購入金額や利用回数によってポイントがたまっていき、蓄積されたポイントに応じて何らかの特典が顧客に与えられる
「ポイントサービス」は、日本に数多とある。それはアメリカでも同様で、ある調査によると、アメリカ人は1世帯あたり
なんと12種のポイントサービスに加入しているという。
そして悪いことに、これらのポイントサービスの間で差別化はほとんどない。ポイントサービスの本来の狙いである、
「顧客ロイヤルティ育成」にもつながっていない。
これはアメリカのスーパーマーケット業界が最たる例である。アメリカのスーパーはどこもポイントサービスを運営しているが、
その多くがレジで清算時にポイントカードを提示すると、値引き価格で買える、というそれだけの話だ。消費者は皆、損をする
のが嫌なばかりにポイントサービスに加入している。そこには、ロイヤルティという感覚はない。私自身も含めて、ほとんどの
アメリカ人は財布の中にスーパーのものだけでも3、4種のカードを携帯していることだろう。
猫も杓子もポイントサービス、という状況の中で競合に差をつけるためには、「値引き」を超えた価値提案や、
顧客の心を掴む工夫が必要だ。
アメリカのポイントサービスでこれを達成しているものに、「ユープロミス」がある。ユープロミスは、「買い物をしながらお金
が貯まる」と、「子供の学資預金」という二つのコンセプトを結びつけた多業種連携型のポイントサービスである。全米およそ
2万1,000軒のスーパーおよびドラッグストア、8,000軒のレストラン、600軒のネット通販会社、その他各種サービス業者を
加盟企業にもつ。
その仕組みは、加盟店で買い物をすると、購入額の定率がキャッシュポイントとして還元され、消費者はそれを子供の学資
預金口座に貯蓄することができるというもの。個人のクレジットカードか、スーパー各社が発行しているポイントカードをユー
プロミスに登録しておくと、それを通じてユープロミスが購買を追跡し、加盟店舗や商品を購入した際に、その購入額の一部
が還元されるのだ。
子供の学資の工面は、世界各国どの国の親にとっても最大の関心事であり、悩み事である。2000年に発足されたユープロ
ミスは、今日、1,000万人近くの会員をもつという。頭文字のUに学帽をあしらったロゴを目にしない日はないほど、米国消費者
にとって遍在的な存在になっている。
単なるディスカウントやキャッシュバックではなく、「子供の教育」という、多くの人の人生における深刻な課題に的を絞り、
その悩みを解決することを価値提案としたことに、ユープロミスの鋭さがある。「顧客ロイヤルティの育成」どころか、管理費
が嵩むばかりで赤字を出しているポイントサービスも多いと聞く。「あの店で買うことに意義がある」と顧客に思わせる新しい
仕組みを求めて、従来的なポイントサービスのあり方を見直す時期が来ているようだ。
ただ利己的に自社の利益を追求するのではなく、社会や共同体に対して価値を創造する企業が、「良き企業市民」として
消費者に支持されている中、ユープロミスは、こういった時代の要求にも敏感に応える心憎いプログラムだといえる。
参考サイト
ユープロミス:http://www.upromise.com
(コラム内にて示されている企業ロゴも上記のサイトからご覧頂けます)


石塚しのぶ氏
ダイナ・サーチ・インク代表
ダイナ・サーチ、インク代表、日米間ビジネス・コンサルタント。
1972年、南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程卒業。
その後、コニックスバーグ・インストゥルメント社においてNASAプロジェクトのプログラム・
マネージャーを担当、プロジェクト・マネージメントのスペシャリストとして経験を積む。
1979年にカリフォルニア州認定技術士の資格を取得。
1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ、インクを
カリフォルニア州ロサンゼルスに設立。
米国優良企業、業界の研究レポートを数多く手がける傍ら、アグレッシブな成長を
目指す先進的日本企業をクライアントにコンサルティング業に精力的に従事。
日米間ビジネス・プロジェクトにおいて、クライアント企業の目標をビジュアライズ
(可視化)し、到達までの道のりを組み立て、水先案内人としての役割を果たす。
「実践重視のコンサルティング」を掲げ、机上のリサーチのみならず、
現場の観察や経営者との対話を通して、優良企業の「仕組み」について学び、
クライアント・ビジネスの活性化に役立てることを信条としている。
著書に、「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる」
「ザッポスの奇跡」※パブーより電子版「ザッポスの奇跡」が発刊されました。



