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第83回
インバウンド観光客の誘客は《先入観のない外国人目線》で考えよう!
~海外から見ると紀伊半島・大阪・茨城が日本一の訪れるべき観光地?~

次の売れ筋をつかむ術

 

 
「紀伊半島、超行きたい!」「日本で一番魅力的な街は大阪でしょう♪」「やっぱ、春は茨城に行かなくちゃ」などという人に出会ったことがあるだろうか?
 
ところが、事実、世界の旅行ガイドブックでトップの全体の3割ものシェアを誇る「ロンリープラネット」の2018年版で、世界の訪れるべき地域の5位に「紀伊半島」が選ばれた。日本の他の地域は一つとして入っていない。
 
一方、世界最大の民泊物件の紹介サイトであるエアビーアンドビー(Airbnb)は、利用した世界の全宿泊客の中で人気が急上昇した地域を選定して、毎年、「訪れるべき世界の地域」として約15地域を発表しているが、2016年の1位は大阪市中央区だった。
 
2017年も大阪市此花区が世界で4位にランクインした。しかし、日本の他の都市や地域はどこもランク外だ。
 
また、日本では、「地域ブランド調査」の都道府県別魅力度ランキングで、毎年のようにワースト1位で、2017年にはついにV5を達成してしまった茨城県だが、特に春は外国人に日本中で最も魅力あふれる地域だと見られているのだ。
 
旅行予約サイト「楽天トラベル」の2016年春の訪日外国人旅行(インバウンド)動向調査で、茨城県は伸び率ランキング1位に輝いた。
 
ことほどさように、外国人のものの見方や、情報の伝わり方は、日本人とはまったく異なる。
 
海外からのインバウンド観光客の誘客には、《先入観のない外国人目線》で考えることが大切だ!
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●「紀伊半島」(KII PENINSULA)が「世界の訪れるべき地域」5位の快挙!
 
オーストラリアに本社のある「ロンリープラネット」は、世界の旅行ガイドブックの中で3割ものシェアを誇り、アメリカ・イギリス・オーストラリア・ニュージーランドなど英語圏の旅行者に最も影響力が大きい旅行専門誌だ。
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その「ロンリープラネット」による、旬な旅行先を紹介するガイドブック「ベスト・イン・トラベル2018」の世界の訪れるべき地域の5位に「紀伊半島」(KII PENINSULA)が選ばれた。
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1位の北アイルランド、2位のアメリカ・アラスカ州などに次ぐベスト5入りの快挙だ。日本の他の地域は一つも入っていない。
 
しかし、外国人から「KII PENINSULAに行きたい」と言われて、すぐに対応できる日本人がいるだろうか?「えっ?」と声を上げてしまうに違いない。
 
そもそも、日本人は「紀伊半島」などという単語は天気予報くらいでしか聞くこともないし、半島だという意識も低く、使用する頻度も非常に少ない。
 
観光においても、旅行業界も国内旅行者も、「紀伊半島」を一くくりにしてとらえることなど、ほとんどない。
 
紀伊半島は、和歌山県・奈良県・三重県の3県から成るが、あまりに広すぎて、日本人には全体としてイメージしづらい。
 
しかし、「ベスト・イン・トラベル2018」のホームページには、「紀伊半島は、たくさんの称賛されるべき日本の魅力にあふれている」と紹介している。
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さらには、「高野山、温泉、熊野古道のほか、ビーチを眺める温泉リゾート白浜、南端の起伏の多い潮岬や紀伊大島もある」と、具体的な地名も挙げて絶賛しているのだ。
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今回の快挙は、和歌山県・奈良県・三重県の各々の県職員を中心に、官民を挙げて、海外でのPR活動に地道に取り組んで来た成果に違いない。
 
和歌山県を訪れる外国人観光客は、2011年は8万人に過ぎなかったが、2016年は50万人と5年で6倍に増加した。
 
 
また、奈良県の外国人観光客は、2015年の103万人から2016年は165万人へと急増している。
 
以前に、この経営コラム、
《南海電車》は何回乗ってもなんかいい! ~130周年を迎えた日本最古の私鉄が国内外で大人気?!~
の後半部分でご紹介した、「欧米からの旅行者が激増!京都をしのぐ人気の“天空の聖地”高野山」をご参照いただきたい。
 
りゅうじんは和歌山県の高野山と御縁が深く、母方の墓所もあり、子どもの頃から林間学校で訪れ、昨今も南海電鉄のまちづくりセミナーに講師にお招きいただくなどしている。
 
欧米人の友人に高野山の話をすると、「宿坊に泊まって、勤行や読経をしてみたい。精進料理を食べてみたい」と言われることが多くなった。
 
また、奈良県は先祖の墳墓の地でもあり、「平城遷都1300年祭」の評議員として“せんとくん”の選定・広報に携わったほか、奈良県観光PR大賞の審査委員長、奈良県ならブランド委員長などを務めさせていただいた。
 
奈良のことはよく知っているつもりだったが、過日、フランス人の友人に、「吉野の金峯山寺に行ってみたい。熊野古道を歩いてみたい。山伏の修業はできるのか?」と、いきなり、言われて面食らった。
 
一方、三重県では、知事と各市長町長が参加する県の「地域づくり連携・協働協議会」の講師にお招きいただいたり、伊勢神宮の「式年遷宮」のPRも自主的にお手伝いさせていただいて来たが、全国の神社の総元締め的役割を担う唯一至高の神社であるお伊勢さんは日本一の霊場に違いない。
 
欧米人にとって世界遺産と大自然があふれる紀伊半島は、ヨーロッパでたとえて言えば、世界遺産に認定されている、フランスからピレネー山脈を越えてスペインに入る「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」のような聖なる山岳地域として映っているのだ。
 
外国人目線から見れば、紀伊半島(KII PENINSULA)は、まさに奇異なる、そして、神秘的な日本文化の扉を開くキーとなる、スピリチュアル・エリアなのだ。
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もはや、外国人旅行者によるインバウンド観光は、東京⇒富士山⇒京都を巡るゴールデンルートだけではない!
 
 
 
●Airbnbの外国人利用者が選ぶ日本一魅力的な都市は大阪?
 
民泊の宿泊施設が世界的に急速に広がりを見せているが、世界最大の民泊施設紹介サイトのエアビーアンドビー(Airbnb)は、年を追うごとに倍々で利用者を増やしている。
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そのエアビーアンドビーを利用した世界の全宿泊客の中で人気が急上昇した地域を選定して、毎年、「訪れるべき世界の地域」として約15地域を発表している。
 
エアビーアンドビーに登録されている300万件の宿泊施設に滞在した、延べ1億4000万人以上のゲストの旅行パターンから、今年人気があった地域を抽出し、人気上昇率を元に順位付けされる。
 
 
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その2016年の世界一に大阪市中央区が輝き、2017年も大阪市此花区が世界で4位にランクインした。一方、日本の他の都市や地域はどこもランク外だ。
 
大阪は、全国有数の政令指定都市の一つで、もちろん、関西の主要都市であるものの、“商都大阪”と呼ばれる通り、日本国内においてはビジネスのイメージが強く、同じ関西でも観光においては、京都・神戸・奈良に比べれば大きな差があることは否めない。
 
「連休には家族でどこ行くの?」と聞いて、「大阪」と答えたら、「ユニバーサルスタジオ行くの?でなければ、大阪出身で里帰りかい?」と言われてしまうだろう。
 
その大阪市の中心部の中央区や此花区が、わざわざ海外からその地を目指して「訪れるべき世界の地域」だというのだ。
 
訪れるべき地域に共通するテーマとしては、路上アート、ローカルフード、その土地ならではの野外体験やショッピングが重要なキーワードに設定されている。
 
 
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大阪市中央区は、大阪城をはじめとする歴史的な遺産、活気ある商店街や食い倒れといった地元ならではの体験が、旅行者の関心を集めた。
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また、大阪市此花区は、淀川の河口部に位置し、ユニバーサルスタジオジャパンや海岸の景色を見渡せる区域にほど近い立地にあり、都市と庶民的町並みのコントラストがおもしろいと人気を呼んでいる。
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エアビーアンドビー2017年「注目の観光地のランキング」
1. ニューオーリンズ、ミルバーグ(アメリカ ルイジアナ州)―1500%増
2. クアラルンプール、カンポン・バル(マレーシア)―976%増
3. メルボルン、フィッツロイ(オーストラリア)-770%増
4. 大阪、此花区(日本)-609%増
5. マルセイユ、シュット・ラヴィ(フランス)-604%増
6.トロント、ロッククリフスマイス(カナダ)-497%増
7. マイアミ、ミッドタウン(アメリカ フロリダ州)-430%増
8. メキシコシティー、ナルバルテ(メキシコ)-264%増
9. シアトル、ウェストシアトル(アメリカ ワシントン州)-230%増
10. マドリード、ウセラ(スペイン)-228%増
11. バンコク、ディンデーン/フアイクワン(タイ)-218%増
12. シドニー、チッペンデール(オーストラリア)-204%増
13. ソウル、大学路(韓国)-203%増
14. ミネアポリス、リンデール(アメリカ ミネソタ州)-193%増
15. ダブリン、フェニックスパーク(アイルランド)-180%増
16. ブエノスアイレス、チャカリータ(アルゼンチン)-172%増
17. プラハ、ジシュコフ(チェコ共和国)-103%増
 
大阪は、1970年の大阪万博から半世紀。2025年に、「再び、大阪・関西から世界へ。いのち輝く未来社会のデザイン」をキャッチフレーズに、万国博覧会を再度誘致し、それと連動して、IR(Integrated Resort=カジノを含む統合型リゾート)の実現を目指している。
 
近松門左衛門や井原西鶴をはじめ、大坂(大阪の旧称)は、江戸時代、町人文化が花開いた文化の都だった。
 
りゅうじんは、昭和の後半に遷都論が真剣に議論された際に、国土庁の遷都に関する検討委員を務めさせていただいたが、その際に驚愕の歴史を聞かされた。
 
実は、大久保利通は、明治維新の際に、当初、京都から大阪に遷都しようとした。
 
ところが、江戸城に不平不満の士族が全国から集まりつつあったので、それを押さえるために、明治天皇に江戸城にご入城いただき皇居としたのだ。
 
昔も今も、大阪=商い・ビジネスの街だと思い込んでいるのは今の私たちだけだ。
 
少なくとも、エアビーアンドビーを利用する外国人目線からすれば、日本一魅力的な都市は、今や大阪なのだ。
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●魅力度ワースト1位の茨城県に“死ぬまでに一度は見ておきたい絶景”?
 
茨城県と言えば、「地域ブランド調査」の都道府県別魅力度ランキングで、毎年のようにワースト1位の汚名を着せられている。
 
「地域ブランド調査」とは、民間調査機関のブランド総合研究所が行っている、全国1047の地域(1000市区町村、および、47都道府県)を調査対象とし、全国3万人が各地域のブランド力を徹底評価する日本最大規模の消費者調査である。
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そのランキングで、茨城県はダントツのワースト1位の5冠、ついにV5を達成してしまった。
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茨城県人は、自虐的に魅力度ランキング・ワースト1位をギャグにしている。たしかに、無視するかギャグにするしかない状況だろう。
 
ネット上でも、茨城県民にありがちなこととして、以下のような記事が掲載されている。
 
水戸の3ぽい=怒りっぽい、忘れっぽい、飽きっぽい
全都府県で、唯一、県域民放テレビ局と県域民放FM局が存在しない
新幹線が通っているにも関わらず止まらない唯一の県
関東一都六県の中で、唯一東武鉄道の車両が乗り入れていない
車が無いと暮らせない
公共交通機関で行けない市町村が多数あり、特に路線バスは通勤時間帯以外は1時間に1本程度と不便きわまりない
 
しかし、いくらなんでも、ワースト1位V5まで、おとしめられる謂れはないだろう。
 
江戸時代は、水戸の黄門さま(水戸光圀)に始まる徳川御三家の一つであり、編纂した「大日本史」は幕末の志士たちの精神的支柱ともなった。
 
現在、人口は290万人を超え、全国11位、面積は全国24位。政令指定都市(50万人以上)を持たない県としては最大だ。
 
また、農産物の生産量は北海道に次いで2位であり、首都圏への最大の食糧供給地である。
 
太陽光発電を含め、代替エネルギーの発電では日本一の環境先進県だ。
 
日本人がどう思おうが、そんな茨城県の魅力と価値を、外国人観光客は客観的に評価している。
 
特に春は外国人に日本中で最も魅力あふれる地域だと見られているのだ。
 
 
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なんと、「楽天トラベル」による、2016年春の訪日外国人旅行(インバウンド)動向で、茨城県は伸び率ランキングで首位に輝いた。
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「日本さくら名所100選」にも選ばれている「かみね公園」がある日立エリアの宿泊予約が急伸しているのだ。
 
 
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毎年4月に開催される「日立さくらまつり」は、市内にある1万本以上の桜が開花し。街を華やかに彩る。
 
期間中は、会場となる平和通り・かみね公園・十王パノラマ公園においてライトアップを行い幻想的な夜桜も楽しめる。
 
さらに、週末には迫力あふれる世界無形文化遺産の山車「日立風流物」も披露される。
 
 
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また、世界最大の旅行口コミサイト「TripAdvisor」の行った「インバウンドトレンド調査」でも、外国人の興味関心が高まっているエリアとして、茨城県が第2位にランクインした。
 
 
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「国営ひたち海浜公園」の「みはらしの丘」一面を彩るネモフィラのお花畑は、“死ぬまでに一度は見ておきたい絶景”として外国人に大人気だ。
 
りゅうじんは、鉄道開業時の「つくばエクスプレス」沿線地域PRスーパーバイザー、霞ヶ浦沿岸12市町村主催による地域活性化シンポジウムの基調講師を務めたり、里山という言葉が一般化する前に県北地域のライフスタイルを「いばらき さとやま生活」と名付けるなど、茨城県を応援させていただいている。
 
また、ミスインターナショナル世界大会の企画委員を務める関係から、優勝した各国のミスたちを茨城県の被災地支援に無償で招致したり、2017年春から、日立市に茨城県初のドイツビールと音楽の祭典「日立オクトーバーフェスト」をアドバイザーとして誘致するなどの活動も行っている。
 
 
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しかし、先日、インド人の友人から、「インドの詩人タゴールも訪れた、北茨城市の五浦(いづら)海岸にある岡倉天心の六角堂はインド人にとっても聖地だ」と聞き、自分の無知と不明を恥じた。
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燈台下暗し。外国人が見る通り、茨城県は日本が世界に誇るべき自然と文化の宝庫に違いない。
 
ねば~る君がゆるキャラの人気ランキングで1位になったが、まさに納豆の粘りのように、のびしろ日本一の県である。
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●グローバル+ローカル=グローカル:地球的に考え、地域的に行動しよう!
 
「KY」(空気読めない)などと学校や職場でイジメられるほど、島国で同質性の極めて高い日本で生きている私たちのものの見方は、ともすれば、ステレオタイプ的視点に凝り固まりがちだ。
 
そのため、先入観と偏見に満ち満ちており、地域の魅力と価値を客観視できなくなってしまっている点もある。
 
わかった気になっていたり、子どもの頃に修学旅行で行っただけなのに行った気になっている場合も少なくない。
 
それらの固定概念、既成概念を取り払って見れば、昨日の常識は今日の非常識。昨日の非常識が今日の常識になる。
 
インバウンド観光客の誘客はもちろん、これからは、グローバル+ローカル=グローカル、つまり、地球的に考え、地域的に行動することが重要だ。
 
そのために、《先入観のない外国人目線》で考えてみよう!
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