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第82回 中国出張に「WeChat Pay」

デジタルAVを味方に!新・仕事術

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2018.08.03

鴻池賢三(ディー・エー・シー・ジャパン代表)

急速な経済発展を遂げる中国。ご存じの通り、GDPは日本を追い越し、今や1位のアメリカにも迫る勢いです。
エレクトロニクス業界に属する筆者にとっても、中国企業と関わる割合が増え、その伸びを肌で感じるようになりました。
近年は中国への出張も頻度が増しましたが、その中で最も日本より進んでいると感じるのが「スマホ決済」。現金無しで生活が成り立つほどに浸透しています。
今回は、そんな中国で存在感を増すスマホ決済サービスの中でも特に利用者数が伸びいる「WeChat Pay」に注目。概要を紹介しつつ、日本ビジネスパーソンも比較的簡単に利用できる方法をご紹介します。
「WeChat Pay」を通して、中国の変化を体感してみてはいかがでしょうか?


■WeChat Pay概要
そもそも「WeChat」(微信)は、中国Tencent(騰訊)社が無償で提供するSNSサービスで、日本における「LINE」を想像すると良いでしょう。中国では原則、LINEやFacebookといったサービスが利用できないこともあり、「WeChat」が実質標準的な通信手段と言っても過言ではありません。
その「WeChat」の電子マネー決済サービスが「WeChat Pay」。スマホを利用し、画面上に表示するQRコードあるいはカメラ機能を利用する仕組みなので、誰もが潜在的なユーザー。スマホに電子マネー専用のICや通信機能を搭載する必要が無いので、低コストで利用しやすいのが特長です。


■使ってみました
出張先の深センで、実際に「WeChat Pay」を使ってみました。
ホテル、レストラン、コンビニなどの商店は、規模を問わずどこでもできる状況でした。通信機能を搭載したレジスターを設置している所では、利用者がスマホに表示したQRコード(あるいはバーコード)を、店舗側の端末にスキャンさせるだけで決済が完了します。

【写真】コンビニのレジ横に設置されていたQRコードリーダー。利用者がスマホに自身のQRコードを表示し、リーダーに読み取らせる仕組み。

【写真】コンビニのレジ横に設置されていたQRコードリーダー。利用者がスマホに自身のQRコードを表示し、リーダーに読み取らせる仕組み。

屋台、路上パフォーマーなど「個人」への支払いも可能で、その場合、受け取り側が掲示しているQRコードを、支払い側がスマホのカメラで読み取って決済します。この方法は、利用者側がスマホで金額を入力する手間が掛かりますが、レジスターやQRコードを読み取る端末が不要なので、誰でも初期費用なしにスマホ決済を導入できるのがメリットです。(リーダーを設置している店舗でも、副次的にこの方法が利用できるようになっています。)

【写真】受け取り側がQRコードを表示している例。

【写真】受け取り側がQRコードを表示している例。

今まで通り現金も利用できますが、少なくとも深センの街中では、老若男女問わずほぼ100%の人が「WeChat Pay」のような電子決済を利用。筆者の見た範囲ですが、現金支払いを目撃したのは、地元のスーパーマーケットのみ。高齢者でスマホを利用していない人かもしれません。

■電子決済が急速に普及した理由は?
一般的に中国で電子決済が急速に普及した理由は、「ニセ札問題」説が有力です。
しかし、実際に現地で様子を目の当たりにすると、現金が使えない訳ではないので、「ニセ札問題」が全てではないようです。また、WeChat PayのようなQRコードを用いるシステムは、日本で主流の電子マネー「Felica」(ICを利用)に比べると、セキュリティー面での心配が残ります。最近、QRコードのみで簡単に決済できるのは1日に500元(9000円程度)の上限が設けられ、被害の心配が小さくなり、また犯罪抑止の効果もありそうですが、今後はシステムの改善が求められそうです。

筆者の私見ですが、スマホ決済が普及した理由を整理すると:
1. 必需品となったスマホに加え、財布も持ち歩くのが面倒に感じるようになった。
2. システムの導入コストが低い。クレジットカードが導入できない零細店舗や個人も向く。
3. 小銭のやり取りが不要に(省力化)。支払い側が暗算で小銭を減らす工夫はしない。
4. 現金に比べ、紛失や盗難時に被害が少ない。
、といった所でしょうか。

特に旅行や出張などで、短期滞在者の場合、コインを見分けるのも億劫なもの。一度体験して使えるようになれば、スマホ決済はとても快適です。


■日本人が利用するには??
「WeChat Pay」を利用するには、原則として、中国で銀行口座を開設する必要があります。
駐在員などの長期滞在者なら口座を開いて当然でしょうが、出張や旅行では難易度が高いと言えます。
最も簡単な方法は、「WeChat Pay」利用者から送金をしてもらう事。送金により、中国に口座を持っていなくても、「WeChat Pay」が利用できるようになります。
「WeChat Pay」にお金をチャージするには、やはり中国の銀行口座が必要ですが、少額を試してみたいなら、pocket changeという端末が利用できます。そもそもpocket changeとは、旅行などで手元に残った海外通貨(少額で換金し難い)を、電子マネー化するサービスで、主に空港などに設置されています。そのため、交換レートは現金よりも不利で、大金の換金には向きませんが、数千円相当を「WeChat Pay」を試してみたい…という目的なら充分に実用的です。

【写真】pocket change 端末。空港の国際線ターミナルなどに設置されている。

【写真】pocket change 端末。空港の国際線ターミナルなどに設置されている。

【写真】「WeChat Pay」入金すると発行されるレシート。スマホの「WeChat」アプリでQRコードを読み取る。

【写真】「WeChat Pay」入金すると発行されるレシート。スマホの「WeChat」アプリでQRコードを読み取る。

【キャプチャ画像】チャージが完了すると、スマホ画面で残高が確認できる。「\」は、中国人民元(圓)の意。

【キャプチャ画像】チャージが完了すると、スマホ画面で残高が確認できる。「\」は、中国人民元(圓)の意。

■ さいごに
日本では20年以上も前に、ソニーがFelicaという電子マネーを想定した技術やシステムを開発し、現在では、Suicaなどの交通系を筆頭に、数多くのサービスが登場。広く普及するに至りました。その流れで、スマートフォンでも、電子マネー対応となると、Felicaに準じたハードウェアを搭載することになり、セキュリティーや使い勝手の面では優れたポイントが多くあるものの、比較的安価なスマホ製品では利用できなかったり、店舗にも対応するICカードリーダーを設置する必要など、ハードルの高さは否めません。
最終的にセキュリティーを重視したICタイプが残るのか、あるいは、急速に普及し、利用者数の急増で存在感を増す、「WeChat Pay」のようなQRコード¥(バーコード)タイプが残るのか、あるいはブロックチェーン技術を利用する仮想通貨が全てを呑み込むのか。大きな変革期を迎え、新しいビジネスチャンスも生まれそうです。

講師紹介

鴻池賢三(ディー・エー・シー・ジャパン代表)

株式会社オンキヨーにてAV機器の商品企画職、米国シリコンバレーのデジタルAV機器用ICを手がけるベンチャー企業を経て独立。 現在、WEB・テレビ・雑誌等のメディアを通じて、AV機器の評論家/製品アドバイザーとして活躍中。その他、「ディー・エー・シー ジャパン」を設立し、AV機器関連企業の商品企...>もっと見る

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