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コミュニケーション

2018.10.05

Vol.6「名称が作るブランド・イメージとアイデンティティ」伊ブランド「ヴェルサーチェ」名称訂正宣言とM&A発表

ビジネスを一瞬で制する!一流グローバル経営者は知っている“社長の戦略印象リスクマネジメント”

9月25日に発表があった「ヴェルサーチェ」を「マイケル・コース」が2.1ビリオン(約2400億円)で買収したニュース。そのヴェルサーチェ、9月初旬に「ヴェルサーチ」から「ヴェルサーチェ」に名称変更をする発表をしていました。日本国内でも、ヴェルサーチ ジャパンは7月31日に開いた臨時株主総会で商号の変更に関する議案が承認されたことと、これにより10月1日に社名をヴェルサーチェ ジャパンに変更すると発表しています。
また、Versaceの2018年秋冬SNSキャンペーンでドナテラ・ヴェルサーチェ自らが出演し「IT’S VERSACE, NOT VERSACHEE(ヴェルサーチーではなく、ヴェルサーチェ)」とブランドの正しい呼び方を宣言しました。

こちらがその映像。
「It's Versace not Versachee」
https://www.youtube.com/watch?v=PuXUCXb-trY


この夏から9月初旬にかけて、BurberryやCELINEのロゴ変更の発表もあり、それはリブランディングの一環と捉えることができていたのですが、Versaceの名称訂正宣言に関するニュースを目にした時、体制が大きく変わるような気がしていたところ、今回のM&A。このニュースが出ることを前提に、発表時には正式な名称・正式な呼び方をもって、改めて世界にブランドを再認識させることを狙っていたのは間違いないでしょう。そのためには、今回のM&Aの情報が世に出るまでの間が空きすぎでもなく、近すぎでもない、まだ人の記憶の中に名称変更の情報が比較的新しい状態で残っていることを逆算した計画だったといえます。

この「ヴェルサーチ」という呼び方・記載は、アメリカのせい。Movieでもドナテラが言っている、「ヴェルサーチーじゃありません」は、まさにアメリカ人に向けた発音の訂正を求めるメッセージです。実際、筆者の周りでも、「ヴェルサーチー」と呼ぶアメリカ英語ネイティブが多数。それが日本では「ヴェルサーチ」とカタカナ表記になり、日本側の会社名では「ヴェルサーチ・ジャパン」となっていたのが、日本に入ってきた当初の流れでしょう。

「名前」というのは非常に大事で、ビジネスにおいて会社名やブランド名、そして一個人の名前もそれぞれのイメージやアイデンティティの在り処です。ビジネスにおいてもプライベートでも、名前は大事に扱うべし、これは世界共通コミュニケーションの鉄則と言っても過言ではありません。当然、相手の名前を間違えるのは、非常に無礼な行為であるわけです。
名称の記載し方も当然ながら、この呼び方(発音)は非常に重要。ヴェルサーチェのデザイナーであるドナテラ・ヴェルサーチェにしてみれば、「ヴェルサーチー」などという違う発音の名前は、自社のブランド名でもなければ、ましてや自分の名前ではないと言いたい気持ちでいたことでしょう。

実際、名前の呼び方が変わる報道があった後、「ヴェルサーチェ」の呼び方に違和感を覚えると言う意見も多く耳にしました。しかし、他人が何を言おうと正しい発音は、もともとヴェルサーチでもヴェルサーチーでもなく“ヴェルサーチェ”。彼らにはそれを訂正する権利があります。世の中に浸透してしまったとはいえ、やはり企業そしてブランドの真髄とも言える名前やその呼び方が、異なるものとして伝わり浸透してしまっているのであれば、修正しなくてはなりません。しかし、世に広まって定着してしまったその名前の記載方や発音を訂正するのはなかなか難しい、タイミングを逸すればブランド・イメージも下がる可能性も秘めています。

しかし、人もブランドも呼ばれ続けて育つもの。それであれば、ブランドがこれから先の為に、新たに大きく舵を切る時にこそ、強烈なインパクトを持って人に伝えられたらベスト。だからこそ、今回のM&Aの少し前に名称変更の発表、M&Aの噂が出る、その後M&A正式発表という、暫くメディアも一般もその名前を目と耳にする機会に当ててきたわけです。当然、契約書上でも新名称での記載ができます(これは日本語に限ってですが)。その上、日本法人の名称が正式に変わるのは10月1日とはいえ、今回のM&Aに関するニュース記事ではどのニュースでも「ヴェルサーチェ」と記載しています。文字化されたメディア情報上では既にしっかりと記載名称を変更させることができているのでした。

目で追いかける文字だけでなく、人が話し耳で聞く正しい発音のブランド名は、視覚と聴覚2つの感覚を使い、さらに深くしっかりと人の記憶に刻まれます。万が一、世の中的には大した影響のなかったことだと仮定しても、正しい情報に正せたことにより存在していた違和感を解消でき、社内の士気が上がれば、ブランドとしての健康を保つことができることでしょう。

「ヴェルサーチェ」を買収した米国のブランド「マイケル・コース」を運営するマイケル・コース・ホールディングス・リミテッド(Michael Kors Holdings Limited)も、今回のM&A完了と共に社名を「カプリ・ホールディングスリミテッド(Capri Holdings Limited)」に変更。扱うブランドが「マイケル・コース」「ジミー・チュー」に加え「ヴェルサーチェ」が増え規模拡大、さらなるグローバル展開と市場拡大を見据え、大きな一歩を踏み出す企業の姿勢を示すメッセージでしょう。

名称とはブランド・イメージとアイデンティティ、そしてその企業からの意思ある強いメッセージであり、企業やブランドそしてトップのプレゼンスそのもの。皆様の企業そしてトップによるメッセージの伝え方・伝わり方、日本国外も視野に入れていらっしゃるならなおさら、今この時期に是非ともブランディングの現状把握、今の状態を読むことで、今後のビジネス方針にあったブランディングとそのやり方を描くことができます。ブランディングはビジネスプランと車の両輪ですから。

この夏から秋の初めにかけて、世界の有名ブランドによるリブランディングの動きを多く目にしていますが、ここから先の市場を予測するにつけ、今まさに変革を起こす時期なのかもしれません。

講師紹介

日野江都子(リアルコスモポリタン, CEO)

武蔵野美術短期大学在学中、コロンビア大学(米国・NY)へ留学。武蔵野美術大学卒業後、パーソンズ美術大学(米国・NY)に留学、「ファッション&イメージコンサルティング」コース修了、ディプロマを取得。フリーランスを経て、2004年、ニューヨークで株式会社リアル コスモポリタンを設立。 ニューヨー...>もっと見る

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