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健康・メンタルヘルス

2018.11.06

第8回 祖谷温泉(徳島県)170メートルの谷底に待つ「山の絶景温泉」

これぞ!"本物の温泉"

■四国随一の絶景と泉質
 前回は「海の絶景温泉」を取り上げたが、今回は「山の絶景温泉」を紹介したい。徳島県に湯けむりを上げる祖谷温泉「ホテル祖谷温泉」は、四国の秘境に建つ一軒宿だ。

 四国は自然豊かな観光資源に恵まれた土地であるが、案外、温泉には、あまり恵まれていない。もちろん、温泉がまったく湧いていないわけではないが、全国的に知名度があるのは、夏目漱石の『坊っちゃん』で有名な愛媛県松山市の道後温泉くらいだろう。

 実際、私はこれまで120カ所以上の四国の温泉をまわったが、源泉かけ流しの温泉には四国ではほとんど出合えず、ほとんどの温泉が循環ろ過式で、「塩素の臭いさえしなければ上出来」という惨憺たる状況だった。そんな四国において、祖谷温泉は「四国一」と呼べるようなロケーションと上質な湯が自慢だ。

 「山の絶景」というと、標高の高い場所にある湯船から望む山々の風景をイメージするかもしれないが、山中にひっそりと佇む祖谷温泉の湯船は谷底にある。

 

■神々しいほどの雪の絶景
 祖谷温泉は、吉野川の支流、祖谷川に沿って深いV字の谷が続く祖谷渓に位置する一軒宿。あたりは、まさに深山幽谷といった雰囲気である。「日本三大秘湯」のひとつに数えられているのだが、断崖にへばりつくようにして建つ宿は、意外にもモダンな雰囲気の立派な建物である。

 「秘湯」という言葉の響きを真に受けると期待外れかもしれないが、祖谷温泉の名物であるケーブルカーにひとたび乗りこめば、たちまち秘湯気分に浸れる。源泉が湧いている170メートル下の谷底露天風呂まで傾斜角42度の断崖を5分ほどかけて降りていくのだ。

 少し恐怖を感じるほどの急斜面。ケーブルカーの先頭から下を覗くと、深い谷底に吸いこまれそうになる。だが、ケーブルカーの中から望む渓谷美は、惚れ惚れするほどの絶景。ちょうど雪が降っていたので、木々が雪をかぶり、その光景は神々しささえ漂っている。まるで水墨画の成果に迷い込んだかのよう。ケーブルカーが谷底に近づけば近づくほど、俗世間から遠く離れていくような感覚になる。

 谷底にある男女別の露天は、祖谷川の渓流に面した岩風呂。15人ほどが入れそうな大きさだ。甘い硫黄の香りを放つ湯がザバザバとかけ流しにされ、湯船から湯があふれ出ていく。四国ではなかなか見られない贅沢な光景である。

■何時間も浸かっていられそうな極上湯
 泉質もすばらしい。アルカリ性単純硫黄泉の湯は、少しとろりとしていて、ぬめりがある。肌にまとわりつくような感覚が特徴だ。また、ガス成分を大量に含んでいるため、気泡で湯が白く濁って見えるほど。体中に小さな気泡が付着するのも楽しい。気泡が消えないのは湯が新鮮である証拠。泡付きのレベルは日本屈指といっていいだろう。

 泉温は38℃と少しぬるめ。1時間でも2時間でも浸かっていたくなるようなやさしい湯である。渓流のせせらぎをBGMにして、極上の湯に身をゆだねていると、うとうとと夢の中へ吸い込まれそうになる。眠くなる温泉は、いい温泉の証だ。たまたま他の入浴客がおらず、絶景と上質の温泉を独り占めできた。視界の開けた山上の絶景も好きだが、谷底の山の風景も甲乙つけがたい魅力がある。

 このほかにも山の絶景には、十勝岳温泉「湯元凌雲閣」(北海道)、姥湯温泉「枡形屋」(山形県)、須川温泉「栗駒山荘」(秋田県)、藤七温泉「彩雲荘」(秋田県)、「高峰温泉」(長野県)、本沢温泉(長野県)、蓮華温泉「蓮華温泉ロッジ」(新潟県)、霧島温泉「旅行人山荘」(鹿児島県)などたくさんある。ぜひ、お気に入りの山の絶景温泉を見つけてほしい。

講師紹介

高橋一喜(温泉アナリスト)

 千葉県生まれ。上智大学卒業後、2000年ビジネス系出版社に入社し、経営者向けの雑誌やビジネス書の編集に携わる。2008年3月、温泉好きが高じて会社を辞め、「日本一周3000湯の旅」に出発。386日かけて3016湯を踏破。現在はフリーランスとして書籍の編集・ライティングに携わるかたわら、温泉ライター...>もっと見る

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