第66回 『「週刊文春」編集長の仕事術』 (著・新谷 学)

眼と耳で楽しむ読書術

読書・書籍

2017.07.28

団 長(本のソムリエ)
今、スイスにいます。

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(撮影:団長)
 
マッターホルンを始めとする雄大な自然に
心を奪われてながらも、同時に心に浮かんできたのは
"人"のこと。
 
仕事のノウハウを得たり、資格を取得することは
確かに大事なことですが、
何より大事なのは、"人"を知ること。
 
会社の経営やグループの運営、また、一人の人間として、
よりよい人生を生きるにも、
人を知ること抜きには語れません。
 
もしノウハウが万能であるならば、
単純作業だけでなく、経営すらもAIに任せてしまえるはずですが、
そうもいきませんよね。
 
経営も人がやるもので、仕事も人がやるもの。
 
当たり前のことを言うようですが、
人を知ることこそが、マネジメント能力のカギであり、
醍醐味です。
 
人を知る、という点で、非常に興味深い一冊があります。
 
『「週刊文春」編集長の仕事術』(新谷学・著)

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です。
 
 
近年、一人勝ちといっても過言ではないほど、
連続スクープで躍進する「週刊文春」の名物編集長が、
自らの仕事術を語ったもの。
 
正直、スクープの類には関心がなかったのですが、
個人的な興味をさておいて、読んでみてよかったと感じています。
 
冒頭に
 
スクープを獲るという目標があるが、大前提となるのが人への興味。
週刊誌作りの原点は「人間への興味」だ。
やはり人間はおもしろい。愚かだし醜いけど、かわいらしいし美しくもある。
 
とありますが、これは週刊誌作りに限ったことではなく、
全てに通じるもの。
とりわけ経営者やリーダーは、本書から意味あるものを数多く見出せるはずです。
 
たとえば、
 
・人間対人間のとことん深い付き合いをして信頼関係を得た上で
口説かなければ、本当の情報は取れない。
 
・企画を考える上で大切なのは、常に「ベストの選択」をすることだ。
何ごとも「こうなったらどうしよう」と心配するよりも、
まず「こうなったらおもしろいな」と考える。
 
・出版を始めとして、あらゆるものづくりの現場に財務的な発想が入ってくると、
とたんにうまくいかなくなる。
「開発費をこれだけ先行投資して、ヒットしなかったらどうするんだ!」
と責められるような組織だと、今当たっているものの延長線上にしか
新商品は生まれない。ちまちま積み上げていけばリスクは少ないが、
どうしても縮小再生に陥ってしまうし、いずれは飽きられてしまう。
誰もが考えつかないようなことにドーンとお金をかけて、
それがドカーンと当たったときの先行者利益は、計り知れないものがある。
そこの勝負ができるかどうかが試されるのだ。
 
・中途半端に当てにいくと、中途半端に負ける。それでは時代の空気もつかめない。
中途半端な負けが積み重なって、気がつくと大きく負けてしまうのだ。
 
・大切なのは「どうなるか」と心配するよりも「どうするか」である。
 
・菅義偉さんが官房長官としてあれだけ高い評価を受けているのはなぜか。
菅さんのもとで働いている人たちに話を聞くと、共通して返ってくる答えがある。
「菅さんの指示にはゴールがある」と言うのだ。
 
・私にとっての目標は「週刊文春としての勝利」であり、
「現場に好かれること」ではない。
 
といった具合に、仕事論としてはもちろん、リーダー論としても
多くの示唆に富んだ一冊。
「週刊文春」が好きでも嫌いでも、ぜひ読んでみることをオススメします。
 
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は
『Truth, Liberty & Soul』(ジャコ・パストリアス)

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です。
直訳して"真実、自由&魂"というタイトルに、ふさわしい名演。
本書に流れる精神と通じるものがあります。
合せてお楽しみいただければ幸いです。
 
では、また次回。
 
 

講師紹介

団 長(本のソムリエ)

ビジネス書から絵本まで、年間1000冊以上を読破する“本のソムリエ”。活字離れが加速化する現代、独特の読み聞かせを始めとするユニークな授業を通じて、読書と親しむキッカケづくりや日本語教育に情熱を注いでおり、小中学校をはじめとする教育機関からの、読書授業の依頼が殺到。シブヤ駅前読書大学...>もっと見る

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