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第10号 「ザ・チーズケーキファクトリー」

第10号 「ザ・チーズケーキファクトリー」

【1】「カジュアルプラス」とは

 今から5~6年前。ファストカジュルの表記名を「クイックカジュアル」と「ファストカジュアル」の何れにするかの問題が、
米国フードサービス業の業界内でかまびすしく議論されていた。
  同じ頃、主要チェーン店の間で、もうひとつの成長業態が新しい脅威として静かな注目を浴びはじめていた。

  普及カジュアルダイニングチェーンのQSCをより高品質化したこの業態。
客単価は15ドル以上24ドル99セント以下に分布。
業態名は、「アップスケール・カジュアル・ダイニング」と呼ばれることが多かったように記憶している。
  中でも、代表ブランドの「ザ・チーズケーキファクトリー」と「P.F.チャンズ・チャイナビストロ」は、
'90年代後半から出店を加速。単店売上高では主要チェーン店の数倍に上る数字を記録するなど、外食大手の
経営者にとっては、ファストカジュアルの台頭と並び、まさに「前門の虎、後門の狼」といった存在感の高まりをみせていた。

  当時、私は業界に倣いこの業態名をそのまま「アップスケール・カジュアル・ダイニング」と日本の顧客に伝えていた。
  しかし、残念ながら、この呼び名は中々日本人には定着しにくかった。
「長すぎて言いにくい」上、「業態イメージ」が湧きづらいようなのだ。

  そこで、何とか日本の方々にピンとくる呼び名はないかと思いをめぐらせていたところ、たまたま面会した
米国フードサービス業の有力企業・上級副社長が同業態のことを盛んにライバル視。何度も何度も、
「カジュアルプラス」と表現するのを耳にした。「これだ!」と早速「カジュアルプラス」の表現を使ってみたところ、
以前とは比較できないほどの理解度をもって、日本の外食マン(ウーマン)たちに浸透しはじめたのである。
 

【1】 カジュアルプラスの「業態ポジショニング」

  カジュアルプラスは、昨年の当コラム第2号~8号にかけてご紹介したファストカジュアルと顧客ターゲットが重なる。

  「手づくり感」と「内外装の新奇性」に対価を払う顧客層だ。 ※表(1)参照。
 

《表(1)》

  「教育水準・収入・住まいの地域環境」が高く、外食行動も旺盛。普及チェーンには飽きた富裕層が
「ファミレス替わり」に利用する業態である。


  ファインダイニング同様のメニュー構成。新奇性の高い空間。若々しくフレンドリーなサービス。料理はデザートを
除きすべて店舗スクラッチ。ファインダイニングの業態品質をカジュアル化した「カジュアルプラス」は、他とは少し
違うプラスアルファーを期待する顧客層の欲求をうまく業態化。大手チェーン各社から強く警戒されると同時に、
ベンチマーキングの対象になる業態である。

 


【3】カジュアルプラスのトップブランド 《 ザ・チーズケーキファクトリー 》

  単店年商$1081万2500ドル(約12億9800万円※NRN推計)。大商圏型レストランとして
国内主要メトロポリタン地区に展開される同店は、今年開店28年を迎える。


  出店の基本戦略は1都市1店。商圏を半径8km、25万人に設定。アパートの多い、中~高所得者層が居住する
地域に求め、持ち家の家族客より、可処分時間と自由に使えるお金の多い独身/カップル客を顧客ターゲットに据える。

  費用対効果偏重の相似形の店作りはしない。既存店は151~484坪で、特徴ある天井模様とラスベガスを
彷彿させる豪華な雰囲気が上質なブランドイメージを訴求する。

  メニューブックは20ページ。アイテム数は200種類を超える。料理はすべて店舗スクラッチ。
(40種類に上る店名のチーズケーキだけは、1996年設立の最新鋭の自社工場で作られる。
他のレストラン、小売、卸しへも外販されている)。メニュー改編は年2回。平均客単価16ドル60セント。

  店舗数は103店(2005年12月時点)、全店直営。最大200店までの多店化を計画。1992年9月、ナスダック上場。
「店こそ広報媒体の中核」と捉え、パブリシティーには協力するが、広告費は殆んど使わない。


  また、予約は取らない。よって、各地の店舗では週末夜の平均待ち時間が1~2時間になることも珍しくない。

  1999年、ラスベガスでベネチアンホテル内の優良立地へ出店チャンスを得る。
しかし、僅か数百メートルの距離に既存店ザー・チーズケーキファクトリーが存在したため、
カニバリ(自社内競合)の予防として開発された新コンセプトが「グランド・ラックス・カフェ」である。

  24時間営業500席の巨艦店・グランド・ラックス・カフェは、初年度1800万ドル(21億6000万円)の売上を記録。
アップスケール化した同業態の客単は17ドル50セント。メニューアイテム数は150。「カジュアルな世界料理」を
標榜するグランド・ラックス・カフェの店舗数は5店(2005年12月時点)。

  ザ・チーズケーキファクトリーの飲食業らしからぬ店名の源流は、1940年代末、ミシガン州デトロイトで
オーバートン夫妻が始めた小さなチーズケーキ店まで遡る。


  夫妻は子育てに専心するため一旦店を諦めたが、自宅地下のキッチンでデザート作成を継続。
地場レストランへ商品を販売した。やがて、子供たちは成長し、50代を迎えた夫妻は新天地カリフォルニアへ移住。
1972年、ロサンゼルスで卸しのパパ・ママ・ベーカリー、19.6坪の『ザ・チーズケーキファクトリー』が誕生した。

  家業はロサンゼルスでも大繁盛。1978年2月25日、息子のデービット・オーバートン氏(現CEO)に伝承された
チーズケーキへの情熱DNAは、ザ・チーズケーキファクトリー・レストランとして結実。四半世紀を経て、
大手各社が最も意識する、カジュアルプラスのトップブランドに成長したのである。

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経営コラムニスト紹介

Food Information Technology フードビジネスコンサルタント 山本洋三氏

山本洋三氏
Food Information Technology
フードビジネス
コンサルタント

米国の成功法則を、どうすれば日本で横展開できるのか…。

独自の『業態ワンボイス(ひとこと集約)』論コンサルティングの応用で、
米国のビジネスモデルをアレンジ。無理のない方式で日本企業への導入に
成功している注目のコンサルタント。


常に“まず訪ねる、まず観る、まず触れる”の現場主義を貫きながら、
「業態論」と「ブランドマーケティング論」の理論的側面からの考察をも併せて、
成功要因とリスク回避の方策を分析。
食品メーカーや大手料飲サービスFCをクライアントに有し、社長直属の
“知恵袋”としての情報提供や、年2~3度の帰国に合わせた
「流行・定点観測セミナー」の開催など、日米をフィールドに活躍中。


1957年兵庫県生まれ。79年、京都外国語大学英米語学科卒業後、渡米。
ロサンゼルス地区にてレストランに勤務。
その間、ハリウッド(映画・音楽・テレビなど)の授与式や
オープニング式典等のケータリング・演出を数多く担当する。


97年、その手腕を請われて流通コーディネーターに転身。
00年、フードサービス専門コンサルタントとしてMDPアソシエーツ
(カリフォルニア州モントレーパーク)に参画・独立。
01年、『業態ワンボイス』論コンサルティングをさらに拡げるべく、
フード・インフォメーション・テクノロジー
(FIT社、アリゾナ州スコッツデール)を設立、現在に至る。

山本氏が代表を務めるFIT社は、フード・ビジネスを中心としたコンサルの他、
「日本経営合理化協会アメリカ視察団」等、一般公募視察の現地コーディネート、
また、企業ごとにカスタマイズするオーダーメイド現地研修、米国企業との
交渉・業務提携の仲介業務などを専門支援する。

『アメリカ社会と外食マーケット論考』
(柴田書店「月刊食堂」2004年9月号~2005年2月号)
MOOK『NYデリ・カフェ、LAファストカジュアル』
(柴田書店)の構成・執筆協力、 『フードビズ』(株式会社エフビー、 15号より連載)
他、専門レポート等の執筆多数。

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