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製造業

第226号 後工程に改善のヒントあり

柿内幸夫─社長のための現場改善

 2月も半ばを過ぎ、受験のシーズン真っ盛りですね。私もホテルの朝食会場で学生服を着て緊張の面持ちの受験生たちをたくさん見かけます。
 45年も前のことではありますが、自分も受験の時に緊張していたことを思い出しました。風邪が流行り、雪が降る時期の受験は大変ですが、あの若い方たち全員が十分に自分の実力を発揮してくれるといいなあといつも思います。

  ●前文とも本文ともまったく関係ありませんが、私の子供の頃のあこがれの鉄人28号がこの頃いろいろなところで見られます。像もポスターもありますね。嬉しいです。必ず並んで記念写真を撮ります。

kaki226-1.jpg

 さて、今回も最強のモノづくりのレベル5についてお話しします。

 レベル0:ダンゴ生産

 レベル1:工程内の流れ

 レベル2:工程間の流れ

 レベル3:工場内の流れ

 レベル4:工場間の流れ

 レベル5:お客様への流れ

 レベル6:一気通貫の流れ

 赤字のところ、 レベル5は「お客様への流れ」です。分かり易い日本語ですから、誰も難しく思うことはないと思います。

 ましてや、普段から「お客様は神様です」とか、「後工程はお客様」という言葉も使っていれば、なおさら当たり前のことと捉えられているでしょう。

 しかし、このような当たり前の言葉というのは、かえって疑ってみる必要があることが多いのです。

 例えば、「後工程はお客様」と本当に思っているのであれば、お客様である後工程の所へご挨拶に伺ったり御用聞きに行ったりが、当然のように行われていると思うのですが、なんと、これがほとんど行われていないのです。

 どういう意味かというと、「出社退社の時に後工程の前を通っています」というのではなく、仕事時間中に自分の仕事の結果である中間品が、「後工程の人にどういうやり方で使われているのかをしっかり見てみる」ということをするのです。

 私の指導先でこんな例がありました。運搬の効率を上げるために容器にギチギチの状態で傷が付かないように注意深く中間品を詰めている工程の人が、後工程に行ってどういう形で自分の仕事が引き継がれているかを見たところ、傷が付かないようにものすごく注意深くその中間品を取り出していたのです。

 要するに、一生懸命箱に入れたその次の仕事が一生懸命箱から出すことであって、その間に一切の付加価値が付かない。もし何かあるとすると傷が付く心配だけといったことを発見しました。そこで、彼は即座にそしてみごとに解決しました。

 どうしたかは実に簡単でして、二つの工程をくっつけて一人で仕事を完結できるようにしたのです。箱を使わないで済むのでそこでの在庫と停滞がなくなりリードタイムが短縮し、箱への出し入れによる傷が付かないので品質が上がり、作業が楽になったので生産性が上がりました。

 笑い話のようですが本当の話です。それどころか、この手の話は実はどこにでもあるのです。後工程といった、最も近くにいるお客様ですらあまり見ていないということです。(ちなみにこれは、7つのムダの中の「加工そのもののムダ」にあたります)

 日本の製造業はこれまでの成功体験から、良いモノを安く作れば必ず売れると思ってきました。1970~1980年代の“Japan as No.1”の時代はそうでしたが、今は違います。

 日本の製造業の力が突出していた時の市場は機能品質が良ければそれで十分な状態でした。しかし、今は機能品質レベルであれば世界中どこでもできる時代です。機能品質が高い商品というだけであれば、供給過剰と言ってもいい時代です。

 そう考えると、日本の製造業はこれまでに築き上げた機能品質を作り込む能力をベースに、本当にお客様が欲しくなる魅力品質の高い商品を作ることが必要だと思います。お客様というのは本当にその商品を使う人たちのことです。

 そのためには、まずお客様が自分の商品を使う所を実際に自分の目で見ることが必要だと思います。もし部品を作っているのであれば、その部品がお客様によってどのように使われているのかを実際に見てみるということです。

 これまで中小企業は、発注元が求めるスペックを満たせばそれでOKという環境での仕事に慣れている可能性がありますが、それを乗り越える必要があります。レベル5にはそういう要求が含まれているのです。

kaki226-2.gif

copyright yukichi

※柿内先生に質問のある方は、なんでも結構ですので下記にお寄せください。etsuko@jmca.net

 

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