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経済・株式・資産

2019.02.08

第68回「利益にこだわる姿勢がむしろ時代にマッチし、低成長下でも着実に成長が可能に」加藤産業

深読み企業分析

表は我が国の加工食品卸売業の売上高上位10社をランキングしたものである。売上高のみをとっても上位と下位の差は極めて大きい。1位と10位では売上高で10倍の差がある。上位2社の売上高は2兆円を超えており、3位も約1.9兆円とほぼ2兆円となる。つまり、上位集約型の業界である。

また、上位企業のほとんどは大株主を総合商社が占める。上位では三菱食品が三菱商事の子会社、日本アクセスと伊藤忠食品が伊藤忠の子会社、三井食品が三井物産の子会社である。

その中にあって、独立系で存在感を示しているのが加藤産業である。上位に位置するもう1社の独立系卸である国分は創業300年を超える老舗であることを考えれば、戦後生まれの同社がいかに特別な存在であるかがわかろう。特に経常利益面で見ればすでにその国分を凌駕しており、売上高経常利益率では上位中ダントツの水準となっている。

同社のこの収益性の高さは昭和22年の創業以来の経営方針のである収益追求の姿勢の賜物である。そして、まさにこの収益性追求姿勢こそ、同社の成長を支えてきた思想であると言えよう。これは同社の創業者が「企業というのは利益を上げないとだめだ」と口を酸っぱくして言うほど、利益意識の高い人であったことがその背景にある。

その最たるものが、すでに数十年前から行っている月次損益の早期算出及び役職者以上への開示である。月次損益が早期に算出できることで、状況判断を早め早めに行えることになり、収益が悪化しかけた場合の対策が立てやすくなる。現在でこそ、IT技術が発達し、多くの産業で月次損益の早期算出が可能となっているが、かつては複雑な卸業務において月次損益の早期算出には途方もないエネルギーが必要であった。

しかし、同社では月次損益の早期算出、早め早めの対策を歴史的に習慣化することで、全社的に収益重視意識が植え付けられたと言えよう。そして、この収益重視意識の積み重ねによって、赤字ビジネスをどうすれば黒字にできるかの道筋にも確固たるものが構築できている。その結果、M&Aによって傘下に入れた赤字企業の着実な黒字化も可能となり、大手に伍しての継続的な売上、利益の成長が可能となっているのである。

有賀の眼

もちろん、「収益重視意識=儲けにこだわる」という言葉だけでは、誤解を招く可能性がある。ここで言う、「儲けにこだわる」はあくまで「売上増にこだわる」という言葉の反意語として用いているものである。

かつて、日本経済が右肩上がりに高成長していた時代には、売上増にこだわることが成功に結び付くケースも多かった。つまり、売上を増やすことによってやがては利益に結び付くという意味である。

しかし、もともと卸売業のビジネスは、一つ一つの収益性が低いため、どこかで損を出すと他で埋めるのが難しいビジネスである。それゆえ、一つ一つのビジネスの収益性を確実に確保することで、会社全体としてのようやく収益性が確保できる業種である。しばしば、卸売業と商社は同じような見方をされることがあるが、商社は個々のビジネスでリスクを取る分、成功時のリターンが大きく、中には失敗して大きな赤字を出すビジネスがあっても成功ビジネスで十分カバーできるビジネスである。ここが、卸売業と商社の決定的な差と言える。

つまり卸売業のビジネスモデルは元来、売上にこだわってもなかなか利益に結び付きにくいビジネスであった。それゆえ、我が国が現在のような低成長に陥る以前においても、卸のビジネスにとっては売上にこだわるより利益にこだわる必要があった。一方、低成長になって多くの業界において多くの企業が収益性の向上のために低成長に合わせたビジネスモデルを模索する必要があった。しかし、卸売業の成功企業はすでに我が国が低成長期に入る前からその低成長型ビジネスを確立している故、低成長期に入っても着実に成長できたということである。

そうは言っても収益化のノウハウに長けていない企業にはなかなか真似ができないと言われそうである。しかし、加藤産業に取材していてわかることは、やはり収益を上げるという意識をまずは全社で共有することこそが最も重要と感じる次第である。まずはそこからスタートしてはどうだろうかと思う。

講師紹介

有賀泰夫(H&Lリサーチ代表/証券アナリスト)

埼玉大学生化学科卒業後、新日本証券(現みずほ証券)に入社。1982年から約30年間にわたり、アナリスト業務に従事し、クレディ・リヨネ証券、UFJキャピタルマーケッツ証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券…等で活躍。主に食品、卸売業、バイオ、飲料、流通部門を得意とし市場構造やビジネスモデ...>もっと見る

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