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経済・株式・資産

2018.07.13

第61回「先制主義」が躍進の根幹「ニトリホールディングス」

深読み企業分析

ニトリホールディングスの業績拡大が一向に止まらない。直近15年間で売上高は6.5倍、営業利益は10.5倍となっている。そればかりか、2018年2月期まで31期連続の増収増益を達成している。この記録は上場企業でも他に並ぶところがない記録である。しばしば小売業はアマゾンなどのネット企業に顧客を奪われるといわれているが、大半が自社ブランドである同社はその影響もなく、自社のネット通販は店舗売上以上の伸びを記録している。

仮に同社が1989年札幌証券市場に上場した時に投資していれば、現在までに100倍近くになっているのである。1989年と言えば、東京株式市場で日経平均が40,000円弱の天井を付けた年であり、未だに日経平均はその半分ほどである。また、それ以降、日本は失われた25年と言われるほど経済が停滞したのであるが、そんなことはお構いなしに同社は高成長を遂げてきたのである。

今から6年前の2012年2月末時点の同社の店舗数は268店舗であったが、現時点の店舗数は538店舗とほぼ倍増している。この店舗数の中には国内のニトリ以外に、デコホームという家具のウエイトが低い業態が66店舗あり、海外にも台湾、米国、中国と合計59店舗が含まれている。それでは、ニトリは一体他の企業とどこが違うのであろうか。

まずは、製造小売業として、ローコストで高品質な商品を製造する技術、そしてそのサプライチェーンを構築したことが大きなポイントであろう。しかし、製造小売業は同社以外にも多い。同社の場合、それに加えて、創業来の家具販売から、その集客力や自社製造のサプライチェーンを活用して、家具以外の商品への多角化に成功したことが大きい。

最近、似鳥会長が書いた「リーダーが育つ55の智慧」という本によれば、1972年に米国視察旅行に出かけた際に、米国の大手家具チェーンでは、家具以外に家の内装関連製品まで取り扱っていたそうである。当時、国内の家具屋ではとても考えられないことだったということ。

似鳥会長によれば同社は当時、倒産寸前だったようだが、それにかかわらず、その米国の家具チェーンを見習ってカーペットやカーテンを販売し始めたのである。当時、カーテンはカーテン専門店が販売しているもので、オーダーメードが中心で、一式20万円、30万円もするものであった。その結果、新築時にあつらえたものをずっと使う家庭がほとんどで、カーテンを取り換える発想は日本にはなかった。

そこで、同社では最も長いベランダ用カーテンでも5,000円で買えるようにしたが、そもそも同社がカーテンを扱っていることを知っている人がいなくて、数年間は赤字がつづくことになった。しかし、3年ほど経って認知され始め、安さ、便利さが認識され、5年で黒字化したとのこと。つまり、誰もやっていないから、すぐには儲からないが、成功すれば大きく儲かるというまさにビジネスの原点であることを同社は成し遂げているということである。今や、カーテンは同社の主要な商品に育っている。こうして、誰もやらないことの積み重ねが、同社の今の成功の背景にあると言えよう。

有賀の眼

このカーテン販売の例でもわかるように、人に先んずることが同社成功の一つのキーである。同社の5大スローガンの一つに、「先制主義」がある。これはそもそも創業者の似鳥会長の性格でもあるのだが、この主義が同社の成長を支えてきたと言えるのではなかろうか。

これは、まだ誰も手を出していないこと、この世に存在していないものに真っ先に取り組む。一番でなければ、どれだけわずかな差であっても、2番以下なら何番でも同じという考えである。

その考えを背景にして、小売業でありながら自社工場を持ち、海外で本格的な量産体制を確立したのは同社が初めてだと、似鳥会長は述べている。また、2016年に物流効率化のためにロボット倉庫を導入したのも国内初で、これによって通販発送の作業効率を3.75倍も向上させている。

もちろん、先制主義の実行は言うほど簡単ではないのであるが、それでもまさにこの考え方が、ビジネスにおける根本的な勝つための根源ではないかと、同社を見ていてつくづく思うのである。

講師紹介

有賀泰夫(H&Lリサーチ代表/証券アナリスト)

埼玉大学生化学科卒業後、新日本証券(現みずほ証券)に入社。1982年から約30年間にわたり、アナリスト業務に従事し、クレディ・リヨネ証券、UFJキャピタルマーケッツ証券、三菱UFJモルガンスタンレー証券…等で活躍。主に食品、卸売業、バイオ、飲料、流通部門を得意とし市場構造やビジネスモデ...>もっと見る

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