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財務・会計

2018.06.20

第143話 税務署伺いにはご注意

強い会社を築く ビジネス・クリニック

関東地方で大手自動車会社の販売店(カーディーラー)を
十数店舗展開している山木グループ(仮名)の山木会長(仮名)から、
株式承継の相談にのってほしい、と言われました。


『山木会長、ところで、退職金はお取りになりましたか?』
質問すると、山木会長から意外な回答が返ってきました。
『えぇ、前期末に2億ほどもらいました。』
『えっ?! なぜ?!』

山木グループの年商は、100億、経常利益はここ数年3億円前後。
自己資本比率は40%の優良企業です。
おまけに、山木会長は創業者です。
これほどの会社の創業者なら、最低5億、いや10億近く取ったって高すぎません。
明らかに低すぎるのです。
聞けば、役員報酬も直前で2百万円ほどしかもらっていなかったそうです。
確かに、役員報酬そのものが低かったということはありますが、
それでも、私たちの相談経験から申せば、4億円は出せた案件です。

『なんで、2億円なのでしょうか?誰かに相談したんですか?』と質問しました。
『はい、実は、税務署に事前に相談に行きましてね。

もともとは、2.5億ほどもらおうと思っていたんですけど、

“高すぎる”と言われまして。それで、2億円ちょっとにしたんですよ。』
『誰が税務署に行ったんですか?会長自身が行かれたのですか?』
『いえ、義理の息子が社長をやっていまして、その社長に行かせました。』
義理の社長と話をしてみると、とても財務知識や税務知識が十分あるタイプではありま
せん。税務署に行くなら、もっと知識がある人間、せめて複数名の税理士に相談して同
行してもらうべきです。
『社長、どういう根拠で、税務署に2億円と言われたのですか?』
『もともと、会長の山木には退職金を2.5億円出す予定でした。
それで2.5億円出そうと思っていますけど問題はないものでしょうか?』と質問したん
です。
『税務署は、なんといいましたか?』
『はい、そのときには、2.5億を計算した根拠となる当社の退職金規定を持っていきまし
たが、その規定の数字が、高いですね。もう少し下げてください、と言われました。
その際に、税務署の担当者から、退職金規定に関する資料も頂きました。』
実際にその資料を見せてもらいました。
『この資料では、功績倍率として3.0と書いてありますね。

この3.0を使ったのですか?』
『いえ、3.0だと少し高いということで、その下の2.2という倍率を使うのがちょうよいでしょ
う、と言われました。
そう言われた以上は、その倍率を使わざるを得ないため、
当初の退職金の金額を下げて、2億円にしたんです。』
いかがでしょうか?
何も知識がない方が、税務署を訪ねれば、税務署の指導に何ら疑問を持たないかもし
れません。反論する根拠になる知識も、持ち合わせていないでしょう。
しかし、創業者への功績倍率2.2倍は、明らかに低すぎます。
税務署からすれば、役員退職金は少しでも少ないほうがよいため、
2.2倍が適正といったのです。
私たちの話を聞いて、山木会長は、ひどく後悔されています。
『なんだ、失敗したなぁ・・・いまから、一旦退職金を戻して、もらい直すことはできません
か?』

後悔しても、さすがにどうしようもありません。
重要な取引、対策を打つ場合に、税務署に相談に行くこと自体は、大切なことです。
しかし、税務知識がない方が行くと、税務署に上手に誘導され、
大きな節税策を事前にストップされてしまいます。
私たちは、これまで3億円ほどの退職金から、最高は23億円の退職金と、
日本全国、たくさんの高額退職金のお手伝いを行ってきました。
そして、事前に税務署に伺う場合には、
なぜ、社長に高額の退職金を出すのか?出せるのか?
これをしっかりとストーリーとして文書にして、税務署に提出しています。
これがいわゆるエビデンス(信憑書類)なのです。
高額の退職金をはじめ、重要な取引、対策を行う場合は、
顧問税理士の先生でもよいので、信頼できる専門家と一緒に相談に行くべきでしょう。
そして、その際には、必ずエビデンスを持参しましょう。
エビデンスを持たずに、自分たちだけで税務署に相談に行っても、
山木グループのような扱いを受けるだけなのです。
税務署伺いをする場合には、十分にご注意ください。

講師紹介

井上和弘(アイ・シー・オーコンサルティング会長)

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