人気のコラム
おすすめコラム記事
カテゴリ別一覧を見る

経済・株式・資産

2018.09.26

第99話 中小企業の事業承継(2)

あなたの会社と資産を守る一手

相続によって子供や配偶者が事業承継する場合、承継する側が考えるもっとも大き問題は資産超過か債務超過かということの見きわめであるように思います。もちろん相続による場合は事業承継のみならず、会社の経営を行っていた被相続人個人の資産の状況も含めてトータルで資産超過であるかどうかを考えることになります。

中小企業経営者である父親がなくなったとして、遺言が存在していて、そこに会社の株式、及び会社の銀行借入の保証債務(負債)は子供に相続させ、その他の財産(個人名義の預金・上場企業の株式・不動産など)は配偶者に相続させると書かれていれば、故人・父親と相続人たる配偶者、子供は基本的にはその遺言に従うことになりますが、会社の債権者である銀行などは必ずしも遺言に拘束されるわけではないのです。

さらにいえば、限定承認という制度はありますが、事実上、会社の株式は相続しないが、その他の財産は相続するなどという選択は不可能なのです。

したがって、会社経営者が亡くなった場合、残された家族は会社、個人の資産負債状況、会社の収益性などをトータルで考えて相続のしかたを決めていくのが合理的です。それゆえにその合理性に反する遺言があったとしたら相続はすんなりとは決まらないことになります。

そして、ここで問題となるのが「中小企業の銀行借入金では必ず経営者が連帯保証人になっている」ということです。なぜそれが問題になるのかといえば、「連帯保証は債務なのだから資産から控除されて相続財産がその分減るはずだ。したがって相続税もその分安くなる」という間違った考えにもとずいて相続、事業承継が決まっていくリスクがあるからです。

相続税法14条に保証債務に関係する規定があり、こう書かれています。

相続税法 第十四条 前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る(参照:e-Gov法令検索)

また、国税不服審判所のホームページにおいても「ー国税不服審判所(保証債務)ー請求人が被相続人から承継した連帯保証債務は、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められるもの」には当たらず、債務控除の対象とならないとした事例」という記述があります。これらを読めばわかるように、ほとんどのケースで保証債務は債務として控除されないのです。

つまり、多くのケースでじっさいの金額よりもはるかに多い資産が計上され、それをもとに相続税がじっさいよりも多く課税されるわけです。

そして、承継する会社に関しても同じようなことが考えられます。
年間売上高5億円で、減価償却と営業利益の合計額が2千万円。純資産5千万円、借入金2億円といった内容の悪くない中小企業でも、その純資産の算定根拠となる資産の価値が正しい金額とは限らないのです。この場合、資産のほとんどすべてが現金・預金なら資産超過と考えても問題ないはずですが、会社は機械、土地、建物などの固定資産で資産をもっていることが多く、また売掛金などの流動資産にも回収に懸念のある資産が含まれていることもあるわけで、現実的な修正バランスシートを作れば債務超過になるケースも多いのです。

相続・事業承継にあたりこれらを総合的に考え最良の判断するとなるといっきにハードルが高くなります。
それゆえ、 経営者、それを承継する可能性のある人は財務の基本くらいは理解しておかないとうまくいかないと思われます。

講師紹介

坂田 薫(企業再生コンサルタント)

1957年東京生まれ。現在、東京都中小企業振興公社の事業承継・再生支援事業登録専門家。経営危機・企業再生コンサルタント。会社役員。金融機関の融資担当次長、外為審査、ディーリング、外為日銀担当を経験。現在、中小企業の事業再生のほか、社長の経営補佐役として、ビジネスモデル創造、ウェブマー...>もっと見る

おなじカテゴリのコラム

講師の商品ピックアップ

当サイトでは、実在性の証明とプライバシー保護のため、GMOグローバルサイン社のSSLサーバ証明書を使用し、SSL暗号化通信を実現しています。

SSLとは?(IT用語辞典)