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第13号 「米国での業態視察のポイント」

第13号 「米国での業態視察のポイント」

  日本でテーブルサービスを経営するみなさまから、米国のテーブルサービス・レストラン
カジュアルダイニング」、「カジュアルプラス」を視察して新しいヒントを得たいというご要望が増えてきた。
  そこで今回から2回に分けて、ご視察時のポイントを整理し、カジュアルプラスの輪郭化(明確化)を試みたい。

 

  まず、筆者が考える1番目のポイントは、「カジュアルダイニング」と「カジュアルプラス」は、
“別のビジネス”“別の業態”という認識をもって訪問することではないかと思う。
  これら両業態は、一緒くたに語られることも多いため、何がどのように違うのかをまずご説明したい。

 


【カジュアルダイニングとの比較】


  「カジュアルプラス(アップスケール型カジュアルダイニング)」という業態概念は、今のところ、専門家の間でも、
広く認知されているわけではない。
  例えば、専門誌のひとつCSG(※チェーンストアガイド)においては、ザ・チーズケーキ・ファクトリー、
P.F.チャンズともに、「カジュアルダイニング」と表記されている。
  では、なぜ、筆者は普通名詞化されていない「カジュアルプラス」という言葉を積極的に使うかというと、
第10号でも触れた通り、米国フードサービス業のカジュアルダイニング有力企業・上級副社長(現社長)が
「カジュアルプラス」という表現を会話の中で何度も繰り返しては敵視しているのを聞き、“チェーンレストランの切実な
運営者たちは分けて考えているのだ”と実感したことがひとつ。

  また、自分なりにビジネスの仕組みを検証した結果、両業態の違いは明らかだと確信を深めたからだ。


以下、その違いを表に沿ってご説明してみたい。


  【表1】は、カジュアルダイニングとカジュアルプラスからそれぞれトップブランドを選んで比較したものである。
  カジュアルダイニングからは「アップルビーズ・ネーバーフード・グリル&バー」、カジュアルプラスからは
ザ・チーズケーキ・ファクトリー」を抽出 (【表1】の1.および2.)。


※以下、アップルビーズ・ネーバーフード・グリル&バーは「アップルビーズ」。
ザ・チーズケーキ・ファクトリーは「チーズケーキ」と呼称。


【表1】:FIT資料より

 

1.

 

業態

 

カジュアルダイニング

 

カジュアルプラス

 

2.

 

店名

 

 

Applebee's Neighborhood Grill and Bar

(アップルビーズ・ネーバーフード・グリル&バー

 

The Cheesecake Factory


(ザ・チーズケーキ・ファクトリー)

 

3.

 

業種(メニュー)

 

アメリカン

 

アメリカン

 

4.

 

創業年度

 

1980年

 

1978年

 

5.

 

店舗数

 

1804店(2005年12月)

 

103店(2005年12月)

 

6.

 

創業地

 

ジョージア州アトランタ

 

カリフォルニア州ロサンゼルス

 

7.

 

料理提供方法

 

外製化

 

内製化

 

8.

 

客単価

 

10.50ドル

 

16.60ドル

 

9.

 

1店当りの年商(ドル)

 

246万8,000ドル

 

1,081万2,500ドル

 

10.

 

1店当りの年商(円)
※1ドル=120円換算

 

2億9,600万円

 

12億9,800万円

 

11.

 

目標店舗数

 

3,000店

 

200店

両店を比較してみたい。


(【表1】の3.) 業種:
  まずは業種。これはいずれもアメリカン。「何を売るか」は同じである。料理カテゴリーが文字通り
アメリカンなものから、アジアン風、イタリアン風まで、「何でもあり」という意味になる。
従って、「用途」は「広い」。店数が狙えるという意味だ。

(【表1】の4.) 創業年度:
  続いて創業年度。'80年と'78年。スタートは2年違い。今から見ればほぼ同時期と捉えてよいだろう。


・・・・・では、結果はどうか。


(【表1】の5.) 店舗数
  両店とも店数が取れる業種でありながら、アップルビーズ1804店。チーズケーキ103店。年間出店数(平均)を
割り出すと、アップルビーズ72.16店。チーズケーキ3.82店となる。
  業種は同じでありながら、展開数がこんなに違うのはなぜだろう。この出店スピードの差は何が理由だろうか?
 

答えは、戦略(目的と方法)が違うからだ。
(6).(7).(8).を見ながら、背景も踏まえ考察を進めよう。

 

アップルビーズ・ネーバーフード・グリル&バー  http://www.applebees.com/  
 


  アップルビーズは、地方都市・アトランタで創業。当初は、店名が示す通り
“ネーバーフード =ご近所のレストラン” を標榜。小商圏フォーマットとしてデビューした。
  当たり前だが、飲食ビジネスを小商圏で成り立たせる条件は、地域の生活者に高頻度で店を利用してもらうことだ。
そこで、ひとりのお客が高頻度で来店しくれるような仕組みが必要となる。


  その仕組とは、
    1.客単価を低く設定する
    
(=安くすれば店に通って来られる回数が増える)
    2.メニューカテゴリーを増やす
     
(=メニューが豊富であれば、色んな動機と用途に対応できる。
        高頻度で来店しても飽きない)


のふたつだ。小商圏の場合は出店余地が大きい。立地が取れる。
  その後、何度かの転売を経て、同店は出店スピードを上げるため店舗の標準化を選択。料理提供方法は
「外製化」へシフトさせていった。動線設計やポスレジにも工夫を加えるなど全体最適化された業態戦略を武器に、
今後3000店までの出店を計画している。

ザ・チーズケーキ・ファクトリー http://www.thecheesecakefactory.com/ 


  一方、チーズケーキは、大都市・ロサンゼルス(ビバリーヒルズ)で創業。
最初から商圏人口に恵まれた立地でデビューした。加えて、株式公開企業ながら、創業者がCEOとして現役で活躍する
企業である。そのため、創業者の価値観が今も強く店作りに反映されており、何よりもまず “かっこいい店” を作る。
  かっこいい店は概ね金がかかる。そして、差別化を図るため、料理提供方法は店舗スクラッチ(=内製化)に
しているためマンパワーが要る。高コストということだ。つまり、大商圏型。立地は多くない。同店は高いブランド力を
武器に、今後200店迄の出店を計画している。
 

以上を、再整理する。


  カジュアルダイニングは立地が多く、カジュアルプラスは少ない。
メニューカテゴリーが同じ両店にて、店舗数を分けている要素があるとしたら、それは「客単価」だ。「客単価」は、
顧客層の大きさと反比例する
。実際、アップルビーズの$10.50に対し、チーズケーキは$16.60と、1.58倍の差が
見られる。


  結果、客単の低いアップルビーズは現在1804店、高いチーズケーキは103店であり、最終的な目標店舗数も、
アップルビーズ3000店に対し、チーズケーキ200店。また、1店あたりの年商は、アップルビーズが約3億円なのに
対し、チーズケーキは約13億円と、4倍以上の開きがある。

  ざっと見ただけでも、これらを同じ業態として括る方が、無理があるのではないだろうか。


ひとことで簡単にまとめてしまうと、
  『カジュアルダイニングは、4ケタ(1000店)を狙える業態』
  『カジュアルプラスは、大量出店は望めないが、1店年商が高い業態』といえよう。

  最後に、両店の企業価値を表す物指しの1つ「時価総額」を比べてみると・・・、

    アップルビーズ・インターナショナル社

         =時価総額 17億6,000万ドル(約2,112億円)

    (傘下ブランド:アップルビーズ・ネーバーフード・グリル&バー)
 

 

    チーズケーキファクトリー社  

         =時価総額 27億7,000万ドル(約3,324億円)

   (傘下:ザ・チーズケーキ・ファクトリー、グランドラックス・カフェ)
 


  両社はともに優良企業でありながら、「生きかた」が違うといえるのではないだろうか。

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経営コラムニスト紹介

Food Information Technology フードビジネスコンサルタント 山本洋三氏

山本洋三氏
Food Information Technology
フードビジネス
コンサルタント

米国の成功法則を、どうすれば日本で横展開できるのか…。

独自の『業態ワンボイス(ひとこと集約)』論コンサルティングの応用で、
米国のビジネスモデルをアレンジ。無理のない方式で日本企業への導入に
成功している注目のコンサルタント。


常に“まず訪ねる、まず観る、まず触れる”の現場主義を貫きながら、
「業態論」と「ブランドマーケティング論」の理論的側面からの考察をも併せて、
成功要因とリスク回避の方策を分析。
食品メーカーや大手料飲サービスFCをクライアントに有し、社長直属の
“知恵袋”としての情報提供や、年2~3度の帰国に合わせた
「流行・定点観測セミナー」の開催など、日米をフィールドに活躍中。


1957年兵庫県生まれ。79年、京都外国語大学英米語学科卒業後、渡米。
ロサンゼルス地区にてレストランに勤務。
その間、ハリウッド(映画・音楽・テレビなど)の授与式や
オープニング式典等のケータリング・演出を数多く担当する。


97年、その手腕を請われて流通コーディネーターに転身。
00年、フードサービス専門コンサルタントとしてMDPアソシエーツ
(カリフォルニア州モントレーパーク)に参画・独立。
01年、『業態ワンボイス』論コンサルティングをさらに拡げるべく、
フード・インフォメーション・テクノロジー
(FIT社、アリゾナ州スコッツデール)を設立、現在に至る。

山本氏が代表を務めるFIT社は、フード・ビジネスを中心としたコンサルの他、
「日本経営合理化協会アメリカ視察団」等、一般公募視察の現地コーディネート、
また、企業ごとにカスタマイズするオーダーメイド現地研修、米国企業との
交渉・業務提携の仲介業務などを専門支援する。

『アメリカ社会と外食マーケット論考』
(柴田書店「月刊食堂」2004年9月号~2005年2月号)
MOOK『NYデリ・カフェ、LAファストカジュアル』
(柴田書店)の構成・執筆協力、 『フードビズ』(株式会社エフビー、 15号より連載)
他、専門レポート等の執筆多数。

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