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経済・株式・資産

2018.11.07

第101話 中小企業の事業承継(4)

あなたの会社と資産を守る一手

オーナー社長の多くが会社の銀行借入金の連帯保証人となっているため、中小企業の社長が亡くなった場合の事業承継・相続は厄介なことになりやすいものです。

民法第896条には、 「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」(参照:e-Gov民法)とありますが、原則的には保証債務もこの内容で相続されます。

また、民法907条には「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
3 前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。 」(参照:e-Gov民法)という規定があります。

では、相続人が複数人いるときはどうなのかというと、最高裁の判例(注1)にあるように各相続人がその法定相続分に応じてこれを承継することになります。

ところが、銀行実務では債権者である銀行の承認がなければ、相続人間の協議で決めた遺産相続をもって銀行にその相続を主張できないのです。これをわかりやすく書くと、オーナー社長がなくなった場合、事業承継・相続は債権者である銀行の承認をもらわなければならないということになります。

会社の財務内容が資産超過で黒字、事業承継者もすでに決まっているならいいのですが、債務超過で借入金が多い場合など銀行側の審査しだいでは思うようにことがはこばないこともあります。これは故人の遺言があったとしても同様なのです。

たとえばオーナー社長死亡で、相続人が妻、長男、次男、三男と4人いたとして、多重債務者でアルバイト生活の三男を債務超過の会社の承継者にして、保証債務も相続させようとしても銀行は単純には承認してくれないはずです。

また、被相続人が会社とは別にアパート経営をしていてその債務がかなりある場合など、アパート経営の状態(空き室の状態、返済にあたり持ち出しはあるかなど)を考慮して相続に関する要望が銀行から提示されることもあります。

銀行もある程度の融通はきかせてくれますが、相続がもめるようであれば、会社の資産は凍結され会社経営が破たんすることもあるのです。

以前、銀行で融資を担当していたときに、60代後半のオーナー社長が急死したことがありました。経営する会社は資産もあり経営もそこそこうまくいっていて、故人の妻が役員で、長男がその会社に勤めていたのですが、事業承継にあたり長男が突然相続も承継も拒否したのです。どうやら、親子間の感情的な問題やコミュニケーションの不足、本社兼作業場の建物を建てたときの借入金の多さが一因でこのような事態になったのだと感じましたが、故人の奥様は悲嘆し疲れきっていました。奥様と長男を別々に呼んで相続が確定しない場合、事故届けの対象となることもあり会社経営がうまくいかなくなることもあるので早めに対処したほうがいいですと説明しましたが、長男は要求を拒否し続けていました。

なかなか難しいことですが、オーナー社長存命中から会社の承継について考え、当事者で話し合いができるならしておいたほうが無難です。

 

注1

昭和29年4月8日最高裁判例
裁判要旨 :相続人数人ある場合において、相続財産中に金銭の他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解すべきである。(参照:最高裁判所判例集

昭和34年6月19日最高裁判例
裁判要旨 :連帯債務者の一人が死亡し、その相続人が数人ある場合に、相続人らは、被相続人の債務の分割されたものを承継し、各自その承継した範囲において、本来の債務者とともに連帯債務者となると解すべきである。(参照:最高裁判所判例集

講師紹介

坂田 薫(企業再生コンサルタント)

1957年東京生まれ。現在、東京都中小企業振興公社の事業承継・再生支援事業登録専門家。経営危機・企業再生コンサルタント。会社役員。金融機関の融資担当次長、外為審査、ディーリング、外為日銀担当を経験。現在、中小企業の事業再生のほか、社長の経営補佐役として、ビジネスモデル創造、ウェブマー...>もっと見る

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