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歴史・人間学・古典

2018.10.09

組織を動かす力(2)重要なのはチームの方向付け

指導者たる者かくあるべし

 負け犬根性を一掃する

 ラグビー日本代表のヘッドコーチに就任したエディー・ジョーンズは、イングランドを舞台にしたワールドカップまで一年となった2014年9月、会見に臨んだ。すでにグループリーグの組み合わせが決まっていた。日本は、南アフリカ、スコットランド、サモア、米国と同じグループとなった。

 とりわけ、初戦で対戦する南アフリカは、2007年大会で優勝した強豪だ。

 「南アフリカ戦については毎朝、起きるたびに考えている」とエディーは切り出した。

 「どうしたら勝てるかを考えている」

 ヘッドコーチに就任して一年半、彼は、日本チームに蔓延している負け犬根性一掃に向け、厳しい合宿を繰り返した。

 世界の強豪に比べて日本代表は体格面でひとまわり小さい。肉体がぶつかりあうラグビーというゲームでは圧倒的に不利である。

 だが、エディーは、体格・フィジカル面での劣勢を言い訳にすることを選手に許さなかった。「できない理由を探すよりも、何ができるかを考えるべきだ」。

 

 一流の専門コーチを雇う

 体格の不利を補うためには、持続力とスキルを高めるしかない、と彼は考える。体格差が如実に出るスクラム、ラインアウトの強化、鉄壁のディフェンスを築くために、彼は、それぞれのアシスタント・コーチを世界から招請した。

 「アシスタント・コーチを雇う際に心がけたのは、自分より知識が豊富は人を選ぶことだ。自分にないスキルを持つスタッフを集めることを心がけた」という。ともすれば最高指揮官は「自分は何でも知っている」として、専門知識があるアシスタントを敬遠しがちだ。選手がアシスタントの指示ばかり聞くのを嫌がるものだ。エディーは違った。

 一流のアシスタントに任せた以上、それぞれの分野の練習で、彼は彼らの指導を否定するような介入はしない。任せきるのだ。

 

 コミュニケーションのとり方

 任せきるだけの放任なら、ヘッドコーチはいらない。エディーの手法は、練習に入る前に何がポイントとなるかを話し合い、コーチに任せることにあった。

 スタッフ間でのコミュニケーションがあればこそ、この手法は生きる。

 コミュニケーション重視は、選手同士でも同じだ。ヘッドコーチ就任前に彼が日本のクラブチームを指導した時のこと。食事の際に選手同士、互いの会話がないことが気になった。みれば、食事を取りながら携帯電話をいじっている。せっかくの意思疎通の機会が生かされない。彼はクラブハウスの食堂に「食堂内では携帯の使用を控えるように」と注意書きを置いた。

 「今日の練習で何が足りなかったか」「あそこのプレーはこうすべきだっただろう」。気づいたことを率直に話合うようになった。

 「言いたいことは言い合え」―エディー・ジャパンの合宿は、選手それぞれ、そしてコーチング・スタッフたちが、「南アフリカに勝つにはどうすればいいか」という共通の目標に向かう自由な議論の場となっていった。

 (この項、次回に続く)

(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

※参考文献
『ラグビー日本代表監督エディー・ジョーンズの言葉 世界で勝つための思想と戦略』柴谷晋著 ベースボール・マガジン社

講師紹介

宇惠一郎(元読売新聞東京本社国際部編集委員)

 早稲田大学卒業後、商社を経て、1978年読売新聞社入社。社会部、外報部、95~98年ソウル支局長。帰国後、解説部次長、2007年編集委員。2011年4月〜2012年8月ソウル支局長(専任部長)、2012年9月編集委員、現在フリージャーナリストとして活躍している。 ※主な著書と受賞歴 「20XX年地方都市はど...>もっと見る

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