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第6号 「ペイウェイ・アジアンダイナー」

第6号 「ペイウェイ・アジアンダイナー」

1.ファストカジュアル速報~2004会計年度より~

  ファストカジュアルの業態市場規模は、昨2004年度、推計200億ドル(約2兆4000億円)に達した。
成長率は前年比11%増。他業態の平均値が5%増となっていることからも成長スピードの速さがうかがい知れる。
  現在はフードサービス業全体の4.2%に過ぎないニッチ業態ながら、
2015年には1000億ドル(約12兆円)市場に成長するとの試算もある。

  ファストカジュアルの業種構成を売上規模の順に並べると
     (1)サンドイッチ/デリ、(2)メキシカン、(3)チキン、(4)イタリアン、
     (5)スープ/サラダ、(6)アジアン    ......となる。
  トップブランドの「パネラブレッド」は単体ブランドの売上高10億4000万ドル(約1248億円)を記録。
「10億ドル・ブランド」の仲間入りを果たした。フードサービス業では33番目の10億ドル・ブランド誕生となる。
 

2.伝承された高付加価値DNA

  今回から数回にわたりファストカジュアルの代表的なブランドをご紹介する。
  米国では、ファスカジュアルの成功事例のほとんどは、高価格帯に分類される。
換言すると、手づくり感溢れる健康的な食事にお金を使える人のための業態であり、
カジュアルダイニング、カジュアルプラス、ファインダイニングの顧客層を対象としている。
  そこで、第5回でも取り上げたペイウェイ・アジアンダイナーを俎上にのせたい。

 ペイウェイ・アジアンダイナーは、経営母体を同じくする上位業態のカジュアルプラス
「P.F.チャンズ・チャイナビストロ」と同品質の料理を提供する。
 お客は立地・空間・提供方法・サービスをトレードオフすればビストロ(P.F.チャンズ)と同品質の料理を安く食べられる。
  つまり、美味しいものを食べるためにビストロとの格差を我慢すれば「価値を得られる仕組み」になっているのだ。
    ※以下、同社社員の符丁に則し、P.F.チャンズ・チャイナ・ビストロを「ビストロ」。
      ペイウェイ・アジアンダイナーは「ペイウェイ」と表記する
 

では、さっそく「ビストロ」と「ペイウェイ」の簡単な概略からはじめよう。
 

■P.F.チャンズ・チャイナビストロ(カジュアルプラス)

  4万店余りの生業店が幅を効かす中華料理の分野に、「ビストロ」というコンセプトを導入。
同分野では前例のないアップスケールなカジュアルダイニングチェーン網を全米主要都市に構築した。
  大衆的なエスニック料理をブランド化した唯一の存在として業界内外から高い評価を獲得。
株価も常に外食でトップレベルの位置にある。
  成功の要諦は、本格的な中華料理を米国人ビジネスマンが米国化したこと。代表メニューの
レタスラップ(中華のアンチョンソン)は、あまりの大ヒットで、競合各店のメニューに載るようになったほどである。

  また、米国内のアジア料理店で頻繁に使用されるMSG(グルタミン酸ソーダ)は排除。
健康志向に対応した安全の訴求も怠らない。
  最大150~200店までの多店化を計画。創業からわずか5年目の1998年にIPOを果たしている。
    ※FDA(食品医薬品局)の発表によりアメリカ人はMSGを好まない傾向にある。
      またMSGに対してアレルギー体質の生活者も多いことがMSGを好まない原因だ。

   

 

■ペイウェイ・アジアンダイナー(ファストカジュアル)

  ウォク(中華鍋)から巻き上がる直火。躍動感溢れるダイナミックなオープンキッチンが印象的な
ファストカジュアルの「プラチナ標準」。経営母体のP.F.チャンズ・チャイナビストロ社が3年の開発期間をかけ自社の
優良遺伝子を集積。高品質×利便性を実現した。
  設計コンセプトは、外食行動のライフスタイル化にともなう消費者ジレンマ(時間と品質のトレードオフ)の解決。

  業態条件は、
    (1)P.F.チャンズのブランドを損なわず
    (2)小商圏化して
    (3)テイクアウト機能を付加する。
  メニュー構成は、中華、韓国、日本、タイ、ベトナム各国の料理を米国化したアジアンフード。
テイクアウトを重点化するため専用の出入り口とレジが設けられた。
  テイクアウト売上構成比率は40%。顧客の平均滞留時間30分。FLは、フードコスト28.9%。人件費率33.4%。
 

 

3.引き算式のファストカジュアル最適化

  下記【表1】はファストカジュアルを明確化するために、立地・空間・提供方法・サービスの4分野をブレークダウン。
ビストロ(カジュアルプラス)とペイウェイ(ファストカジュアル)の業態要素を項目立てて比較したものだ。
 

【表1】:FIT資料より

(数字:R&I誌2005年7月号。NRN誌6月27日号。CSG2005・CHAIN Restaurant OPERATORS各誌から抽出)。

 

1.

 

店名

 

P.F. Chang's China Bistro

P.F.チャンズ・チャイナビストロ)

 

Pei Wei Asian Diner

(ペイウェイ・アジアンダイナー)

 

2.

 

経営母体

 

P.F.チャンズ・チャイナビストロ社

 

P.F.チャンズ・チャイナビストロ社

 

3.

 

業態

 

カジュアルプラス(アップスケール型カジュアルダイニング)

 

ファストカジュアル

 

4.

 

プロトタイプ

 

125坪~150坪。

 

72.8坪~106.4坪。

 

5.

 

創業

 

19937

 

20007

 

6.

 

1店当たりの
売上高

 

580万ドル(約69600万円)

 

220万ドル(約26400万円)

 

7.

 

アルコール
販売比率

 

20%

 

3%

 

8.

 

アルコール類

 

ビール、ワイン、リッカー

 

ビール、ワイン

 

9.

 

店舗数

 

125

 

71

 

10.

 

直営店舗数

 

125

 

71

 

11.

 

平均客単価

 

18ドル50セント(約2220円)

 

8ドル50セント(約1020円)

 

12.

 

メニュー
アイテム数

 

72アイテム

 

32アイテム

 

13.

 

立地

 

大商圏型S.C.(ショッピングセンター)

 

小商圏型ないし中商圏型S.C.(ショッピングセンター)

 

14.

 

提供方法

 

オープンキッチン、スクラッチ(手づくり)、チャイナ、シルバー、リネンクロス、etc

 

オープンキッチン、スクラッチ(手づくり)、プラスチック容器、ペーパーナプキン、フリードリンク、etc

 

15.

 

サービス

 

テーブルサービス

 

セミ・セルフサービス

 

16.

 

出店コスト

 

230万ドル+

 

75万ドル+

結論から述べると、共通要素は「オープンキッチン」と「手づくり」のみ。
このふたつの業態要素こそがビストロの高付加価値DNAとしてペイウェイに伝承されているのだ。

  その他の業態要素は、店名に集約された「ワンボイス」へ向け全てが設計されている。
  チャイナビストロは、料理の「専門性(中華料理)」と、ハイエンドな空間「ビストロ」を約束している。
業態要素は全般に「遠い・広い・多い・高い・」の高コスト型で括られる。
  一方、ペイウェイは店名に込めた狙い通り(Pei WeiはPay Wayをもじったもの)、テイクアウト比率が40%を超えた。
テイクアウトの消費者ニーズは何より時間とお金の節約だ。

  業態要素は「近い・狭い・少ない・低い」の低コスト型に納まる結果となっている。立地はより小さな商圏を設定。
店内空間も良質な賑わい感を上手く演出しているものの、ビストロと比べれば簡素に創られている。
提供方法は、コストを圧縮するため、容器・ポーションなど随所に工夫が見て取れる。


  ただし、ビストロの代表メニュー「レタスラップ(中華のアンチョンソン)」だけは、食材点数・ポーションともに
見た目・味の格差を感じさせない。
  お客は、慣れ親しんだ商品が同等ならば、他の料理もほとんど同じであるかのような幸せな錯覚をおこす
仕掛けとなっている。

  ペイウェイとは、上位ブランドのビストロと、業態要素を巧みにトレードオフしながら、引き算式に最適化された
フォーマットであるといえるだろう。

 

補足:

  ペイウェイは、元もとビストロの経営陣が、日本的なヌードルショップの業態開発を進めた結果、一旦諦めて
行き着いた業態である。当初の売上予測150万ドル~180万ドルを大きく上回り一見好調なペイウェイだが、
最近ではビストロとのカニバリ(自社内競合)現象も囁かれはじめた。
  2006年には日本食レストラン("タネコ・ジャパニーズ・タバーン")も投入予定のP.F.チャンズ・チャイナビストロ社。
更なる飛躍に向けペイウェイのフォーマットをどのように進化させてゆくのか、次の一手に注目が集まる。
 

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経営コラムニスト紹介

Food Information Technology フードビジネスコンサルタント 山本洋三氏

山本洋三氏
Food Information Technology
フードビジネス
コンサルタント

米国の成功法則を、どうすれば日本で横展開できるのか…。

独自の『業態ワンボイス(ひとこと集約)』論コンサルティングの応用で、
米国のビジネスモデルをアレンジ。無理のない方式で日本企業への導入に
成功している注目のコンサルタント。


常に“まず訪ねる、まず観る、まず触れる”の現場主義を貫きながら、
「業態論」と「ブランドマーケティング論」の理論的側面からの考察をも併せて、
成功要因とリスク回避の方策を分析。
食品メーカーや大手料飲サービスFCをクライアントに有し、社長直属の
“知恵袋”としての情報提供や、年2~3度の帰国に合わせた
「流行・定点観測セミナー」の開催など、日米をフィールドに活躍中。


1957年兵庫県生まれ。79年、京都外国語大学英米語学科卒業後、渡米。
ロサンゼルス地区にてレストランに勤務。
その間、ハリウッド(映画・音楽・テレビなど)の授与式や
オープニング式典等のケータリング・演出を数多く担当する。


97年、その手腕を請われて流通コーディネーターに転身。
00年、フードサービス専門コンサルタントとしてMDPアソシエーツ
(カリフォルニア州モントレーパーク)に参画・独立。
01年、『業態ワンボイス』論コンサルティングをさらに拡げるべく、
フード・インフォメーション・テクノロジー
(FIT社、アリゾナ州スコッツデール)を設立、現在に至る。

山本氏が代表を務めるFIT社は、フード・ビジネスを中心としたコンサルの他、
「日本経営合理化協会アメリカ視察団」等、一般公募視察の現地コーディネート、
また、企業ごとにカスタマイズするオーダーメイド現地研修、米国企業との
交渉・業務提携の仲介業務などを専門支援する。

『アメリカ社会と外食マーケット論考』
(柴田書店「月刊食堂」2004年9月号~2005年2月号)
MOOK『NYデリ・カフェ、LAファストカジュアル』
(柴田書店)の構成・執筆協力、 『フードビズ』(株式会社エフビー、 15号より連載)
他、専門レポート等の執筆多数。

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