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歴史・人間学・古典

2018.08.21

日本型組織の弱点(1)ピラミッド組織の運営法

指導者たる者かくあるべし

 相次ぐ組織崩壊

 財務省の官僚たちによる文書の改ざん、隠蔽問題は、エリート官僚組織のあまりのひどさに呆れてものも言えない。スポーツ界に目を転じても、日大アメリカンフットボール部監督の悪質タックル指示、アマチュアボクシング連盟会長の組織私物化問題など不祥事が相次いでいる。個々別々に起きているように見える事柄の背後に、何か共通の問題点がひそんでいるように思えてならない。

 自らの組織が同じ落とし穴にはまらないために、参考とすべきは何なのか。

 

 タテ社会に潜む落とし穴

 社会人類学者の中根千枝は、1960年代に、日本型組織について、トップから末端まで縦につながる「タテ社会」であると分析して、その問題点を指摘した。

 強烈な指導力を持つトップから末端まで組織がピラミッド型で構成されることは必然である。軍隊から官僚組織、企業組織まで、およそ人間が営む組織はそうなる。

 一人のトップから、下に向けて枝分かれする樹木を想像すればいい。各レベルで横に切ってみると、タテ社会では隣の構成員同士のつながりはないか、あっても薄く、上司、部下を一本線の縦糸でつないでいる。ピラミッドはピラミッドでも「底辺のない三角形」に中根はたとえている。

 組織はトップから末端まで親分・子分の関係で無限につながり、横(他部署間)の牽制と連携は弱い。個々の構成員は自らの地位に与えられた義務よりも、上司ー部下の人間関係の維持に意を注ぐことになる

 親分は子分に恩義を与え、子分はその恩義に報いることを行動規範とする。たとえ、上からの命令が理不尽であっても、身の保全のために応えることになる。忖度(そんたく)して、命令遂行のために邁進することになる。その忠誠度が人物評価=出世につながる。

 

 人間的つながりより組織ルールを重視せよ

 近ごろ多発する日本型組織の不祥事の事例に引きつけて言えば、トップの妻が経営する料理屋に顔を出す部下は、トップのお気に入りとして、昇進が早い。あるいは、コーチの不祥事をもみ消したことのある監督が恩義をテコに不法なタックルを選手に行わせるようにコーチに指示し、「責任はお前にある」とコーチに責任を転嫁し、コーチは起きた事態の責任までかぶろうとする。

 国の最高トップの意思であることを匂わされて、文書の改ざんを指示された部下が完璧に意に沿うように書き換え、都合の悪い文書を破棄して、存在しなかったことにする。

 このような組織運営は、欧米人の目には奇異に映る。「日本異質論」である。欧米社会でもピラミッド型の組織運営はあるだろう。しかし、その運営の基本は、親分・子分の人間関係による利益の誘導ではない。

欧米型の組織を動かすのは「ルール」である、と中根は指摘している。ルールを無視した組織運営を命じるトップ、上司を排除する仕組みこそが必要なのだ。

 

(書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

※参考文献
『タテ社会の人間関係』中根千枝著 講談社現代新書
『権力と支配』マックス・ウェーバー著 濱嶋朗訳 講談社学術文庫
『菊と刀 日本文化の型』ルース・ベネディクト著 長谷川松治訳 講談社学術文庫

 

講師紹介

宇惠一郎(元読売新聞東京本社国際部編集委員)

 早稲田大学卒業後、商社を経て、1978年読売新聞社入社。社会部、外報部、95~98年ソウル支局長。帰国後、解説部次長、2007年編集委員。2011年4月〜2012年8月ソウル支局長(専任部長)、2012年9月編集委員、現在フリージャーナリストとして活躍している。 ※主な著書と受賞歴 「20XX年地方都市はど...>もっと見る

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