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2018.12.12

第17話「カードケータイ」が示す、ニッチ商品開発のカギ

北村森の「今月のヒット商品」

NTTドコモが11月下旬に発売した「カードケータイ」、手に取った方もいらっしゃるかと思います。

まず、この写真を見ていただければ、その特徴はすぐに分かりますね。

原稿通信規格である4Gケータイ端末としては、世界最薄、最軽量である、と謳っている一台。割引を含めた実質的な価格は1万368円です。

縦横のサイズは名刺と同じで、薄さは5.3ミリ。重さは約47グラム。11月初旬から予約受付を始めていたのですが、予想以上の反響らしい。

この商品が話題になっているのは、とても面白い現象に思えました。なぜなら、この「カードケータイ」って、確かにサイズと重さに関して特筆すべき部分があるものの、使える機能については相当に絞ってきているからです。

ざっと書きましょう。まず、カメラは備わっていません。おサイフケータイ機能もない。それと、アプリの追加もできません(LINEアプリひとつ、使えないということ)。

まだあります。画面はモノクロの電子ペーパーであり、省電力ではありますが、バックライトがないので暗闇では画面が見えません。ウェブ閲覧はできるにはできますが、モノクロということもあって使うには最低限であるし、動画の閲覧には対応していません。

現在、多くのケータイユーザーが当たり前のように必要としている機能が、ごっそりと省かれていますね。だったらどうしてそこまで、ユーザーからの反響が大きいのか。

要するに「2台目の端末」としてのニーズに応えようという位置付けの商品である、というわけです。

1台目のケータイが、高機能なスマートフォンであれば、2台目では重複する機能は要らない。そういうことです。

私、ヒット商品づくりについて考えるうえで、この「カードケータイ」には参考にすべき点があると感じました。

それはなにかと言いますと……。「なにをやるか」よりもまず「なにをやらないか」を決めるほうが、ヒットに近づける可能性があるという話です。

この商品の場合、本体を名刺サイズにすること、それと軽くすることが、最も大事なポイントですね。これが中庸なサイズ(そこそこ小さい)、中庸な軽さ(そこそこ軽い)だったとしたら、ここまでの注目は浴びなかったはずです。

小さく軽く、という旗を掲げ、それを最優先に開発した跡が見て取れるからこそ、面白い存在だなと多くの人が感じるわけでしょう。これでもし、「でも、やっぱりこの機能はつけておかないと……」といったふうな躊躇があったとしたら、ここまで最薄最軽量の商品にはできなかったに違いない(ちなみにスピーカーも備わっておらず、そのため、この端末の操作音は昔懐かしいブザー音と成っています)。

「なにをやるか」よりもまず「なにをやらないか」を決めにかかるという作業は、簡単なようでいて、難しいものです。「やらないこと」によって、消費者がそっぽを向くかも、という懸念は、商品の開発担当者のなかに当然生まれてしかるべきだからです。

しかし、その局面で、あれもこれもとなると、商品のエッジは削がれていってしまいますね。エッジのない商品というのは、市場のなかですぐに埋もれます。

「やらないこと」を決める勇気が、ときにやはり大事なのだなあ、と改めて強く感じさせてくれた商品でした。それってなにも、今回取り上げた「カードケータイ」のような、いわばニッチ(隙間狙い)の商品の開発に限ったことではない、重要な考え方ではないかとも思うのです。

講師紹介

北村 森(『日経トレンディ』元編集長/商品ジャーナリスト)

1966年富山県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。商品ジャーナリストとして、 地方発の隠れた実力派商品を全国に紹介したり、 ヒット商品あるいは残念な結果に終わった商品から教訓を読み取り伝えている。「消費者がおカネで買えるものすべてを評価する」ことを旗印に、取材・執筆活動を続け、なかでも国...>もっと見る

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