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製造業

第237号 改革より改善

柿内幸夫─社長のための現場改善

 救命講習に参加しました。写真は私が心臓マッサージの訓練をしているところです。実際にやっていなければ、もし本番があった場合、絶対にできなかったなと思います。備えあれば憂いなしを実感しました。

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 さて、「ナゼ改善が必要か?」というテーマの中で、今回から最後の「経営を支えるから」についてお話しします。

 1. 世の中の変化は止まらないから。
 2. 工場の中に変えられないものはないから。
 3. 人を育てるから。
 4. 経営を支えるから。

 改善が大切ですという話をしていると、「この厳しい変化の時代に乾いた雑巾を絞るとかいう改善なんかいくらやったってダメですよ。製造業の人達は何かあるとカイゼンカイゼンって言うけど、それってもう昔の話ではないですか?やはりするべきことは改革、すなわちイノベーションでしょう!」と言われることがあります。

 果たして本当でしょうか?もちろん改革は大切なことであるのですが、では改善を止めて改革を始めましょうということができるのでしょうか?そんなことはできないと思います。改革は結果であって、その結果を出すためのプロセスは改善だと考えているからです。

 ちょっとだけ昔の話になりますが、NHKで「プロジェクトX」という番組がありました。私は大好きだったので毎回見ておりましたし、万が一見逃しても必ず再放送されるから大丈夫といった感じで視聴率もかなり高く、今でもDVDを売っていますからドル箱番組だったと言えると思います。

 しかし、「プロジェクトX」には有名な俳優さんや歌手の方が出たこともなく、画像も特別なものでなく、せいぜいコンピューターグラフィックスレベルでした。にもかかわらず、なぜそんなに人気があったのかというと、二つの理由があるように思います。

 一つは扱うプロジェクトのレベルが高いこと。新幹線や東京タワーの建設などは今なら別に驚くことではないかもしれませんが、50年も前の話です。

 そしてもう一つは、それらが簡単にできたかというととんでもない。何度も失敗を繰り返し、そのたびに新しい人が助けに来るけれど、それでもダメで…、「いったいこのプロジェクトはどうなるんだろう」と心配になるくらい、試行錯誤が繰り返されます。

 もちろん最後には必ず結果が出るのですが、その過程はすべて、とてつもなく厳しいものばかりでした。この二つが「プロジェクトX」に人気があった理由だと考えるのです。

 そして重要なことは、改善の積み重ねが結果として改革になるといった理由です。番組の中で一人がチョンチョンとやったら、結構簡単にできてしまいましたというものは一回もありませんでした。

 毎回、実にたくさんの人たちがそれぞれの役割を演じて一歩一歩結果に近づきます。諦めずに最後までやり遂げた勇気が視聴者に伝わるので、テレビの前で見ているだけでも共感して感動してしまいます。

 すなわち一つひとつのチャレンジは最初から大胆なものではなく、本当に一歩一歩の小さい歩みを繰り返すのです。これこそ改善であり、その結果が「プロジェクトX」という番組になるような大きな改革になったということです。

 さて、ここで一つ質問です。皆さんの会社に「プロジェクトX」はありますか?つまり、コンサルタントの私が聞いて、「エッ!そんなことできるんですか?」とびっくりしてしまうようなすごいテーマに、みんながチャレンジしているかどうかです。

 そして一回や二回の失敗でめげずに次々を新しい手を考えて挑戦し続けているかどうかです。誰でもができそうなレベルのテーマはダメです。ちょっとの失敗で諦めてしまってはダメです。

 厳しい時代に負けずに生き残り、勝ち進むためにはすべての会社に「プロジェクトX」が必要です。改善は経営を支えます。ぜひ皆さんで大きなテーマにチャレンジして、この厳しい変化の時代を乗り越えましょう。

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copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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