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人事・労務・採用

2018.05.02

第5回 ハラスメントが起きない職場の共通点とは

職場の生産性を下げるハラスメントの予防策

ハラスメントが起きず、安定的に成長していく「自浄する組織」とは

 女子レスリングでのパワハラ、財務省事務次官のセクハラとハラスメントのニュースが連続して出ています。世の中でハラスメントの認識が高まっていることが読みとれますので企業も注意していく必要があります。
就業規則を整備したり、ハラスメント研修を実施しているにもかかわらず、社内でパワハラやセクハラが起きている会社がある一方で、特に何もやっていないのにハラスメントが
起きない会社があります。この違いは何かというと組織風土の良し悪しにあります。
今回は問題が起きない「自浄する組織」についてお伝えしていきます。

自浄する組織と濁る組織

 第1回目でお伝えしたようにハラスメントに限らず、労働問題は単に法律に違反しているからという理由だけで起きるのではありません。
ハラスメントが起きる職場は、問題が起きていても気づかない、もしくは見て見ぬふりをしているというリスク不感症状態になっていることが多いです。問題が起きていることが徐々に常態化してくることから「濁る組織」といいます。
職場におけるハラスメント問題が起きる要因は個人と組織という2つの視点があります。
個人はそれぞれの認識の違いからハラスメント行為をしてしまうということです。
組織はハラスメントが起きていても見過ごされていたり、起きやすい環境であるということです。逆にハラスメントが起きない職場は、問題が起きたらすぐに解決するように動きます。そして同じ問題が起きないように予防策も講じます。
このように組織内部の課題を自分達で解決できる状態の組織を「自浄する組織」といいます。自浄する組織の特徴は集約すると以下の3点となります。

①職場でのトラブルが起きにくくなる。
②社員の定着率が良く、主体的で前向きな社員が多い。
③業績が安定して成長している。

 なぜこのようになるかということを解説していきます。
「①職場のトラブルが起きにくくなる」というのは、先に説明したように自分達で予防策を講じ、問題が起きても解決していくので起きにくくなっていきます。

「②社員の定着率が良く、主体的で前向きな社員が多い」というのは、一言でいうと働きやすい職場になるからです。自浄する組織は、職場の課題を自分達で解決していくため、職場の環境が良くなっていきます。職場環境が良くなれば働きやすくなりますし、辞める理由がなくなります。そして自分達で職場の課題を解決するというプロセスで社員が成長していきます。考えて実行することによって自律性が育まれていくのです。


「③業績が安定して成長している」というのは、社員が定着することによって社員の質が高くなり、業績に貢献する社員が増えてくるからです。多くの会社は社長が孤軍奮闘して自分が現場に立って経営をしています。しかし自浄する組織においては、社長が現場に出なくても回るようになります。実際にB社では、管理職層が育ってきたため、彼らが現場をマネジメントすることによって社長が現場の仕事をしなくても売上が順調に伸びていき、社員数も増えています。

 このように自浄する組織は、問題とは無縁の良い組織になる一方で、濁る組織は逆をたどり衰退していきます。
あらゆる問題を防ぐために社内規程の整備や研修の実施は必要なことではありますが、表層的なことであり、組織風土を変えていかないと本質的な解決にはつながりません。

 

組織風土を醸成する3つの要素

 組織風土は人間の感情、職場での人間関係、個人の価値観の3つが絡み合ってできていきます。この3つの点について詳しく解説していきます。

①関係性

職場の人間関係が良好なほうが問題は起きにくい。職場における人間関係とは、上司と部下、先輩と後輩といった縦の関係と同僚間の横の関係です。
人間関係を良好にするといっても、馴れ合うことや仲良しクラブになることではありません。良いことも悪いことも本音で話せるかどうかということです。そのためには職場内で信頼関係が築けているかどうかが重要となります。

②価値観

ここでいう価値観とは、仕事をするに当たっての考え方をいいます。人によって物事の考え方や基準が異なるのは当たり前で仕方のないことです。価値観がバラバラだから、まとまらないしトラブルが発生します。そこで価値観を共有する必要が出てきます。
仕事をする上でどのような意識で取り組むか、どのような行動が望まれるかといった点を明確にして共有することが大事です。

③感情

人間は感情の生き物です。理屈や正論は分かっていても、感情の影響が大きく、それによって行動が変わってきます。
ネガティブな感情を持つと些細なことでも会社に不満を持ちやすく、トラブルが起きやすくなります。職場において社員の関係性が良くなり、価値観が共有され、浸透すると働きやすい環境になるため、メンバーの感情もポジティブになってきます。ポジティブな感情の人が増えると互いの関係性も良くなり、組織風土も改善されます。


良い組織風土を醸成するために最初にやるべき具体策

 先ほどのB社は動物病院です。仕事は楽ではありませんし、院長は人格が素晴らしい方ですが仕事に対しては厳しく、できていない点があればスタッフに厳しく指導します。
動物病院業界はスタッフの離職やハラスメントなどの職場のトラブルが多いですが、B社は自浄する組織に成長しているためこうしたこととは無縁です。
最初にやったことは、院長がどのような病院にしたいかを明確にしたということです。
「ホスピタリティを高めて飼い主様から信頼される病院、そしてスタッフが働きやすい病院にする」という想いを繰り返しスタッフに伝えていきました。
 スタッフには院長の想いを浸透させる一環として院長の想いをふまえた上で行動規範となるクレドを自分達で作成し、浸透させるためにどうするかまで考えさせていきました。
やがて毎月のミーティングで職場の課題を挙げ、解決するにはどうするかということを自分達で考え、実行していくというPDCAを回せるようになり、自浄する組織へと成長していきました。実は第1回で出ていた宴会での裸でカラオケがハラスメントにならない会社はこの動物病院です。
 私が懸念しているのは、社会全体が過敏になっているということです。
少し厳しく注意するとパワハラ扱いされ、注意しなくなる・できなくなる管理職が増えています。これは逆に良くないというのは誰もが感じていることだと思いますが、どうすれば良いか分からずにいるという状況です。
今までお伝えしたことは原理原則であり、基本的なことではありますが、これを知って実行するだけでも効果はあります。
理想としては自浄する組織になり、社員がイキイキと働き、会社が成長していくことです。
私はこうした会社が世に増やしていくべく、日々活動しています。

講師紹介

野崎大輔(日本労働教育総合研究所 所長 グラウンドワーク・パートナーズ株式会社 代表取締役)

上場企業の人事部でメンタルヘルス対策、問題社員対応などの労働問題の解決に従事した後に社労士事務所を開業。労働紛争予防解決のスペシャリストとして300件以上の問題社員対応、あっせん、組合対応等の労働問題を解決し、関与した顧問先については労働問題がほぼ発生しなくなる。 労働問題を発生させ...>もっと見る

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