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第4号 ミセス山本の 《注目業態》 辛口ウオッチング
「Fuddruckers(ファドラッカース、業態:ファストカジュアル)」

第4号 ミセス山本の 《注目業態》 辛口ウオッチング
「Fuddruckers(ファドラッカース、業態:ファストカジュアル)」


こんにちは、山本洋三です。


  日本からお見えになる、熱心な経営者・経営幹部の方々と、「食の業態視察」で西海岸と東海岸を何度も往来。
ようやく地元へ戻り、つかの間の夏休みと取材先の"ワンボイス"に取り掛かろうというところです。
  これからの8~9月は、プライベートも併せ日本からの訪問客の特に多い時期。
そんな理由もあってか、先月の"ひとくちコラム"で、ファストカジュアルの原型「ラ・マドレーヌ」の最近の様子を
ご紹介したところ、読者より多くの反響をちょうだいしました。

  そこで今月は、夏休み総力取材編として、もうひとつの原型と称される「ファドラッカース」を
特集させていただこうと思います。
  今回も引き続き、私のパートナーMrs.Yamamotoがご案内申し上げます。
「お客様視点」と「コンサルタント視点」の両方を切り口に、少々"辛口コラム"となっておりますが、是非、ご一読ください。 

 



~~ ミセス山本の"注目業態"ウオッチング~~
 

【Fuddruckers(ファドラッカース)】 http://www.fuddruckers.com/

"天才コンセプト・クリエーター"フィル・ロマーノ氏が立ち上げた、グルメ・ハンバーガーチェーン。


  店内は60年代の雰囲気(※1)。同様テーマの他店と比較すると独自性が高い。
天井は低く、カラフルなライトが点灯し、レトロな装飾品が並ぶ。また真ん中のブースが一段高くなっていたり、
低いテーブル・高いテーブルの配置が絶妙。段差、高低が効果的に用いられている。
  レイアウトも個性的で、ゲーム機が並んでいたり、意外な場所にクッキーとパンのデリケースが置かれていたり。
各スペースのサインはライトアップされ、縁日的な楽しい作り込みがなされている。


  また、入店するとすぐ横にビーフパティをさらしたブースがある。1/3lb、1/2lb、2/3lb、1lb(454g)の4種が並び、
どのような大きさか見ることが出来るのも、「ありそうで・なかった」試みではないだろうか。


  同店の特徴は大きく3つある。
 

  1. ビーフパティ、バンズ、野菜における素材訴求:ビーフはUSDAチョイスを使用。
    ブロックごと仕入れて店頭でひき肉にし、成型する。 バンズもスクラッチから焼きたてを提供。
    野菜は専用ステーションに並んでいる。

  2. 調理工程の可視化: すべての調理工程をオープンキッチンで見せている。

  3. 自分だけのオリジナルバーガーが作れる:コンディメント専用のステーションは広く、
    多種類の野菜・調味料が並んでいる。

  今日は、1/3lbのオリジナル・ファッドバーガー($5.35)と、リブアイステーキ($10.99)を注文してみた。
 


  およそ10分後、名前を呼ばれ、受け取りカウンターへ。
コンディメント専用のステーションで、野菜類(レタス、トマト、タマネギなど)と、
ソース類(ケチャップ、マスタード、マヨネーズ、ステーキソース、タバスコなど)を選んで、席へ。早速試食をしてみる。


 ・・・大変にがっかりさせられる。当然、全米でたった0.3%しかいない日本人のために作られた料理など、
米国に存在するはずはない。
  私が美味しいと思った時のほうがむしろ偶然で、結果的に日本人にも美味しい料理になっただけであろう。
ということを前提に、敢えて言えば。ハンバーガーのバンズは、またたくまにクシュクシュと水っぽくなって、
持っていられないほど。野菜から水分があふれ出して、チーズや肉の油分とのコンビネーションが最悪である。

  肉はパサパサとして野性味あふれる肉肉しい味。自慢のUSDAステーキは、まあまあ。
さすが、塊肉を仕入れ、店舗段階でミンチにし、成型していることが売りな店だけある。
元となっている肉の品質はいい。ただ焼き加減はイマイチ。
  さらに、つけあわせのシーザースサラダは、みるみる縮んで、ぐったりと小さくなってしまった。
素材の鮮度管理技術を持っていないのだろうか。
  (と、私の好みを書いてしまったが、同店の1店あたりの売上高は前年比1.19%増で推移。
もしかしたら、米国人がハンバーガーに求めるポイントは抑えているのかもしれない。ちなみにパサパサした。
 

  ひき肉(lean)は、健康志向にのってスーパーマーケットでも幅を効かせている。
わざとFatの少ないパサパサ ミートを使用していることは十分に考えられる。
更に、日本人が肉に求めるのは「柔らかさ」「ジューシーさ」一辺倒という気がするが、本場のアメリカ人は
肉を楽しむ引き出しが多く、肉への評価基準が全然違ったり することも付加しておく)。

 

  もう1点、どうしても書かずにいられないのは、クリンリネスの技術がないことだ。
  入店時点では、フィルロマーノ的な空間演出に感心していたものの、何かが違う。なんかヘンだ。
そう、なんかヘンなニオイが・・・。
 


  この店、はっきりいって、清潔感がない。清掃しつつ巡回している店員がいるというのに、方法が的外れなのであろう。
その上、そこはかとなく、トイレのニオイが。7月29日スコッツデール、曇・湿度40%。
このドライな地域で、このニオイは、よほど清掃ができていないとしか思えない。

  トイレだけではない。すべては、オープンキッチンがアダとなり、テーブルにも床にも、装飾品にも。
全体的に油がまわってしまっている。
  清掃技術のない人が、上級者フォーマットであるオープンキッチンをつくってはいけない。楽しさを追求するあまり、
クリンリネスを忘れた店。付加価値のために、基本機能を捨てた店となってしまっているように思う。

  いずれにせよ、レトロテーマでクリンリネスが行き届いていないと、ただの不潔な空間である。
「古き良さ」とは日々磨いてこそ今日的「オシャレ」として輝けるのだと思う。

  最後に、ファストカジュアル的観点から考えると。いわゆる現状話題となっているファストカジュアルとは
明らかに異なる点がある。客層だ(※2)。

  およそ、ジェネレーションX,Yがいない。オシャレな人がいない。
(例えば前回ご紹介したラ・マドレーヌは、知的でオシャレな女性で一杯であった)。


  今回訪問のファッドラッカースは、スコッツデール・ダウンタウンに立地。
観光地でもあり、近隣にはオフィス街もあり、ファストフードやファミレス~オシャレなファインダイニングまで様々な店が
並ぶ。また、多数の画廊があり、アーティスティックな人々も行き交っている。
数件先のスターバックスは、洗練されたビジネスマンやアーティストで一杯だ。

  そのような中で、ファッドラッカースへ来ているのは、高感度とは呼べない地元のファミリー客である。
  実は、山本洋三が、つい先週、LA近郊のシャーマンオークス地区(高感度消費者の居住区)で、ファッドラッカースへ
行ってきた。お客が入っていなかった、とのこと。(近隣他店、例えばチーズケーキファクトリーは満席だったようだ)。
  同店は、どうも、立地を間違えているのではないだろうか。少なくとも、オシャレな層の選択肢には入らない店といえる。

  フィルロマーノ氏の作品は常に大変話題になるだけあり、どの店も、細部に至るまでとっても濃い。


  結局、流行語大賞が未来の「死語」であるように、「斬新さ」「印象深さ」は「死語」になりやすいのだ。
率直に私の感想をいうと、2005年的には、田舎祭のような店である。

 いずれにせよ、誰が愛用者になろうとも、クリンリネスの技術だけは最低限持ったほうがよいだろう。
楽しいけど不潔なレストラン。ここまで本末転倒という言葉が似合うレストランもないのではないか。
  いつも率先して新しいアイディアを具現化するフィルロマーノ氏にケンカを売りたいわけではない。
しかし、優先順位を間違えると、基本機能がおろそかになる可能性さえあるという、レストランにおける
コンセプト開発が、まさにトレードオフであるということを感じざるを得ない店であるように思う。
 

  (※1) 訪問店は、最新プロトタイプではない。
  (※2) 私はマーケターであるため、業態とは「客層」だと考えている

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経営コラムニスト紹介

Food Information Technology フードビジネスコンサルタント 山本洋三氏

山本洋三氏
Food Information Technology
フードビジネス
コンサルタント

米国の成功法則を、どうすれば日本で横展開できるのか…。

独自の『業態ワンボイス(ひとこと集約)』論コンサルティングの応用で、
米国のビジネスモデルをアレンジ。無理のない方式で日本企業への導入に
成功している注目のコンサルタント。


常に“まず訪ねる、まず観る、まず触れる”の現場主義を貫きながら、
「業態論」と「ブランドマーケティング論」の理論的側面からの考察をも併せて、
成功要因とリスク回避の方策を分析。
食品メーカーや大手料飲サービスFCをクライアントに有し、社長直属の
“知恵袋”としての情報提供や、年2~3度の帰国に合わせた
「流行・定点観測セミナー」の開催など、日米をフィールドに活躍中。


1957年兵庫県生まれ。79年、京都外国語大学英米語学科卒業後、渡米。
ロサンゼルス地区にてレストランに勤務。
その間、ハリウッド(映画・音楽・テレビなど)の授与式や
オープニング式典等のケータリング・演出を数多く担当する。


97年、その手腕を請われて流通コーディネーターに転身。
00年、フードサービス専門コンサルタントとしてMDPアソシエーツ
(カリフォルニア州モントレーパーク)に参画・独立。
01年、『業態ワンボイス』論コンサルティングをさらに拡げるべく、
フード・インフォメーション・テクノロジー
(FIT社、アリゾナ州スコッツデール)を設立、現在に至る。

山本氏が代表を務めるFIT社は、フード・ビジネスを中心としたコンサルの他、
「日本経営合理化協会アメリカ視察団」等、一般公募視察の現地コーディネート、
また、企業ごとにカスタマイズするオーダーメイド現地研修、米国企業との
交渉・業務提携の仲介業務などを専門支援する。

『アメリカ社会と外食マーケット論考』
(柴田書店「月刊食堂」2004年9月号~2005年2月号)
MOOK『NYデリ・カフェ、LAファストカジュアル』
(柴田書店)の構成・執筆協力、 『フードビズ』(株式会社エフビー、 15号より連載)
他、専門レポート等の執筆多数。

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