んだ。新幹線が止まるJR品川駅まで電車で約5分、和菓子店が集まる京都まで約2時間半で行けるのが決め手となった。
 
五反田にオフィスを構えるVBが増え始めたのはここ数年。背景にあるのは不動産市況の変化。再開発で賃料が上昇した渋谷や六本木と比べて、五反田は2~3割安い。数十~200人の従業員を抱えるVBに適した規模のオフィスも豊富だ。
 
「渋谷駅から徒歩15分と五反田駅から徒歩5分は賃料がほぼ同じ」と指摘するのはビジネス情報メディアのU―NOTE(同・同)の小出悠人社長。大学も多く、学生アルバイトも集めやすい。
 
五反田の周辺には住宅地も多い。飲食店アプリのRetty(レッティ、同・同)に4月に入社した外村璃絵さんは会社から徒歩10分の高輪台に住む。「会社の近くにおいしいお店がたくさんあり、社員と一緒に行けるのが楽しい」と笑う。
 
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かつては「六本木ヒルズ」などの高層ビルにオフィスを構えることが起業家のステータスとされていた。今は「事業で成果を上げるためのコストパフォーマンスを大切にしている」(フリーの佐々木社長)。スマートフォンの鍵管理システムを開発するフォトシンス(同・同)の河瀬航大社長は「五反田は伸びているVBが集まっており、勢いを感じる」という。
 
10月に開かれたイベント「五反田ベンチャー人事部」にはフリーとレッティの人事担当者が登壇した。両社の採用手法を聞こうとVBの人事担当者ら約50人が足を運んだ。主催した人材サービスのビズリーチ(東京・渋谷)の担当者は「五反田は採用意欲の高いVBが多い」と説明する。
 
起業しやすい街「五反田バレー」をつくる構想も動き出した。VBの技術者が地域の小中学生にIT(情報技術)を教えたり、各社のノウハウを持ち寄って飲食店の開業を支援したりする案が出ている。五反田で印刷会社を経営する鶴井正博氏は「VBが増えれば地域の中小企業も元気になる」と期待する。
 
 
 
●再開発で大きく変貌を遂げる「ポトフ(ごった煮)」の街
 
「五反田ってどんな街?」と問われれば、「ポトフ(ごった煮)の街」と答える。
 
新旧のオフィス街・繁華街・歓楽街・住宅街が入り混じって独特の街並みを形成しているからだ。
 
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住所表記上で五反田と表記する地名はなく、東京都品川区の北部にある五反田駅を中心とした地域名だ。
 
JR五反田駅は、1911年(明治44年)、現在の山手線の駅として開業。その後、東京急行電鉄(東急電鉄)池上線、東京都交通局(都営地下鉄)浅草線も乗り入れている。
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東京城南区域の中核地として栄えて来たが、東側は高級住宅街としての歴史もあり、旧正田邸(美智子皇后陛下のご実家)があったことでも有名だ。
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2008年春、駅に直結した複合商業施設、JR東日本が「アトレヴィ五反田」、東急電鉄が「レミィ五反田」を相次いで開業。
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都市再開発(東五反田二丁目計画・御殿山プロジェクト)に伴い、超高層マンションやオフィスなどが急ピッチで計画・整備されており、近年、駅周辺・街全体が大きく変貌を遂げている。
 
 
 
●東急電鉄が創造する既成概念にとらわれない高架下商業施設
 
五反田駅周辺にベンチャー企業が続々と集積するのを追い風に、東急電鉄は、2018年3月13日、池上線五反田駅~大崎広小路駅間の約230mにわたる高架下に新たに5店舗をオープンし、既存店舗と合わせ13店舗からなる商業施設「池上線五反田高架下」を開業する。
 
「URBAN EXPERIENCE」をコンセプトに、多様な個性とこだわりを持つ人々を満足させるユニークなテナントで構成された、都会の中でも日常とは異なる体験ができるエリアを目指す。
 
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サイクル通勤者が増加する山手通りに面する立地らしく、自転車を切り口にしたライフスタイルを提案する新業態「STYLE-B」が出店。シャワーブース付の室内駐輪場やコインランドリーに加え、ドーナッツ専門店「DOUGHNUT PLANT」「旬八青果店」と連携したカフェスペースも設ける。
 
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また、東急高架下では初となる醸造所兼クラフトビールバー「RIO BREWING & CO. 東京醸造所」をはじめこだわりが光る店舗が連なり、昭和の雰囲気ただよう横丁エリア「五反田桜小路」と融合することで、新たなコミュニティ空間が誕生する。
 
施設デザインは、広島県尾道市の「ONOMICHI U2」などを手掛ける谷尻誠氏と吉田愛氏が率いる「SUPPOSE DESIGN OFFICE」が、既存の五反田桜小路エリアの意匠リニューアルも含めて担当。
 
高架橋をインテリアとして生かしたり、天井をガラス張りにして真上を走る電車を店内から眺められる店舗設計など、これまでの高架下のイメージに捉われない、既成概念にとらわれない、スタイリッシュかつ居心地の良さを演出し、思わず集いたくなるようなデザインとなる。
 
 
 
●JRが東京屈指の発展途上街の玄関口を造り変える
 
一方、JR東日本・日本ホテル・アトレの3社は、東京オリンピック・パラリンピック直前の2020年春の完成を目指し、五反田駅の東口に地上10階建ての「五反田駅東口ビル(仮称)」を新たに建設中だ。
 
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ビルの敷地面積は約947平米、延床面積は約7236平米。1~3階は商業施設「アトレ五反田(仮称)」を設け、西側で営業中の商業施設「アトレヴィ五反田」との一体感ある商業空間を目指す。
 
4~10階は宿泊特化型の「ホテルメッツ五反田(仮称)」が入居し、シングル65室・ツイン55室・ダブル46室の計166室を設ける。
 
ことほどさように、五反田は、東京屈指のまさに発展途上街なのだ。
 
 
 
●創造的破壊を目指すベンチャー企業が集まる「イノベーション・ハブ」
 
五反田は、創造的破壊を目指すベンチャー企業がどんどん集まる「イノベーション・ハブ」となりつつある。
 
イノベーション論の世界的権威であるハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授は「イノベーションの敵はファイナンスである」と喝破している。
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金融市場での評価を気にし過ぎて投資回収を急げば、経営の軸足がコスト削減や製品の改良に向きやすく、イノベーションからは遠ざかる。
 
かつて、五反田から世界企業となったソニーに在籍し、「エサキダイオード」を発見、1973年にノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈氏は、日経新聞のインタビューに以下のように述べている。
 
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「企業の役割で大切なのは、最新の科学知識を富に変換することだ。成功すれば、起業家は億万長者の候補、科学者はノーベル賞の候補になる。米国のシリコンバレーの場合、新しい科学知識がすべて生まれているわけではないが、ベンチャー企業が知識を富に変換しようと懸命に努力している」
 
「そんなイノベーションが日本企業にできますか?」と問われ、博士はこう答えた。
 
「大きな会社には難しいだろう。判断のスピードが非常に大切だかちだ。だからこそ、米国には多くのベンチャー企業、リスクマネーを出すベンチャーキャピタル(VC)がある。できあがった企業の体質を変えるより、新しいベンチャーを創ることが大切ではないか」
 
 
 
●「自由闊達にして愉快なる理想工場」を共に始めよう創ろう、五反田で!
 
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今こそ、1946年(昭和21年)、盛田昭夫氏と共にソニー(東京通信工業)を創業した井深大氏が、五反田で起草した同社の会社設立の目的と経営方針を噛み締めたい。
 
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◆会社設立の目的
一、 真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設
一、 日本再建、文化向上に対する技術面、生産面よりの活発なる活動
一、 戦時中、各方面に非常に進歩したる技術の国民生活内への即事応用
一、 諸大学、研究所等の研究成果のうち、最も国民生活に応用価値を有する優秀なるものの迅速なる製品、商品化
一、 無線通信機類の日常生活への浸透化、並びに家庭電化の促進
一、 戦災通信網の復旧作業に対する積極的参加、並びに必要なる技術の提供
一、 新時代にふさわしき優秀ラヂオセットの製作・普及、並びにラヂオサービスの徹底化
一、 国民科学知識の実際的啓蒙活動
 
◆経営方針
一、 不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず
一、 経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する
一、 極力製品の選択に努め、技術上の困難はむしろこれを歓迎、量の多少に関せず最も社会的に利用  度の高い高級技術製品を対象とす。また、単に電気、機械等の形式的分類は避け、その両者を統合せるがごとき、他社の追随を絶対許さざる境地に独自なる製品化を行う
一、 技術界・業界に多くの知己(ちき)関係と、絶大なる信用を有するわが社の特長を最高度に活用。以って大資本に充分匹敵するに足る生産活動、販路の開拓、資材の獲得等を相互扶助的に行う
一、 従来の下請工場を独立自主的経営の方向へ指導・育成し、相互扶助の陣営の拡大強化を図る
一、 従業員は厳選されたる、かなり小員数をもって構成し、形式的職階制を避け、一切の秩序を実力 本位、人格主義の上に置き個人の技能を最大限に発揮せしむ
一、 会社の余剰利益は、適切なる方法をもって全従業員に配分、また生活安定の道も実質的面より充分考慮・援助し、会社の仕事すなわち自己の仕事の観念を徹底せしむ。
 
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西川りゅうじんも再び五反田に通い出した。「自由闊達にして愉快なる理想工場」を、さあ共に始めよう、共に創ろう、五反田で!
 
 

講師紹介

西川りゅうじん(マーケティングコンサルタント)

商業開発研究所レゾン所長。1960年生まれ。兵庫県出身。1984年一橋大学経済学部卒業。86年同大学法学部卒業。 在学中に企画プロデュース会社を起業し、29年にわたり赤字の年なく経営。実家は創業以来62年間黒字の製造販売業を営む中小企業。 「ウォークマン」の販売促進、「ジュリアナ東京」のPR、...>もっと見る

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