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税務対策・法律

2019.02.12

第6回 『優秀なフリーランスを囲い込めるか!?』

中小企業の新たな法律リスク

 ITベンチャー企業を営む太田社長は、スマホ向けのアプリやゲーム開発業務を外注していますが、今IT業界は優秀なエンジニアを確保するのが難しいため、何かいい方法がないかと悩んでいました。


* * *


太田社長:先日は元従業員からの未払残業代請求ではお世話になりました。もう懲りたので、従業員の長時間労働を減らすため、アプリやゲーム開発業務を一部アウトソーシングすることにしました。

賛多弁護士:それは良いことですね。最近では、働き方の多様化が進み、企業に属さずに個人として働く者、いわゆるフリーランスが増えてきていますが、IT業界ではとくに顕著ですね。

太田社長:本当にフリーランスのエンジニアは増えているのですが、優秀なエンジニアはなかなか見つかりません。仮にその方に仕事を依頼しても力がつくと高額な報酬を出す他社に移ってしまい、人材の確保が本当に大変です。
そこで私は、優秀なエンジニアを囲い込むため、フリーランスに仕事を依頼する際、同業他社からの仕事を同時に受けることを禁止したり、契約終了後もしばらく同業他社に移転することを禁止する契約を結ぼうと考えているのですが、いかがでしょうか。

賛多弁護士:それは独占禁止法の問題が生じるので注意が必要です。

太田社長:独占禁止法って…。私ども中小企業には関係のない法律と思っていました。

賛多弁護士:そうではありません。優秀なエンジニアを不当に囲い込むことによって競争が制限される恐れもありますからね。

太田社長:では、フリーランスが同業他社の仕事をするのを禁止するような契約は違法ですか。

賛多弁護士:発注者側にも、営業秘密が他社に漏れるのを防ぐ目的や、一定期間は業務に集中してもらいたいという要請があります。このようなフリーランスの活動の自由を制限する正当な目的があって、かつその目的を達成するために制限の範囲が合理的である場合には、独禁法上違法となりません。

太田社長:どのような場合に違法となるのですか。

賛多弁護士:例えば、他社からの受注の禁止期間を過大に設定する場合です。また、他社への移転を引き留めようと報酬の支払いを遅滞するなどフリーランスに不当に不利益を及ぼす場合や、義務の内容について実際と異なる説明をしたり、あらかじめ十分に明らかしないまま、フリーランスが秘密保持などの義務を受け入れている場合です。ケースバイケースですので具体的に検討する必要がありますね。

太田社長:なるほど。では優秀なエンジニアが見つかったときには、先生に相談します。

賛多弁護士:かしこまりました。

 

* * *

 

 近年は、個人の働き方の多様化、副業の解禁、インターネットで業務を請け負う機会(シェアリングエコノミー)が増加したことに伴いフリーランスの数が増加しています。各企業も労働力不足の解決策として活用が望まれています。

 そんな中、昨年2月に、公正取引委員会から、フリーランスも独占禁止法で保護の対象にするという報告書が出されました。そこでは、発注者がフリーランスに対し、その活動を制限する行為については、本文で述べた行為の他にも、複数の発注者が共同してフリーランスの報酬を決めることやフリーランスの転職等を制限することを取り決めること、また、フリーランスが成果物を他へ利用することを制限する行為についても、独禁法上の問題となりうることが指摘されて事実上の運用指針となっています。

 

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 北口 建

講師紹介

鳥飼重和(鳥飼総合法律事務所 代表弁護士)

「社長を守ることが、会社を守ることにつながる」との信念で、自由競争社会で最強の武器である法律を活用し、「戦わずして勝つ」経営参謀型の弁護士。  企業法務の弁護士として、勝訴が困難と言われている税務訴訟で、2008年から10年の3年間で、35事件中25件を勝訴、輝かしい実績をもつ税...>もっと見る

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