第6回 なぜハラスメント問題が泥沼化するのか?

職場の生産性を下げるハラスメントの予防策

人事・労務・採用

2018.06.06

野崎大輔(日本労働教育総合研究所 所長 グラウンドワーク・パートナーズ株式会社 代表取締役)

なぜハラスメント問題が泥沼化するのか?

連日にわたって日大アメフト反則タックル問題がニュースで報じられています。
この問題は、5月6日に行われた日本大学と関西学院大学のアメリカンフットボールの定期戦で、日本大学の選手が、関西学院大学の選手に対して反則行為にあたる激しいタックルをしたことが発端となり大きな波紋を広げました。
監督、学長、広報、選手がそれぞれ記者会見を開きましたが、選手の会見は最も評価され、大学側の会見には非難が相次ぎ、この問題は長引きそうです。
今回の問題は、監督のハラスメントの要素もあることから企業がハラスメントの対応でこのような泥沼状態にならないためにどうしたらいいかということをお伝えしていきます。


泥沼化した先に待ち受けているモノ

 日大アメフト反則タックル問題は、組織内の忖度、パワハラ、対応の不誠実などが合わさった事例です。今回の一番の争点は、監督から反則行為の指示があったのかどうかという点です。調査の結果から指示があったものと見られ、監督とコーチには処罰が下されました。会見を行っても監督や大学側は頑なに指示はしていないという主旨でかつ具体的な回答はなされませんでした。そのため関西学院大学側は納得ができず、しかるべき措置をとることを検討しているという状況になっています。
 第三者としてこの問題について客観的に見ると多くの人はこう思うはずです。

  罪を認めて早く謝ればいいのに・・・

やったことを認めて早く謝れば早期に解決し、ここまで醜聞をさらけ出すことはなかったはずです。こうしたことはハラスメントでも起こりうるケースです。
私は過去にセクハラで加害者が認めなかったという事例を対応したことがあります。
女性社員から会社に相談があり、いろいろ調べていくと証拠が出揃い、完全なセクハラと認定し、上司である加害者を呼びました。
「心当たりがあるか?」と聞いても無いと言うし、「こういう行為はセクハラになるんですよ。」と説明しても

「これがセクハラになるんですか?私はそんなつもりでやったのではありません。
 言いがかりです。」

と逆ギレしてくる始末。この様子を見た同席していた役員が面談終了時に一言

「あいつはダメだな・・・・」

と漏らしました。
その後、当該社員は「自分は会社から酷い扱いを受けている」と他の社員に言い回っていたそうです。これを聞いた他の社員も呆れて距離を置くようになり、会社に居づらくなって辞めていきました。自分の非を認めて謝っていれば会社を辞めずにすんだのではないかと思います。
誠実に対応すれば早期に解決できることが多いのですが、泥沼化すると時間と労力がかかる上に加害者には重い処罰が待ち受けています。そして一番のダメージは信頼を損ねることです。

泥沼化しないための3つの視点

日大反則タックル問題に話を戻すと泥沼化した原因は、次の3点です。

・対応の遅さ
・真実の不明瞭
・誠実さの欠如

これはハラスメント問題が泥沼化する時と共通しています。
対応の遅さですが、全てが後手に回っている感があります。
問題が起きた時の基本は迅速な対応です。遅くなればなるほど相手の感情を逆なでしてしまうことになり、そのフォローなど余計な労力がかかります。
真実の不明瞭は、事実を明らかにしない、かばう、都合が悪いことは言わないといった行為をすることです。日大の監督とコーチの会見、学長の会見は具体的なことが分からず、曖昧にされた感があったことから批判が集中しました。
「QBを潰せとは言ったが、けがをさせるという目的ではなかった」というスタンスは変えず、選手との意思の疎通に乖離があったということを言っていましたが、客観的に見てつじつまが合わないことが多いという点で世間ではこれは真実ではないと思っている人が多かったと思います。一方で選手の記者会見は具体性がありました。
選手の会見を見習えという意見も出ていたくらい、大学側の会見は酷かったのです。
ハラスメントの現場の場合だとこのようになります。


会社:
「まぁ今回は調査したけれども、どうやらSさんは悪気がなかったようだし、反省もしているようだから許してやってくれませんか。SさんとHさんの感覚というか、物事の捉え方に乖離があって誤解を招いたのではないかと思います。あなたも問題を長引かせたくないでしょう。これからは気をつけるように注意はしましたので。」

Hさん:
「Sさんは認めていないということですか?私は今までの経緯を全部お話ししましたし、どこに乖離があるのか教えて下さい。このままでは納得いきません。」

会社の本音:(本人には伝えないが・・)
「ホント面倒くさいやつだな。とりあえず時間が経てばこの問題も終わるだろうから対応している感は出してのらりくらりすればいいか。」

       
こういうことをやっていると相手からすると誠実さのかけらも感じなくなるので炎上するのです。
誠実な対応という意味では、日大の監督は関西学院(かんせいがくいん)をかんさいがくいんと言ったり、謝罪の場でピンクのネクタイをしていたりと細かいところで信頼を損ねる行為をしていました。相手が「本当に悪いと思っているのか?」と思うのは当然です。
残念ながら今までの日大側の対応を見ていると不誠実の印象を世間に与えてしまいました。
問題を泥沼化させずに早期に解決するには、逆のことをやればいいのです。

・対応の遅さ   ⇒ 迅速な対応
・真実の不明瞭  ⇒ 真実の究明
・誠実さの欠如  ⇒ 誠実に向き合う

言葉で言うのは簡単ですが、実際に問題に直面するとなかなかこのようにできないのが難しいところです。問題が生じた時にはこの3点を思い出して対応してもらえば迅速な解決に向かうことができると思います。

講師紹介

野崎大輔(日本労働教育総合研究所 所長 グラウンドワーク・パートナーズ株式会社 代表取締役)

上場企業の人事部でメンタルヘルス対策、問題社員対応などの労働問題の解決に従事した後に社労士事務所を開業。労働紛争予防解決のスペシャリストとして300件以上の問題社員対応、あっせん、組合対応等の労働問題を解決し、関与した顧問先については労働問題がほぼ発生しなくなる。 労働問題を発生させ...>もっと見る

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